総フォロワー数84万人の車いすモデル・葦原みゅうが吉本所属に! 「自分の活動を世界中に発信していきたい」

事故で両足を失い、現在は車いすでモデル、パフォーマーなど多彩な活動を続ける葦原(あしはら) みゅう。TikTokやYouTubeを中心に、大好きなファッションから、車いすユーザーとしての自身のライフスタイルまでさまざまな情報を発信しながら、障がい者がもっと身近に感じられる社会の実現に向けて活躍の場を広げています。そんな葦原みゅうが、このたび吉本興業に所属することになりました。さらなる活躍が期待される彼女に、これまでの経緯や現在の率直な思い、そして今後の展望などを聞きました。

出典: FANY マガジン
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テレビの制作現場への関心がモデル活動に

葦原みゅうは、そのキュートなルックスや、明るく元気なおしゃべりが同世代を中心に多くの支持を集めるモデル・インフルエンサーです。さらに近年では、東京2020パラリンピック閉会式やイタリア・ミラノで開催された「ミラノファッションウィーク」に出演するなど、国際的に活動の場を広げています。

みゅうが事故にあったのは16歳のとき。昏睡状態のまま何日も生死の境をさまよい、ようやく目覚めたときには、すでに両足を失っていました。しかし、そこでこの先の人生を悲観することなく、持ち前の前向きな性格で、まずは「早く退院したい!」とリハビリに励みながら、車いす生活をスタート。

そして事故から2年後、NHKが放送した、障がい者がモデルを務めるファッションショーの番組出演を機に、モデルとしての活動を開始しました。

――以前から、モデルの仕事に興味があったのですか?

いえ、私が興味を持っていたのは“表”ではなく“裏”の仕事です。子どものころから、テレビ番組の大道具をつくる仕事がしたいと思っていました。そのための専門学校を目指していたのですが、車いすユーザーの入学は前例がないと断られてしまい、それでも諦められなくて、デザイン系の専門学校に進学しました。その在学中に、知り合いから「モデルの仕事をしてみない?」と声をかけてもらったんです。

モデルの仕事に憧れたというより、「テレビ番組の制作現場が見られるかも!」という期待で、仕事をお受けすることにしました。

――それから、活動の幅をどんどん広げていますね。

SNSの発信は続けながら、パフォーマーとして東京パラリンピック(2021年開催)という世界的なイベントに参加させてもらったり、ミラノコレクションでは初めて海外を経験しました。ほかにも講演の依頼をいただいたり、また観光関係の仕事も多く、全国の観光地におけるバリアフリー施策を視察し、それをSNSで紹介したり、車いすユーザーの視点でアドバイスをさせてもらったりもしています。

出典: FANY マガジン
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「かわいい・面白い・楽しい」を通じて届ける

――活動内容は多岐にわたりますが、みゅうちゃんがいちばんの目標としていることは何ですか?

私のような車いすユーザーが、多くの人々の日常にもっともっとなじんでいくことです。福祉関係のイベントなどにも呼んでいただくのですが、参加しているのは福祉業界の方や、ご家族や友人など身近に障がい者がいる方たちがほとんどです。

福祉業界のさらなる発展につながるという意味で、そういったイベントはとても有意義だし、お手伝いできることはありがたいのですが、一方で私が目指しているのは、障がいが身近ではない人たちに、もっともっと積極的にアプローチしていくこと。

実は私自身、いざ車いす生活になったときには、車いすユーザーの方たちのことを何も知らなかったし、あまり意識したこともなかったということに気づいたんです。

そんな私のような人たちにも、障がいを身近に感じてもらうにはどうしたらいいんだろうと考えたときに、私が大好きな「かわいい・面白い・楽しい」コトやモノを通じて、いまの自分の姿を届けていけばいいんだと思い至りました。だから、“福祉”というより“エンターテインメント”という部分を強く意識して活動しています。

