登録者数38万人超えのYouTubeチャンネル「シネマンガテレビ」――NSC(吉本総合芸能学院)東京23期生の同期6人によるチャンネルで、映画やマンガ、ゲームのあるあるシーンを変幻自在に再現した動画が人気となっています。とはいっても、ファニマガ読者にとってはまだあまりなじみがないはず……。ということで、今回はこの6人のユニット「シネマンガテレビ」の撮影現場に潜入! その全貌に迫る深掘りインタビューをしてきました。
メンバーは、たろちゃん組、おざき映画館、ストーム丸山、BIG・J・諸岡、イチヂクフジタ、永江節カツオの6人です。
チャンネルが人気の理由は「子どものころ、こんなことやったなぁ〜」感にあふれていること。男の子なら誰しもやっていたであろう格闘マンガやスパイ映画の“ごっこ遊び”に、大人が全力で興じているさまは痛快です。さらに“どこまでもチープかつリアルに”というこだわりから生まれる映像は、小学生のころの休み時間や放課後を彷彿させます。
今回は、そんな人気の動画がどうやって出来上がるのか、なぜ同期でこのチャンネルを立ち上げたのか、さらに5月17日(金)には、これまでで最大の500人規模の劇場(東京・草月ホール)でライブを開催するということで、その意気込みなどについても聞いてきました!
台本なし、スマホ1台でいきなり撮影スタート!
撮影現場は、おざき、丸山、フジタがルームシェアする東京・練馬の部屋。動画はたいてい、この部屋や近所の公園などで撮影されます。
撮影は台本などもなく、いきなりスタート。動画のカット割りや絵コンテなどのイメージは、シネマンガテレビのリーダー的立ち位置のたろちゃん組の“頭の中”に入っていて、セリフなどはスマホに書いておいたものをその場で見せているとのこと。
「よし撮影しよう!」となったら、それぞれが準備に入ります。ウィッグを装着したり、衣装に着替えたりと準備をする人もいれば、6人の大所帯なので撮影のない人は、部屋の使わない場所で待機。同期ならではの仲の良さが感じられました。
準備ができたら、いよいよ撮影スタート。とはいえ、「おカネをかけないことに命をかけている」というシネマンガテレビだけに、特別な機材はいっさい使いません。撮影は本人のスマホ、照明なども使うことはなく、逆に小道具なども手作りすることが多いということで、部屋のあちこちに撮影で使った小道具が無造作に置かれていました。
【写真の戦艦や小道具のチープ感がわかる動画はこちらから】
撮影は「悪夢にうなされるシーン」からスタート。演じるのはおざき映画館です。監督兼カメラを担当するたろちゃん組から「こんなふうに」と指示があり、すぐさま撮影に入るという流れ。同じシーンでもカメラ位置を変えて撮るなど、頭の中のカット割りに合わせて、どんどん指示が与えられていました。
息子役のイチヂクフジタが扉を開けて「父さん!」と語りかけるシーンの撮影では、「用意、スタート!」とカメラがまわり、扉が開くとまさかの“アイアンマン”で登場!?
芸人ならではのボケも、意外とそのまま採用になることもあるそうで、この日の監督、たろちゃん組にこのシーンが採用されたかどうかは完成動画でチェックしてみてください!
【この日に撮影した動画はこちらから】
「息子が生まれるときも分娩室で動画編集をしてました」
――そもそも、このチャンネルの立ち上げのきっかけは?
