吉本新喜劇座長のアキによるプロジェクト公演『時が来た』が、1月23日(金)~26日(月)に大阪・近鉄アート館で上演されました。昨年3月に反響を呼んだ舞台の再演となった今回も、アキがかつてスタントマンとして培った殺陣を存分に披露。最終日には東京、名古屋で今夏、追加公演が実施されることも発表されました。FANYマガジンでは、初日公演直前のゲネプロの模様と、アキら出演陣へのインタビューをお届けします!

幕末の世に翻弄された若者たちのストーリー
演出を手がけるのは、関西を拠点に活動する劇団「STAR☆JACKS」のドヰタイジ。さらに、アキの相方である水玉れっぷう隊のケンも出演し、舞台を盛り上げます。
物語の舞台は、激動の時代である幕末の土佐藩――。藩の中枢を担う「上士」と、地域に根を下ろして暮らす「郷士」と身分が厳しく分けられるなか、上士から虐げられてきた郷士の鬱屈した思いが、ある事件をきっかけに爆発。そんな時代の波に翻弄された4人の若者たちを中心に描いた群像劇です。

アキが演じるのは、郷士から上士へと身分を上げた千屋虎之助。幼なじみである郷士の岡田以蔵や坂本龍馬らを大切に思い、親交を深めながらも、上士という立場ゆえに揺れ動く複雑な役どころです。
“人斬り以蔵”こと岡田以蔵をケン、幕末の土佐藩で尊王攘夷運動を主導した武市半平太を西川忠志が演じます。そして風雲児・坂本龍馬を演じるのは、演出・潤色・殺陣も担当するドヰ。また、吉本新喜劇から伊賀健二、太田芳伸、佐藤太一郎といった顔ぶれも揃います。
虎之助や以蔵らによる大迫力の大立ち回りはもちろん、時代や立場に翻弄されながらも仲間たちを思う強い絆をアキらが熱演しました。

「家族を守る」というテーマがより色濃く
初日開幕直前に行われたゲネプロの終了後、アキ、ケン、忠志、ドヰがこの舞台にかける思いや見どころについて語ってくれました。
――再演が決まったときの率直な気持ちを聞かせてください。
アキ 回数を重ねても毎回、新鮮な気持ちになりますね。去年の11月半ばごろから稽古が始まって、皆さん忙しくてちょこちょことしか集まれなかったんですけど、ようやくここまで来たな、ホッとしていますし、早く本番をやりたくて仕方ないですね。
ケン 再演なんですけど、僕の中では去年から地続きでやっている感覚なんですよ。大きな中休みがあって、また続きからやる、という感覚なんです。いまの段階では僕の中では、まだ6~7割くらいの出来ですかね? 回数を重ねてもっと精度を上げていきたいです。

忠志 正直、再演は難しいんですよ。前と同じようにできて当たり前で、そこからさらに深めたり、厚みを持たせないといけない。そんななかで、稽古場でドヰさんがちゃんと演出してくださるんです。それを心に留めて演じると、まわりの出演者から「このシーン、変わりましたね」と褒めてもらえたり、本当にありがたかったです。
ドヰ 再演で同じ役を演じるときって、演じていない間は役の人生は止まっていると思っていたんです。でも今回、感じたのは、実は役柄の人生も一緒に動いている、ということ。前回から時間が経って、同じ役を演じているようで違う。
感情は同じでも、表現の仕方が変わっているんです。そのなかで自分の中に生まれた変化を、どう伝えたらいいかを探るというのは僕の中でも大きな発見でした。結果的に、今回さらに解像度は上がっていると思います。

――演出面で、前回よりパワーアップしている点はありますか?
ドヰ 以蔵(ケン)と武市(忠志)の関係性は、前回より深く表現できたと感じています。そして今回は、直次郎(太田芳伸)の弟妹を細かく配役することで、より「家族を守る」というテーマが色濃くなりました。命をかけて家族を守る直次郎の真摯さもより深まっていると思いますね。初演とは全然違う楽しみ方ができると思います。
作品としての核になるのは、やはり「友情」です。仲間を思う結束みたいなものが、家族を守り、国を動かしていく。その積み重ねを大切に描いています。仲間や家族のためなら命を張れるし、国も動かす。小さな思いが大きな物事を動かしていく。まさに「小さなことからコツコツと」ですよね?
忠志 ありがとうございます!
――それぞれ役の見どころを教えてください。
アキ 今回も、(千屋虎之助の)お墓参りをさせていただきました。若いころに日本を変えよう、良くしようと志を持って生きた人たちが殺されていった無念さ……。お墓の前に立ったとき、演劇を超えた感覚になりましたね。
その思いを、演劇を通して伝えないといけないと強く感じて「この思いを伝えさせてください」とお願いしたんです。その経験を経て、千屋虎之助は初演とはまったく違う存在になったと感じています。
家族を守るために上士側へ行くのか、郷士として仲間と生きるのか……。その決断の迷いや痛みが、時代劇という枠を超えて現代でも伝わると思います。あとは、殺陣ができる方がたくさんいてはるし、メリハリの効いた喜怒哀楽が詰め込まれた内容です。
ケン 僕が演じる以蔵は、正直でちょっとアホなところもある人物なんですが……。でも演じてみると、自分とそんなに変わらないなと思う部分もあって(笑)。自然に自分を重ねて演じていますね。
アキ 後輩のカレーの残りをへつる(取る)とか。
――虎之助演じるアキさんと、以蔵演じるケンさんが殺陣の最中に背中合わせになるシーンは印象的でした。
アキ あそこは“水玉れっぷう隊っぽさ”が一瞬、見えるところでもありますよね。僕も好きなシーンです。