――その活動の結果、現在(2024年5月)はSNS総フォロワー数84万人(TikTok36万人、YouTube25万人、Instagram5万人、X18万人)と大人気を獲得しています。

とくにYouTubeなどは、本当に幅広い世代の方たちが見てくれていて、4~5歳の小さな子が、街中で声をかけてくれることもあります。

彼らにとって、私は生まれて初めて出会う障がい者である可能性が高いですよね。街で車いすユーザーに声をかけるのって、大人でもちょっとためらってしまうと思うのですが、彼らは屈託ない笑顔で「みゅうちゃんだよね? いつも見てます」って声をかけてきてくれる。私が目指している“心のバリアフリー”が少しずつ実現できているんじゃないかなって、達成感を感じられる瞬間です。

しかも「いつも見てます」とか「応援しています」という言葉って、“健常者”と“障がい者”という関係性を飛び越えて、“クリエイター”と“ファン”として向き合ってくれている証でしょう。だから、本当に嬉しいんです!

――事故の前と後で考え方に変化はありましたか?

年齢的なこともあるかもしれませんが、以前は「将来こんなことをしたい」と“未来”に重点を置いていたのが、人はいつどうなるかわからないということを身をもって痛感してからは、とにかく“今”をどう楽しむかに全力を注ぐようになりました。

ちなみに、「両足を失ったのに、前向きに頑張っていてすごいね」と言われるんですが、ポジティブな性格は、事故後に努めて心がけてきたわけではなく、生まれつき(笑)。だから、いまもポジティブでなければいけないと思っているわけでもなくて。。

「みゅうちゃんの前向きな姿に勇気をもらいます」という声はとても嬉しいですが、だからといって、みんなも常に前を向くべき! なんて押し付ける気もないんです。

落ち込むことがあれば、そのネガティブな感情を愚痴として、SNSなどで吐き出したっていい。「わかる、わかる」「私も同じ」って、その愚痴に共感して救われる人も少なくないはずです。すべての人が自分を肯定できる、誰も取り残さない世界を実現していきたいという思いは、事故後の経験を経て生まれたものかもしれませんね。

出典: FANY マガジン
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「絶対に脇役で映画やドラマに出たい!」その理由

――今後の目標を教えてください。

やっぱり、福祉や障がいをすべての人々にとって身近なものにしていくこと、健常者と障がい者の間にある壁を崩していくことです。

だから、自分からは「車いすモデル」ではなく、できるだけ「モデル」と名乗るようにしていて、いつかは「葦原みゅう=車いすの子」ではなく、「=元気な子」「=おしゃれな子」と、内面的な特徴が際立つ存在になれたらと思っています。

障がいがあっても選択肢はたくさんあることを伝えられるような、ロールモデルの役割も担っていきたいです。

――仕事の幅はますます広がっていきそうですね。

それから、映画やドラマの仕事にも興味があります! といっても、やりたいのは主役じゃなくて絶対に脇役。いまも障がいを持った人が登場する作品はたくさんありますが、ほとんどの場合、主役、または物語を左右するキーパーソンとして描かれがちですよね。

だけど、主役が通う会社の同僚に、物語の舞台となる学校の生徒のなかに、何気なく車いすユーザーがいることは、全然不自然じゃない。話の主軸にいっさい関わらない障がい者が登場したっていいと思うんです。

ただ車いすユーザーがいる。そんな日常風景が当たり前に映画やドラマで描かれるお手伝いができるといいですね。

また海外での活動にも興味があって、自分の活動を世界中の人たちに向けて、どんどん発信していきたいと思っています。

実は今年の9月に、アメリカ・ニューヨークで開かれるニューヨーク・コレクションへの初参加が決まっています! これまで、イタリアのミラノ・コレクション、フランスのパリ・コレクションにも参加させてもらったので、あとはイギリスのロンドン・コレクションにも参加して、世界4大コレクションを制覇できたら最高ですね!!