たろちゃん組(以下、たろちゃん) 僕とおざき映画館は「シネマンガ」というコンビを組んでいるんですけど(2022年1月結成)。コンビを組む前の、芸人2年目ぐらいのとき(2019年)、よく夜中に(東京・新宿の)吉本本社にTikTokとかを撮るために集まっていたんです。
おざき映画館(以下、おざき) もともと僕と丸山は一緒に映画を観に行くような仲。渋谷の単館系の映画を観に行ったら、そこでバッタリたろちゃんと会ったりしました。偶然だったんですけど、そういう映画好きみたいな間柄だったんです。
たろちゃん あったねー! で、チャンネルを始めるきっかけはコロナもあったんですけど、当時、付き合っていた彼女が妊娠しまして、結婚するとなったんですけど、借金もあって……。でも、芸人としてもまだ全然という状況だし、どうしようとなったんですけど、芸人を辞めたくなかった。
それで「とりあえずYouTubeを始めよう!」と2020年3月にスタートしました。当初はコロナもあって、奥さんにカメラをまわしてもらって撮ってたりしてたんですけど、あとはフジタの家に行って僕とおざきとフジタの3人で撮ったりしてましたね。
イチヂクフジタ(以下、フジタ) 僕が一人暮らししていたので、そこで撮るのが多かったですね。
永江節カツオ(以下、永江) 最初のころは部屋の中で集まるとダメだから、公園でやろうかみたいな感じもありました。
おざき ただ、僕らみんな23期生で同期なんですけど、みんなで最初から仲良かったわけでもないんですよ。
BIG・J・諸岡(以下、BIG・J) 僕とたろちゃんは、ほとんど喋ったことなかった。
たろちゃん BIG・Jは、おざきが仲良かったよね。おざきが適当に連れて来た人が多いかもしれない。
おざき わりとLINEで「この日、手伝える人いない?」みたいな感じで、ギャラとかもなく好意で集まってくれた人たちでやってた感じです。
フジタ 友だちの家に遊びに行くみたいな感覚で、深夜に本社で撮影して。最初は、俺も映画が好きだから呼ばれて行ったのが最初だった気がする。
おざき いやいや、いちばんヒマそうだったから(笑)。
永江 たぶん、みんなヒマだったから楽しそうだなって行って、ワイワイやって、撮影終わってそのままみんなで朝メシ行ってとか、そんなんでした。
たろちゃん そうそう。ほんとに部活みたいなノリでした。でも、最初は「収益もあげられないからギャラないよ」と言ってたのに、いま気づいたらめっちゃ収益、分配してます(笑)。
――いまいる6人の共通点は、23期生であることと、映画やマンガが好きということなんですか?
たろちゃん そうですね。ある程度、知識があったほうがアイデアもみんなで出しやすいので。
おざき やっていて、「これ、あのシーンのあれね」みたいな話がすぐわかり合えるほうが演じる上でも楽しめるというか。
ストーム丸山(以下、丸山) 映画サークルみたいな感じですよね。
「登録者数10万人」は通過点
――立ち上げてから、どのようにチャンネル登録者を増やしていったんですか?
たろちゃん いちばん最初に手ごたえを感じたのが、1万人を超えたとき。2020年の9月か10月ぐらい。そこはむちゃくちゃうれしかったです。登録者は減ったことはなくて、どんどん右肩あがりで増えていく感じですね。
おざき たろちゃんと僕がTikTokをやってて、そっちに切り抜きをのせてたんですけど、1本ごとに300人くらいのペースで増えていた感じでした。
たろちゃん 1万人を超えたくらいでYouTubeだけでまわるようになった。そのときはLINEで「よっしゃ! 1万人超えたぞ!」と言ったら、みんな大盛り上がりでしたね。
おざき 確かに、あのときのあのうれしさは定期的に思い出さなきゃいけないね(笑)。
永江 記念にみんなでバーベキューしたよね。
おざき あー、やった! そんなこともあったのに、いまや登録者数10万人達成でもらえる「銀の盾」(シルバークリエイターアワード)も、家の中で雑に置かれている現状です(笑)。
丸山 そこは通過点だからね。
――動画はどのくらいの頻度でアップしていますか?
たろちゃん 基本的には毎日ですね。週に5本ぐらいはアップしてます。ネタになるストーリーみたいなのを、おざき、マル(丸山)、僕が作って、その後は撮影現場で、役割をみんなに振っています。
永江 台本をみんなで共有するということはないです。だいたいその場で「こんな感じで言って」と言われることが多いですね。
BIG・J 確かに事前に覚えたりはしないよね。
たろちゃん カメラはフジタがいちばん上手いんですけど、「おカネを極力かけない」というのをめちゃくちゃ心がけてるんで、ぜんぶふつうのスマホで撮影してます。
――これまででいちばんバズった動画は?