忠志 僕は上に立たなければならない“先生”という立場でありながら、誰一人、命も救えなかったという無力感を抱える役で、僕も無力感でいっぱいになるんですよ。でも、そんななかでも人は生きていかないといけない。心臓が動いている以上、立ち上がらないといけない、という……。
それに、この作品は大きな友情を描いた物語なので、見終わったあとに「最近会ってない友だちに会いたいな」と思ってもらえたらうれしいですね。
ドヰ 龍馬は調子が良くて、新しいものにどんどん飛びつくその柔軟性が、世の中を動かしていったんだと思います。この物語の中でも龍馬はかなり成長していくので楽しみにご覧いただきたいですね。
同じ作品でも劇場によってまったく違う
――新喜劇や時代劇をあまり観ない人へのおすすめポイントは?
アキ 新喜劇や時代劇を観ているか観ていないかは関係なく、時代を飛び越えて「人生1回しかないから熱く生きよう」というメッセージが伝わる芝居です。自然と涙が出たり、何かに挑戦したくなったり……。明日のヒントにつながるような、背中を押してくれる作品だと思います。
そして、時代劇や歴史が好きな方には、“人斬り以蔵”が出てきたり、新選組が出てきたりと、ゾクゾクできるような場面もありますので、楽しんでもらえると思います。
――今後、名古屋、東京公演も予定されていますが、意気込みを聞かせてください。
アキ 去年の3月の公演でも考えていたんですけど、関西は特に新喜劇のファンの方が多いから、「お客さんのことを考えたら、もう少し笑いを入れたほうがいいのかな」と悩んだこともありました。今回は笑いを入れつつも、すぐに芝居へ戻す、というバランスを大事にしました。
名古屋や東京は経験上、笑い以上に芝居をじっくり観たいというお客さんも多いので、笑いは様子を見つつ、求められたらしっかり出す。でも基本は芝居を重視したいなと思っています
ケン 僕は殺陣もあるので、体力は維持しておかないといけないなと強く思っています。サボるとそのぶん、あとから大変になってくるんで、毎日ちょっとずつでも刀を振って、皆さんに迷惑をかけへんように。確実に歳は取っていってるんで、体力はどうしても落ちていきますから、つねに鍛錬です。
アキ 稽古やトレーニングをちゃんとスケジュールに組み込んでもらって。この30年間、(ケンが)「結局、何もしてなかった」というのはすごく見てきてますんで。

ケン そうそう。自主トレとかじゃなく、ちゃんとスケジュールを決めてもらえたらやります。
アキ 高校からの友だちやけど、自分からやるのは見たことないので(笑)。
忠志 名古屋、東京にも飛び出していこうというアキさんのパワーがすごい。大きな挑戦だと思います。大阪の近鉄アート館は特殊な空間ですから、他の劇場に行ったとき、同じ見せ方ができるかどうか。
同じ作品でありながら、舞台が変われば視覚的にはまったく別ものになるかもしれないので、大阪でご覧になった方も、名古屋や東京で観ていただくと違うものとして楽しんでいただけるのかな。どうなんですか?
ドヰ おっしゃるとおりです。まったく違うので、大阪公演を作りながら、東京や名古屋のときはどう見せようか、ずっと考えて演出していました。プランは一応、ざっくりとは頭の中にあって、見え方は全然変わると思いますよ。
忠志 ということは、稽古もまたそのぶん、一からですよね?
ドヰ はい。そうなんです。
アキ (笑)
ケン 殺陣も、名古屋・東京に向けてもう1回、覚えなおさないとダメなんですよね……?
ドヰ はい。でもきっと大丈夫です。次までに皆さん、成長していますので。そして、見え方も変わりますが、芝居は時間が経つことで中身も変わっていきますし、半年後には心情の変化も含めて、また違う作品になっていると思います。そこも楽しみにしていただけたらうれしいです。

