今年で芸歴15周年を迎えた林家愛染の「芸歴十五周年 林家愛染独演会」が、6月15日(土)に大阪・国立文楽劇場小ホールで開かれました。2009年に林家染丸に入門した染丸一門末弟の愛染。明るくて愛嬌のあるキャラクターで人気を博し、上方の林家の芸を継ぐ者の一人としてめきめきと実力をつけています。今回の記念独演会では、ゲストに兄弟子で染丸の一番弟子である染二を迎え、15年の間に培った力を堂々披露しました。
兄弟子・染二が祝いの「かっぽれ」
まずは愛染と、同期のお囃子さんであり妻である佐々木千華によるご挨拶から。同じ年に入門した2人は落語家、囃子方として、それぞれ切磋琢磨する仲でもあります。夫婦がそろって舞台に並ぶ姿は新鮮です。
愛染は「15年で国立文楽劇場の小ホールで独演会ができました。5年後の20年には大ホールでできたら」と、さっそく意気込みを語りました。
一席目の演目は「うなぎ屋」。実はうなぎがつかめないといううなぎ屋の店主と、それをからかいに来た男2人とのやり取りを意気揚々と描きました。途中、自分の名前をダジャレにする一幕もあり、温かい拍手が起こりました。
続いてゲストの染二が登場。ネタは「手水廻し」で盛り上げると、さらに、たすき掛けに鉢巻、着物の裾をまくり上げて「今日お越しの皆さまに末永く足をお運びいただけるよう、皆さまのご健勝と、愛染くんと千華さんの夫婦円満を願いまして『かっぽれ』を踊らせていただきます!」と、座敷芸の「かっぽれ」を意気揚々と踊りました。
愛染の二席目は「浮かれの掛取り」、最後は「天神山~障子の曲書き~」を披露しました。「天神山~障子の曲書き~」では、きつねが障子に置手紙を書く場面で、文章を下から上に書いたり、左右逆にして文字を書いたりと、曲芸を堂々披露。この噺は染二から教わり、曲芸の道具もすべて染二から借りたそうです。
自分が好きなネタを並べた
終演後、愛染はこう語って笑顔を見せました。
「15周年、ほんまに応援してあげようというお客さんに囲まれて楽しい1日でした。何より染二兄さんが僕を応援してくれているお客さんに囲まれて、ご本人も嬉しそうで、しかもノリノリで『かっぽれ』を踊ってくださって。ほんまに嬉しいことばっかりでした」
佐々木との口上については、「なかなかないでしょう? お囃子さんもいらっしゃるんだぞということで、たまには表に出てもらおうかなと思って、旦那やからこそ引っ張り出してみました」とのこと。口上以降は舞台袖でお囃子に徹していた佐々木も、「いつの間にか口上が決まっていたのですが(笑)、お客さまのお顔を直接見られたことが嬉しかったです。ふだんは、袖からだとぜんぜん見えないですし、舞台に上がることもなかなかないので」と笑みをこぼしました。
一方、三席を選んだ理由について、愛染はこう説明しました。
「『天神山~障子の曲書き~』は師匠の十八番で、やっているのを見たこともあるので、それをやりたいと。『浮かれの掛取り』は冬になったら天満天神繁昌亭で毎日のようにかけていたネタなので、憧れもありました。『うなぎ屋』は短くてわかりやすいネタですが、あのギャグが言いたかったんです! 『藍で染まってるんだな、あいそめ(愛染)だな』っていう、あれは僕しかできないギャグなので。ほんまに自分が好きなネタを3つ並べました」
8月26日(月)~9月1日(日)には天満天神繁昌亭で、芸歴15年の噺家が1週間、トリを務める興行『林家愛染・噺家十五年祭~翔ぶトリウィーク~』が控えています。