たろちゃん 「『少年漫画あるある』で、作中最強の味方組織が紹介されるときの雰囲気」という動画です。これがきっかけで、シネマンガテレビがバズり出した感じはあります。これ、2020年10月23日にアップしたものなんですけど、僕の息子が10月25日生まれで。タイミング的に、僕は息子がいい運気をもたらしてくれたって信じてます。この動画がバズってるうちに、次の動画を早くアップしなきゃと、生まれる直前まで、分娩室で動画編集をしてたのを覚えてます(笑)。
【動画はこちらから】
たろちゃん あと、子どもが生まれてからBIG・Jがわざわざ駆けつけてくれたんです。でも、立ち会い出産できなくてやることないから、夜中にBIG・Jと公園で、これからのシネマンガテレビについて話したのはいい思い出です。
BIG・J そのときの様子はこちらの動画で見られます。ちなみに、2人でいい話してたのに職質されました(笑)。深夜に2人で、公園で夢を語り合うのは怪しかったみたいです。
【動画はこちらから】
たろちゃん もともと、このYouTubeチャンネルは息子がきっかけみたいなところもあるし、息子と同級生というか、息子の年齢=「シネマンガテレビ」の歴史みたいな感じになってます。
BIG・J 息子が2人いるみたいな感じね(笑)。
永江 そのまま息子に引き継いであげればいいんじゃない? 一子相伝みたいな。
丸山 まさにマンガでありそうだよね(笑)。子どもが主人公になっていく。
たろちゃん 全員の子どもが揃ったら、みんな子どもに渡して俺らは引退するのもいいかもね。
「傘の剣」じゃなきゃダメ!
――シネマンガテレビのここを見てほしいという点はどこでしょう?
たろちゃん おカネをかけないことに命をかけているんで! 小学校の遊びのときみたいに、傘を剣にしたり、銃にしたりっていうのを大事にしてます。でも、たまにこいつら、本物の刀(のおもちゃ)を使おうっていうんですよ! これはダメ!
おざき ……この熱量、すごくないですか?(笑)
たろちゃん 傘じゃなければダメなんですよ! 小学生は傘、剣は中学生から! テーマは放課後なんで!
丸山 と言いつつ、この刀、持って来てくれたのたろちゃんだからね(笑)。
たろちゃん たしかに憧れはあるよ! でもダメ。おカネをかけないことに命かけているんで、戦艦とか小道具も自分たちで手作りしてますし。
おざき 深夜にみんなで1隻ずつ作ったり。
永江 6時間とかかけて作ったり。
たろちゃん 30歳を超えたおじさんたちが、真剣にやっているところがいいんですよ! それで出来上がったもののチープ感もいい。「低予算厨二病活劇」と呼んでいます。スマホ1本だから、機材がどうのとか形から入るわけではなく、撮影のための照明とかもないし。
最強の地域密着型YouTube芸人!
――それがまさにシネマンガテレビのテーマなんですね。では、そんなシネマンガテレビのメンバー紹介というか、それぞれの役割分担を教えてください。
たろちゃん まず、BIG・Jはどう見ても癒し系ですね。見た目からもうその感じが伝わると思うんですけど。ケンカが起きたら止めてくれるくらいです。
フジタ BIG・Jは怒ったとこをみたことがない。
BIG・J いやいやいや、本当は戦闘民族ですから。
たろちゃん BIG・Jと永江が九州出身で、マル(丸山)は三重。フジタは福島と、僕は山梨と、出身もみんなバラバラ。
おざき なので、ここにはシティボーイはいないです。僕がいちばん近くて埼玉です。
たろちゃん 令和ロマンが同期なんですけど、ほんといろんな意味でぜんぜん違いますね(笑)。
役割分担に戻ると、映画だったらおざき、ゲームとかマンガはマル(丸山)が、バトルマンガは僕がという担当です。ほかの人もたまに動画撮ったり、サブチャンネルの編集をやってもらったり、そういう感じです。
おざき フジタが映画好きなので、撮りながらいろいろアイデアが出てきたり。
丸山 漫画とか映画とか関係ないんですけど、BIG・Jが「デブを倒す方法」というのを作ってますね。
BIG・J 僕だけ担当は「デブ」になってます(笑)。
たろちゃん でも、そのデブ系の動画が小学生に大人気なんです。(近所の)公園で撮影していても、小学生から「BIG・J!」と呼ばれたり。
おざき 40人ぐらいの子どもに囲まれてたのを見かけたこともありますから。
永江 この界隈では、恐らくヒカキンよりも人気あると思う(笑)。
おざき この界隈で区長選とかに立候補したらいけるかもしれない(笑)。
たろちゃん 僕らほど地域密着型のYouTube芸人はいないのではないかと。
丸山 子どもはもちろん、その保護者の方とかおじいちゃんとかも交流はありますからね。
おざき 最近、声をかけてきてくれるおじいちゃんが増えてきました。
フジタ でも僕ら、もうすぐ引っ越しでこの地を離れてしまうので、地元の人は「あれは幻だったのか?」ってなっちゃうかもしれないね(笑)。
GW後の平日の昼間にライブ開催!
