芸歴55周年を迎えた落語家の桂文珍による毎年恒例の独演会が、今年も8月8日(木)になんばグランド花月(NGK)で開催されます。「芸歴55周年記念 吉例88 第四十二回 桂文珍独演会」では、今回も3つのネタを披露する予定。5月16日(木)に会見を開いた文珍は、独演会に向けたネタの選びの具合や意気込みを語りました。
敵を知るためにChatGPTを研究する日々
夏の風物詩「吉例88 桂文珍独演会」は、1982年から毎年8月8日に開催されています。しかも、今年は芸歴55周年も祝う記念の会。文珍は次のように語ります。
「『88文珍まつり』は今年で42回目になります。どうして8月8日なのか、毎度申し上げておりますが、“ハハハ”と笑っていただける、明るい、楽しい1日になればいいなということで、8月8日に固定いたしました。今年はゲストに柳家三三(さんざ)さんをお呼びしました。“三三”と(芸歴の)“五五”を足して“八八”ということになります。これは昨日、思いつきました(笑)。後輩ですけれども、非常に安定した力の持ち主で楽しみな三三さんをお迎えして、今年もやらせていただこうと思っております」
そして、「ネタはまだ悩んでおりますが、今年は大谷翔平選手のように、しっかり頑張ろうかな」と大谷ポーズを決めて笑いを誘いました。
文珍がいま、気になっているのは対話型AI(人工知能)のChatGPTだそう。新作落語に最新の時事ネタや話題を取り入れる文珍は、こう話しました。
「ChatGPTが芸の世界にも徐々に影響を与えてくるのではないかなと思って、敵を知らなければいけませんから、いろいろと研究もさせていただいておりますけれども……。(落語の)相手は人間ですから、多数のお客さまの情感を読み取るのは彼らは苦手だろうと。アルゴリズムをなんぼ積み重ねても無理だろうと思っています。われわれは非常にアナログですけれども、古い者ほど生き残れるのかなという思いですね」
また、新作落語のテーマとして共生・多様性の時代について考えていると続けます。
「私の実家は兵庫・丹波篠山ですけれども、むかしは、田舎の家は鍵をかけなかったんですけれども、かけないといけないようになった。サルが来るかもわからない。クマが来るかもわからない。1万円をほしがる強盗が来るかもわからないというような、大変なご時世ですから。そういうものとどう共生をしていくのか。共存するのか。多様性というのは、言葉で言うのは優しいですが、実際はなかなか難しいというところを何かできたらいいかなと思っております」
古典落語をイマ風に書き直して準備中
文珍は、今年の独演会で披露する古典ネタは「雁風呂(がんぶろ)」が候補だと語ります。
「『雁風呂』はむかしの噺ですけれども、それを作り直していて、8月8日に間に合うようにやらせていただこうと思っております」
三遊亭圓生や桂米朝といった“レジェンド”の落語家が高座にかけていた「雁風呂」ですが、最近、世間を騒がせた時事ネタなども取り込んでいると明かします。
「いまの人もわかるように、できるだけ容易な入り方にして、楽しんでいただけるように工夫をしたいと思って、落語作家の小佐田定雄さんと2人で書き直している作業中でございます」
「吉例88 桂文珍独演会」は、新作、古典を織り交ぜた三席が定番です。文珍は「最後の噺は、皆さんに軽く、楽しく、笑っていただけるような構成で考えている最中です」と語りました。
一方、芸歴55年については「通り過ぎた信号の色を思い出しても意味がない。前しか向いていない」と、いよいよ意欲的な様子。そして「前だけ向いていると、“あれもしたいな、これもしたいな”という落語欲が出てきます。あとは、趣味を維持するためには働かなければという、そんな感じです」と意気軒昂に話します。
最後に文珍は、落語に対する熱い思いをこう語りました。
「新しいものも、古いものも含めて、落語に恋している感じですね。新しいネタに出会うと、新しい恋人に出会うようなトキメキがあるんです。そのネタは、ウケても、ウケなくてもかわいいんですよ(笑)。作品というのはそういうものかと思います」
8月8日はぜひ、NGKで文珍のピュアな“落語愛”を目撃してください!
公演概要
『芸歴55周年記念 吉例88 第四十二回 桂文珍独演会』
日時:8月8日(木)開場18:15/開演19:00
場所:なんばグランド花月
チケット:前売 4,500円
FANYチケットはこちらから。