「嫌いな個性も出し方を変えれば武器になる」南キャンしずちゃんがシンポジウム基調講演で「多様性」を熱弁

マイノリティへの差別や偏見のない社会を目指す「多様性寛容の共創システム開発」プロジェクトの内容や狙いについて報告する第1回シンポジウムが、3月30日(土)に京都大学百周年記念ホールで行われました。特別ゲストとして、南海キャンディーズの“しずちゃん”こと山崎静代が登場。実体験を織り交ぜながら多様性をテーマにした基調講演を行なったほか、パネルディスカッションにも参加しました。

出典: FANY マガジン
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体の大きさに悩み…内にこもった過去

「多様性寛容の共創システム開発」プロジェクトは、内閣府の『戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)の一環として行われているもの(事業期間:2023年度~2027年度)。学校法人立命館が、滋賀医科大学、京都大学、株式会社SciEmoとともに、生きづらさを抱えている当事者とそれ以外の人の間に生じている差別や偏見をなくすために、多様性への理解と受容を促進させる、コミュニティで実現可能な手法の開発を進め、マイノリティとマジョリティの境界がない社会を目指しています。

シンポジウムの開会前には、京都府住みます芸人の木下弱がステージに登場。吉本興業が立命館大学などと実施している認知症対策の研究プログラム「Petit笑店」でも人気の得意のバランス芸を披露します。筒の上でバランスを取りながら冷却シートをおでこに貼る技を見事に成功させ、拍手を浴びました。

出典: FANY マガジン
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シンポジウムは京都大学経営管理大学院の蓮行(れんぎょう)特定准教授による開会挨拶に続いて、しずちゃんがステージに登場。基調講演「多様性を認めあうこととは? ―私の体験から―」が始まりました。

しずちゃんは「なんで私呼ばれたんやろ、ちょっと難しいというか」と話し始めると、もともと喋るのが苦手で「絵を描いたり、パンチしたりするほうが得意」と言って、笑いを誘います。

ここから、実体験をもとにしたエピソードの数々を語っていきました。

生まれたときは体重が5000グラム、中学時代にはすでに身長170センチになっていて、男子からそのことを冷やかされたこともあったというしずちゃん。「短大くらいまでは大きいことがイヤで、開き直ることもできずに内にこもっていた、親を恨むくらいの気持ちになっていたこともあった」と話します。

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大きな体はスポーツで有利なので、イヤなことを考えないように中学では陸上部、高校では女子サッカー部に打ち込んだといいます。みんながさぼっても毎日、がんばっていたと振り返りながら、「砲丸投げの投げ方が後々、ボクシングの右ストレートに活きた」と振り返って会場を笑わせました。

ボクシングへのチャレンジが自信をくれた

就職活動もせず、追い込まれて入った劇団で、いつも「どうやったら人を笑わせられるんやろ」と考えている自分に気づいたことを機に、徐々にお笑いの道に進んでいったというしずちゃん。そのお笑いが、コンプレックスを解消してくれたと話します。

たとえば、それまで自分の欠点と思っていたことがお客さんにウケたとき。「これは自分の特徴なんや。これじゃないと芸人になれてない、笑いにもなってない」と気づき、マイナスがプラスに変って悩むことがなくなったといいます。

とはいえテレビ番組などでは、見た目の印象から腕相撲が強いと思われて1回戦負けをしたり、イケメン好きと勘違いされて、勝手にイケメンからフラれる設定にされたりと、イメージでキャラクターを決めつけられることもあったそう。「それに乗るほうが楽なこともあるけど」と断りつつ、これまで味わってきた違和感を明かしました。

出典: FANY マガジン
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話題になったボクシングへのチャレンジについては、まわりに相談せずに挑戦することを決めました。両親はものすごく反対していたものの、一生懸命やっている姿を見て、だんだんスポーツとして捉えるようになってくれたとのこと。「試合にはだいたい来てくれてた。でも、(怖くて)見られずに会場を出たり入ったりしてた」と振り返りました。

ボクシングを始めることは、相方である山里亮太にも相談していませんでした。劇場の出番の合間にジムへ行き、スパーリングで顔に青あざを作っていると怒られるので、必死でメイクで隠していたとしずちゃん。ただ、アドレナリンが出た状態でステージに出るので「やまちゃんにめちゃくちゃいいパンチが入る」とニッコリ。そのときに「漫才が楽しいと思った」と笑わせます。

最初は反対していた山里も途中から応援してくれるようになったそうですが、それは、メディアがしずちゃんの挑戦に注目し始めたことで「これだけマスコミがくるなら使えるぞって、手のひら返しで」と、山里の“打算”もあったと冗談交じりに指摘。ボクシングについては改めて、「めちゃくちゃ苦しくて地獄の日々やったけど、やっててよかった。これをやったことで自分に自信を持てたことがすごく大きい」と振り返りました。

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「相手を決めつけず、ちゃんと知ることが大事!」

絵を描くことにも挑戦しているしずちゃんは、大阪・阪神梅田本店で4月3日(水)~9日(火)に個展が開かれることをちゃっかりアピール。さらに、3 月 22日(金)からの 3 日間に開かれたコンビ結成20周年で2回目の単独ライブについても触れ、「これも、いままでの2人と違った見せ方をしようという挑戦だった」と話すと、「これからもやりたい」と今後の希望も語りました。

基調講演の締めくくりは質疑応答。「多様性を認め合ううえで、いちばん大切なことは?」という質問には「決めつけるのは相手のことを知らないから。知らずに決めつけたり、偏見、先入観を持つのがいけないことなので、相手のことをちゃんと知ることが大事」ときっぱり。

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「自分らしく生きようと思ったとき、壁にぶつかったらどうすれば?」という質問には、「自分が大きいことがすごいコンプレックス、大嫌いだった」と振り返りつつ、「でも、それは個性。勝手にダメだとか思わず、違う出し方を見つけられたら武器になる」と力を込めると、「自分勝手に思い込んでいる部分もあったりする。自分で自分を決めつけないほうがいい。みんなにもっと相談してもいいかも」とエールを送りました。

ボクシングめぐる山ちゃんとの葛藤に教授が見解

その後は各登壇者による講演を挟んで、シンポジウムの後半ではパネルディスカッションが開催されました。ファシリテーターを立命館大学スポーツ健康科学部の清家理教授が務め、しずちゃんを始めとしたシンポジウムの登壇者らが登場。「多様性を認めあうこととは? -いま私たちにできること-」をテーマに、プロジェクトでのこれまでの取り組みや登壇者自身の体験、多様性を認めるコアは基本的人権であるなどなど、さまざまなことが語られました。

しずちゃんがボクシングを始めた当時、山里にも黙っていたことについて、改めて「何も言わずに、無理やりだった」と振り返ると、清家教授は「(そのことで)自尊感情が守られたかもしれない」という見解を語ります。

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それを聞いたしずちゃんは、「自分を大切にできないと思ってきたけど、知らない間に意思を突き通すところとかは、もしかしてそうだったかも。無意識のうちに、いつかわかってくれるという気持ちがあったのかもしれない。だからやれたのかも」と、しみじみと語りました。

最後は登壇者がそれぞれに、「多様性を認め合うために今できることは何か」について発表。しずちゃんは「テレビや舞台でいろんな山崎静代を見てもらうことで、誰かが悩んでいるときにもその姿を見て無条件で笑ってしまう。それが自分の仕事冥利につきる」と話すと、「コンプレックスの塊だった大きなヘンな女が楽しそうにやっている姿を見て、自分も大丈夫だと思ってほしい」と呼びかけました。

出典: FANY マガジン
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