――5月17日(金)に開催されるライブの話を聞かせてください。
たろちゃん そうなんです! これがゴールデンウィーク後の、金曜日の昼の12:00~ということで。平日のお昼、誰が来てくれるのかと! ちょっと心配なんですけど。
丸山 うん、これは厳しい戦いになるよね。
たろちゃん 草月ホールは500人ぐらい入るのに、お客さん少なかったら恥ずかしすぎる!なので、いまいろいろ告知動画も作っています。
永江 ただ、ライブができることは、もうほんとーーーーーにうれしくて。4年目になって、みんながどんな動画にしようかとかいつも考えてくれています。僕はイベント担当みたいな役割だったので、マネージャーに相談したらこのライブが決定したといういきさつです。
フジタ まさに俺らの営業部長ですよ。
永江 去年まで僕は神奈川県住みます芸人だったんですけど、それをコンビ解散したタイミングでやめて、いまピンでやっています。でも、住みます芸人をした経験がここで生きたなって気がしてます。
たろちゃん そういう経緯もあるので、何としてもお客さんをいっぱい呼びたい! いつもの動画内での人気シリーズの劇場版ということで、ライブの内容もかなり激アツになってますので! いろんなキャラが一堂に会する感じです!
おざき YouTubeではシリーズごとに作品が違うので、本来は交わることのないキャラたちがライブということでクロスオーバーします!
丸山 これまで2回、シネマンガテレビでイベントもしてきたんですけど、3回目の今回の会場は圧倒的な大きさですよ!
BIG・J そうだよね、圧倒的だよね。
たろちゃん だから、そんな会場でやれること自体がめちゃくちゃうれしい。あとはお客さんがたくさん入ってもらえたら。
おざき 僕らと僕らのチャンネルが試されているってことだと思います。
「全員やめないで、ずっと続けていきたいな」
――ライブは直近の夢という感じですが、その先の目標を聞かせてください。
BIG・J 僕はこのメンバーだったらなんでもいい。明日、料理チャンネルになったとしても、このメンバーとやれるなら、僕はなんでもいいので。全員やめないで、ずっと続けていきたいなって思ってます。それで、全国の公園とかにめっちゃ行きたいです。
フジタ 僕は吉本でいちばん大きなYouTubeチャンネルになりたいです! 芸人としての知名度はなくても、40万人目前まで来ているので、このペースで数を伸ばしていきたいです!
永江 僕はそれぞれの出身地で、営業とかライブがやりたいですね。地元凱旋ライブみたいな。あとは今後も楽しくできたらなって。最初にやり始めたとき、深夜の本社でずっと楽しくやってたんですよね。その感じのままでずっと続けられたらなって思います。
丸山 僕はイベントに出たいっていうのがあるんです。去年、「東京ゲームショウ」に行ったら、ガーリィレコードチャンネルの皆さんがブースでゲームの紹介をしているのを見て、すごいなと。なので、そういうのに出られたらなと思っています。
あとは動画で「格闘漫画あるある」をやっていて、それがきっかけで、漫画『ケンガンアシュラ』のサンドロビッチ・ヤバ子先生と飲ませていただいたんですけど、そういう感じで、学生時代から大ファンの『グラップラー刀牙』の板垣恵介先生にお会いできたら最高ですね。
おざき それで言うと、僕は試写会に呼ばれたいというのが夢だったんですけど、それは最近かないました! あとはとりあえず、たろちゃんとコンビでネタもやっているので、賞レースの決勝進出は目指しています!
そこで知名度をつけて、YouTubeのほうもさらに跳ねたらいいなと思うし、映画の仕事ももっとくるようになると思うので。そして、いつか劇場で僕らの映画を公開するという夢もあります。ガチな俳優さんと俺らが入り混じって登場する映画で。
たろちゃん 映画をつくりたいという夢は、僕もありますし、自分たちの活動自体が映画になるような人生にしたいですね。あと、僕らのストーリーを漫画にしてもらえたらうれしい。当面の目標は登録者数100万人と、コンビでM-1の決勝に行くこと。それが、YouTubeの飛躍にもつながると思っているので!
YouTubeチャンネル「シネマンガテレビ」はこちらから。
公演概要
『シネマンガフェスタvol.3 敵四天王シリーズvs元特殊工作員シリーズ』
場所:草月ホール
日程:5月17日(金) 開場11:30 開演12:00
チケット:前売1,500円 当日1,700円
FANYチケットはこちらから。