大阪・堺市を中心に活動する「堺少女歌劇団」の第12回本公演が、5月31日(日)にフェニーチェ堺で開催されました。小学2年生から高校1年生までのメンバーに加え、オーディションで選ばれたメンバーも加わった17人が、ミュージカルとショーで日ごろの練習の成果を披露し、爽やかな感動で会場を包みました。

少女たちの葛藤と成長を描いた物語
「堺少女歌劇団」は、戦前に堺市大浜で活動していた歌劇団の再始動を目指し、2015年にスタートしたプロジェクトです。旗揚げ以来、ポップさの中に本物の要素を取り入れた、オリジナリティあふれる少女歌劇公演を行ってきました。歌・ダンス・芝居の指導を通して、未来へ羽ばたく人材の育成に努めています。
第1部で上演されたのは、ミュージカル『ユニゾン〜近くて遠い甲子園〜』です。「夢を叶える」という願いを抱く少女たちの“光と影”を描いた物語。純粋に楽しめていたはずのダンスが、評価や順位によって縛られ、“好き”という気持ちさえ見失ってしまう少女の心の動きを描きます。

勝つため、認められるために努力するなかで、ときには仲間を傷つけ、自分自身の心も追い詰めていく——。そんななかで、ダンスを通じて出会った仲間によって、改めてダンスの楽しさや好きだった気持ちを取り戻し、前を向いて夢を追うオリジナル脚本のミュージカルです。
ダンスを心から楽しみ、夢を叶えるために邁進する夏希をまっすぐに演じた“あやの”。一方、“あけゆ“は、ダンスの高みを目指すあまり、結果を出すことにとらわれダンスを楽しめなくなってしまった、かんなの心の葛藤を見事に演じました。
2人を軸に描かれる少女たちの物語は、フィクションでありながら、夢や目標に向かって努力を重ねるメンバーたち自身の姿とも重なります。そのため、一人ひとりの喜びや葛藤がより切実に伝わり、観客の心を強く引き込みました。

歌とダンスで観客を魅了するステージ
第2部は『Dreams are meant to be fulfilled』。堺少女歌劇団のモットーである“夢は叶えてこそ夢”をタイトルに据えたショーです。それぞれのメンバーの魅力を引き出す歌やダンスで、たちまち観客を魅了します。
なかでも、『第3回プリマヴェーラ声楽コンコルソDODICI(ドーディチ)』本選で第1位に輝いたあけゆが披露したのは、ミュージカル映画『バーレスク』の劇中歌『You Haven’t Seen the Last of Me』。圧倒的な歌唱力で届けたパワーバラードは、観客の心を大いに揺さぶりました。

エンディングでは、第1部で物語の中心人物を演じたあけゆとあやのが、本作への思いを語りました。
あけゆは、「この作品は、私のこれまでの出来事が台本と重なり、自然に深く向き合うことができました」とコメント。学校の勉強や声楽コンクールで常に1位を目指してきた一方、『ユニゾン』の公演やさまざまな挑戦が重なったことで、自分を追い込み、周囲を信じられなくなった時期もあったと明かします。
そして、「私は自分がどれほど周囲に信じてもらえていたかに気づきました」と振り返り、こう話しました。
「(劇中で演じた“かんな”の)『結果がすべて』という考え方は、自分が選んだ道への責任。その責任を果たした先に、(あやのが演じた)夏希が言う“楽しい”ということがあると、いまなら信じられます」

あやのは、今年の本公演が4回目の出演となったことを振り返り、こう感謝の言葉を語ります。
「ここまで続けてこられたのは、いつもわかりやすく愛を持ってご指導くださる先生方や、出番に間に合うよう早着替えを手伝ってくださった先生方。そして仲間、今日こうしてお時間を作ってお越しくださったお客さまのおかげです」
さらに「いちばん感謝を伝えたい人がいます」と、母親への思いを告白します。「いちばん近くで体調管理をしてくれて、本当にありがとう」と話すと、思わず声を詰まらせる場面も。涙をこらえながら感謝を伝える姿に、会場は温かな空気に包まれました。

仙堂花歩はショーの構成や演出も担当
終演後、歌劇団のクリエイティブプロデューサーで、元タカラジェンヌ、元吉本新喜劇座員の仙堂花歩に話を聞きました。
7カ月にわたる稽古期間を経て迎えたという今回の公演。仙堂は、「全員の出番が非常に多い作品だった」と語ります。そして「一人ひとりにメイン級の出番があったので、だからこそケガなく、遅れることなく、無事にステージへ送り出せるか、公演中ずっと気を張っていました」と振り返りました。
第1部のミュージカルは、自分自身との戦いや仲間との競争が描かれた作品。元タカラジェンヌの仙堂自身も共感する部分があったと言います。
「順位がつく世界では、人と競わなければいけません。でも競うためには精神力も必要ですし、相手をリスペクトする気持ちも必要。でないと自分も成長できません。そういう葛藤は常にありますね」

そして第2部のショーの構成や演出も担当した仙堂は、堺少女歌劇団のモットーである「夢は叶えてこそ夢」という言葉を軸に組み立てたと話しました。
「この言葉は宝塚時代に聞いた言葉で、ずっと心に残っていました。夢は誰でも見られるもの。私は彼女たちの“夢を叶える”ところまで導いていきたいと思っています」
