ネタに定評のある芸人に、これまで観たなかで「スゴい!」と感じたライブを寸評してもらう新企画「このライブがすごい!」がスタート! 芸人ならではの視点で、面白さや見どころを解説します。お笑いライブに行ったことがない人も必ず行きたくなる、芸人の芸人による芸人だからこそできるライブ解説です。
記念すべき第1回は、シャンプーハット・恋さんが登場し、これまで目撃したスゴいライブから、ぜひ知ってもらいたいマニアックなライブまで、解説してもらいました。
ザ・プラン9率いる、お〜い!久馬の手腕が光る
『月刊コント』
2009年から始まった、ザ・プラン9のお〜い!久馬によるお笑いイベント。月1回のペースで開催され、毎回、ザ・プラン9のメンバーに加えて数組のゲストを招きます。さまざまなコントの間を、久馬書き下ろしの「ブリッジコント」でつないでひとつの物語をつむぐステージです。
恋さん 久馬さんはいろんな芸人のネタを見てはるから、コントで出演芸人全員を生かし切るのがすごいところです。シャンプーハットも2回ほど出演させてもらったんですが、僕ららしい小ボケを台本に入れてくれたし、ネタをやるパートを途中に入れてうまいこと仕上げてくれて、「さすが久馬さんやな」と感じました。ゲストに僕らシャンプーハットと、僕の実の兄貴も呼ばれたことがありました(2018年9月25日『月刊コントファミリー号』)。兄貴が弾き語りで歌を歌うという設定だったんですが、兄貴が「最近、ギター弾いてないから友だちを連れて行く」って、“タバタさん”というギター弾けるおっちゃんを連れてきたもんやから、『月刊コント』に素人が2人も出演しました(笑)。そういう素人さんにも、ちゃんとうまいセリフを入れてあげていたところもまた、技が光るところですね。
大笑いしたあとにアート展でもうひと笑い!
森本大百科presents『大喜利アート』
芸人の大喜利回答を、プロの漫画家がイラスト化するイベントをオンラインで開催。その回答を、後日、大阪・なんばの「LAUGH & PEACE ART GALLERY」で展示します。芸人のおもしろさと漫画家の表現力が融合した、これまでにないイベントです。
恋さん 僕がゲストで出演したときは無観客の配信ライブで、漫画家の『カバチタレ!』の東風孝広先生と、『ナニワめし暮らし』のはたのさとし先生が来られました。僕らの大喜利の回答を、プロの漫画家さんがめっちゃうまい絵で描いて表現するというものです。「この人は紳士だな、どうしてそう思った?」みたいなお題に、僕が「おならをぜんぶ吸う」と回答してそれを東風先生がイラスト化したんですが、紳士の肛門まで描かれていて「さすが芸術家やな」と思いました(笑)。漫画家さんは思い切り描いてこられるので、感心しました。まだ始まったばかりのイベントですが、後日、展覧会で絵も見られるし好評やったみたいです。
恋さんのピン芸をつめこんだ
『こいちゃんパラダイス』
恋さんの単独イベント。このイベントで恋さんのキャラ「オーマイガット出水トゥギャ樹」「テレ出水テレ樹」が誕生した。コロナ禍の影響でイベントが開催できなくなり、いまは恋さんの公式YouTubeチャンネル『こいちゃんパラダイス』として継続している。
恋さん このイベントで、オーマイガット出水トゥギャ樹が死んでしまったことはあまり知られていません。トゥギャ樹は、テレ出水テレ樹に「ハンサム! 素敵な男性ですね。照れちゃう」と言われたことがうれしすぎて気絶して転倒、その拍子に後頭部を打ち、死んでしまいました。だから、この世にはもうトゥギャ樹はいません。テレ樹は、事故とはいえトゥギャ樹を死なせてしまったという悲しみを背負っています。一方、テレ樹は、僕が改名するごとに名前が変わり、いまは「テレさん」になりました。知らん人からすると「もう何を言っているのかわからない」状態ですが(笑)、また開催するなら2022年ですね。「テレさん」のお披露目の場になるかもしれません。
出場芸人たちの緊張感を肌で感じる!
『賞レース直前の予選会やネタライブ』
『M-1グランプリ』『キングオブコント』『R-1グランプリ』など、芸人たちがしのぎを削る数々の賞レース。頂点へ勝ち上がるための熾烈な戦いは、予選会のみならず、本番直前に行われるネタライブでもただならぬ空気が漂っています。
恋さん 自分が賞レースに出場していた時はとてもじゃないけど見てられへんかったんですが、イベントとしてはめちゃくちゃおもしろい。やっぱり、肌で感じる現場の緊張感がすごいです。むかし、テレ出水テレ樹のキャラでR-1の予選に出たんですが、僕の兄貴も“テレ出水テレタカ”という僕のバッタモンみたいな芸名で出場したんです。ネタは僕が書いて、僕のネタの後に兄貴のネタを見たら話がつながっている内容やったんですが、当日、出番順を見たら兄貴の方が先。「逆! 逆!」と運営に言いたかったです(笑)。ネタも意味わからんことになってしまって。でも、そういう物語があるのも予選会ならではです。
賞レース直前のふつうのネタライブもおもしろいです。みんなが舞台で勝負ネタをおろしに来る。ミルクボーイはずっとあのスタイルやったけど、ライブではなかなかウケなくて、「あとはきっかけだけやろう」と思っていたら、「コーンフレーク」といういいやつを見つけてましたね。同期のチュートリアルがM-1優勝(2006年)したときも、ライブではそこまでのウケではなかったのが、そこから微調整して完ぺきに仕上げた同じネタで挑んでいました。ふだんのネタライブから見ていると、こうしたテレビだけではわからないリアルな変化が発見できておもしろいですね。
【〜あのころの「スゴかったライブ」〜】
高校時代に初めて見た『WA CHA CHA LIVE』
1990年前半から心斎橋筋2丁目劇場(1999年3月閉館)で開催されていた定期ライブ。千原兄弟(千原ジュニア、千原せいじ)やジャリズム、メッセンジャー(黒田有、あいはら)などを輩出。
恋さん 僕が高校生のとき、『WA CHA CHA LIVE』がめちゃくちゃ流行っていて、お笑い好きの男友だちが「メッセンジャー・黒田さんの声を聞きたい」というので、僕も心斎橋筋2丁目劇場に一緒に行きました。劇場へ行くことも初めてで、千原兄弟さんがMCで、メッセンジャーさん、LALALAさん(たむらけんじが当時組んでいたコンビ)もいました。「おもしろいなあ、芸人ってみんな声でかいな〜」とか思いながら見ていたのを覚えています。でも僕、高校生のときは自分が芸人になる、なんていう発想はまったくなかったんですよ。なんか影響を受けたとかもなく、ふつうに楽しみました(笑)。