桂文枝の大阪市24区創作落語プロジェクト『参地直笑祭 in 浪速区』が、9月24日(水)に大阪・浪速区民センターで開催されました。この日は文枝のほか、弟子の桂三実や、ダブルヒガシ(大東翔生、東良介)らが出演。文枝はこの地にゆかりのある“将棋”をテーマにした創作落語を披露して、集まった観客を沸かせました。

猛暑のなかで創作落語作り
2018年からスタートした『参地直笑祭』は、大阪市と吉本興業が締結した地域活性化などを目的とした包括連携協定に基づき、文枝が大阪市24区それぞれの特色を盛り込んだ創作落語を作って地域の魅力を発信するプロジェクトです。今回で第23弾を迎えました。
前説を務めたのは“浪速区住みます芸人”のチャイルドプリンス(ラストオーダー織田、北山水泳)です。2人が、会場に詰めかけたお客さんに自分たちの知名度を聞くと、「知っている」という人も結構います。笑顔になったチャイルドプリンスの2人が会場をあたためました。

ここで登場した文枝は、トークからスタート。これまでの『参地直笑祭』の歩みを振り返ったあとは、浪速区での落語創作秘話を明かします。
猛暑のなか、取材で歩いたという文枝は「浪速区は観光名所が多いですね」と、通天閣や今宮戎神社などおなじみのスポットを次々と挙げながら、「浪速区のために一生懸命作りました」と予告して、ダブルヒガシにバトンタッチ。
文枝が「大阪でいちばん人気がある」と紹介したダブルヒガシは、「どっちが東で、どっちが大東か、ちょっとでも覚えてもらいたい」というツカミからスタートします。
子どものころに遊んだ「はないちもんめ」を題材にした漫才では、大東がJ-POP風にアレンジした歌でリードし、東を巻き込んだ“歌唱指導”で沸かせました。

続いて登場したのは三実。浪速区在住の三実が披露したネタは、昨年10月に『NHK新人落語大賞』で大賞を受賞したときの創作落語『早口言葉が邪魔をする』です。
昨年の『NHK新人落語大賞』はエントリー数歴代最多。三実は、初の平成生まれ、初の愛知県名古屋市出身、初の金髪での大賞受賞だったという導入から、ネタでもしっかりと笑いをとりました。

名曲「王将」を高座で披露
そしていよいよ文枝が高座へ。マクラで浪速区にある病院にお世話になっていることを話すと、お客さんは嬉しそうなリアクションです。
そして「通天閣のすぐそばに(明治から昭和初期の名棋士)坂田三吉の記念碑がある」と続け、「坂田三吉は村田英雄さんの『王将』という歌で一気に知名度が上がりました」と言うと、高座から身を乗り出すようにして「王将」を歌い上げます。会場から「よ!」という掛け声が飛び出す一幕も。

そして、創作落語『しあわせの〓〓〓〓』を口演。将棋が強くなりたいと将棋クラブの門を叩いたはずが、なぜか串カツ屋で修行を積むことになった少年が主人公です。浪速区の人気スポットにかけたダジャレがいくつも飛び出して、客席は大喜びです。
修行をしながら父を探す少年。親子の情愛を描いた場面では、文枝が涙を誘う語りで観客を魅了します。オチではどっと笑いが起こり、笑いと涙の人情噺をたっぷりと聞かせました。

最後は、文枝と浪速区の武市佳代区長とのトークコーナー。三実が感想を尋ねると区長は、「すごく楽しかったです。ほろっとさせられ、ほんわかとした笑いもあり、ありがたいなと思いました」と声を弾ませます。文枝も「これまで23区分の落語を作りましたが、浪速区がいちばんよくできました」と満足げな表情です。
文枝は、いよいよ『参地直笑祭』のゴールとなる西成区に向けて、こう意気込みました。
「師匠(五代目桂文枝)が西成区玉出に住んでいたので、思い出話も取り入れながら作っていきたいと思います」
文枝の大阪市24区創作落語プロジェクト『参地直笑祭』も、西成区を残すのみとなりました。タイトルに必ず「しあわせの」と入る24区創作落語。いよいよ“24のしあわせ”がコンプリートします!
