2024年10月で噺家10周年を迎えた上方落語家、笑福亭笑利による『噺家生活丸十周年 20ヶ月連続根多下ろし公演ファイナル 笑福亭笑利独演会in味園ユニバース』が、10月25日(金)に大阪・なんばの味園ユニバースで開催されました。師匠の笑福亭鶴笑、藤崎マーケット(田崎佑一、トキ)、すゑひろがりず(南條庄助、三島達矢)ら豪華ゲスト陣がお祝いに駆け付けた記念すべき独演会の様子をお届けします!
後輩・すゑひろがりずも小鼓で祝福
笑福亭笑利が自身の10周年に向けて古典落語の地盤を固め直すべく始めた古典落語根多下ろし公演は、昨年3月から月に1回、全20回連続で開催。10周年の節目にあたる今回で、ついにファイナルを迎えました。
会場の「味園ユニバース」は味園ビルの地下1階にあり、かつて世界最大級のキャバレー「ユニバース」として賑わった場所。その名残が感じられる煌びやかなステージに高座がセットされている一方、前方フロアにはお風呂の洗い場で使うようなプラスチック製の小さなイスがズラリと100個以上。その不思議なコントラストに、会場は独特の雰囲気を放っています。
はっぴ姿で登場した笑利は、ビルの解体が検討されていると報じられた会場について、「味園ユニバースで落語の独演会を見られるのは、最初で最後かもしれません。特別感を味わってください」と挨拶し、独演会がスタート!
風呂イスについては、「うしろの人が見やすいように、こうするしかなかった」と座りにくさについて謝罪した笑利。1週間前にネットで注文したものの、配達が間に合うか不安で、自ら大阪中の100円均一ストアをまわって買い集めたそう。さらにお客さんに配る予定だったサイン入りチラシを350枚忘れてきて……とふんだり蹴ったり。
「あとから届いた風呂のイスが家にまだ100個あるんです」と嘆き、笑いを誘ったマクラから始めた一席目は「天狗裁き」。お囃子とともに大阪上空に天狗が登場するシーンは見せ場となり、表情豊かな語り口で観客を惹きつけました。
続いては、めでたい席にピッタリのすゑひろがりずが登場。「高座のすぐ前でやるなんてなかなかない」と気合を入れる2人。笑利は二つ上の先輩にあたるそうで、「笑利さん、10周年おめでとうございます!」と小鼓(こつづみ)でお祝いすると、おなじみの狂言風にアレンジしたネタで爆笑を起こしました。
パペット落語に大道芸…師匠はお客さんを巻き込み大暴れ!
続いて、師匠の笑福亭鶴笑もネタを披露しました。まずは「こんなにたくさん来ていただいて、笑利は幸せものです!」と客席に感謝を述べると、「よう頑張りましたよね!」と20カ月連続公演の労をねぎらいます。
鶴笑はぬいぐるみなどの小道具と全身を駆使したパペット落語「西遊記」で爆笑を起こし、終盤は高座から降りて、お客さんを巻き込む大道芸で大暴れです。
「笑利は夢に向かって進んでいます。10年前に“弟子にしてください”と言ってきたときと同じキラキラした目をしています。きっと立派な落語家になっていくでしょう。みなさまご声援よろしくお願いします」
師弟愛たっぷりにこう語ると、客席から大きな拍手がおこりました。
師匠があたためた高座に再度登場した笑利は、弟子入りを志願した10年前をしみじみと振り返ります。「師匠の背中を追いかけたいのに、ここ最近は高座の上にほとんどいなくて。今日もすごく暴れていらっしゃいましたね……」と笑いを交えて語りました。
そして「10年の節目を機にここから羽ばたいていきたい」と思いを語ると、創作落語「表具師幸吉」を披露。“空を飛ぶ”という夢を叶えるために奮闘する男をユーモアたっぷりに口演し、“誰に何をいわれても夢をあきらめない”という自身に重ねた演目に思いを込めました。
ここで、名古屋を拠点に活動する2ピースロックバンド「鈴木実貴子ズ」の鈴木実貴子による弾き語りライブです。笑利が心底惚れ込んだという力強い歌声とアコースティックギターの音色は、味園ユニバースのムードにピッタリ。「自分は歌を歌う人なので必死にやります!」と全力のパフォーマンスを届け、観客の心をつかみました。
藤崎マーケットとの「同期」トークも披露
中入り後は、笑利とNSC(吉本総合芸能学院)26期の同期である藤崎マーケットが登場しました。
トキがさっそく、「お風呂のイスに座ってる! こわい! ふつうは前のほうがいいイスやのに!」と客席をイジると大笑いが起こります。さらに「今日は絶好調やから落語しよかな?」と調子に乗るトキに、すかさず「落語なめるなよ」とツッコむ田崎。幅広い世代を笑わせる「おるおるモノマネ」でたっぷりと笑いを届けました。
最後は、笑利が高座に三度目の登場。「田崎くんに家賃を1年分立て替えてもらった」「トキに貸した漫画が返ってこない」など、同期の藤崎マーケットとの思い出トークも飛び出し、いよいよ20カ月のラストを飾るネタへ突入します。
「最後は大好きなネタを選びました」と披露されたのは、「どうらんの幸助」です。ケンカの仲裁をするのが唯一の道楽である幸助を躍動感たっぷりに熱演し、独演会を締めくくりました。
落語家人生はまだ始まったばかり
すべての演目を終えて、「20カ月の戦いについてきていただいて、ありがとうございました!」と、お客さんに感謝を伝えた笑利。当初は、大阪・なんばグランド花月(NGK)でファイナルを迎えることを目標としていたとのことで、「諦めたらあかん。またNGKを目指して、イチからスタートするのでよろしくお願いします!」と決意を新たにしました。
終演後、報道陣の囲み取材に応じた笑利は、10周年の節目となる独演会を終えて、こう語りました。
「まだ序盤の序盤という感じ。ファイナル感がまったくなくて、僕の中では(落語家人生が)今日、始まったぐらいのイメージでいます。まだまだ攻めていかなあかんなって。こんなもんじゃあかんと思ってます!」
そして、「師匠のように人の役に立つ、お客さんに喜んでもらえる噺家になる。ここからさらに加速して、もっとデカいことやっていこうと思ってます!」と、さらなる飛躍に向けて意気込みを語りました。