台湾で活躍する漫才少爺がノンスタ石田に「世界に通じる笑い」を相談してみたら、なるほどの答えが…!

はるか台湾の地で、流暢な中国語を操る日本人の“漫才”コンビ。それが、台湾在住のアジア住みます芸人「漫才少爺(まんざいボンボン)」(太田拓郎、三木奮)です。現地で漫才をすること、はや7年。認知度も少しずつ上がってきたそうですが、もっともっと海外で「MANZAI」の文化を浸透させたい!――ということで今回は、NSC(吉本総合芸能学院)で講師も務めるNON STYLE・石田明に「世界で通用する笑いについて話を聞きたい」とオファー。いろいろとアドバイスをもらいました!

出典: FANY マガジン
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漫才少爺は、ツッコミの太田拓郎がNSC東京10期生でオリエンタルラジオ、トレンディエンジェルらと同期、ボケの三木奮はジャングルポケットや渡辺直美と同期という芸歴。2009年にコンビを結成し、2015年4月からアジア住みます芸人として台湾で活動しています。

一方の石田はこの2月に、オリジナル脚本・演出を手がけた構想4年のセリフなしの舞台『結 -MUSUBI-』の公演を終えたばかり。“世界で勝負できるようなものを”という意欲作で、世界共通言語である「笑い」を中心に、アクションあり、ダンスあり、サプライズあり……という新感覚のコメディに挑戦しました。

「日本のお笑いは、すごく質が高い」

――漫才少爺は、久しぶりの一時帰国ですよね?

三木 そうなんです。今回の帰国中に、ヨシモト∞ドームⅡでライブにも出させてもらったんですけど、日本語でネタをすることが本当に久しぶりで、めちゃくちゃ緊張しました(笑)。

太田 日々、台湾で中国語の漫才をやっているので、日本語だとどういう感じなのか、久しぶりすぎて忘れてましたね。

三木 どこで息継ぎするのかよくわからなくなって、ハァハァ言いながら漫才してましたから(笑)。

出典: FANY マガジン
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太田 帰国中に、ちょうど石田さんが脚本・演出された舞台『結-MUSUBI-』を観劇したんですが、「しゃべらない舞台」ということで、すごく面白かったです。

三木 まず「しゃべらない舞台」という設定がすごいなと。その上で、ストーリー性もあって、日本のいろんな文化、相撲や殺陣が言葉なしで伝わるわかりやすさに加えて、日本のお笑いもミックスされていた。台湾はもちろん、それ以外の海外でやっても、きっとすごく受け入れられるだろうなと感じました。

太田 しゃべらない理由も説明もされていたし、殺陣や相撲は台湾の人にも印象が強いので、そこの設定は入りやすいだろうなと思いました。きっと引き込まれる内容です。そして、すごいのが、本当に“行き過ぎない”んですよね。音楽も笑いも。そういうのが感動しました。

石田 ……(感慨深そうに)そう思ってもらえるとうれしいですね。”ノンバーバル”って言うと堅い感じになっちゃうけど、要は「しゃべらない」という設定の舞台なんです。今回の『結-MUSUBI-』には、世界に日本のお笑いを知ってほしいというのが根幹にある。日本のお笑いって、世界的に見ても、ものすごく質が高いと思っているんだけど、そのことに世界の人がほとんど気がついていない。世界から見ると、日本人は「真面目で退屈そう」なイメージがあるので、それを少しでも変えていきたい。だから、漫才少爺の2人はすごいなと思うよ。台湾に行って、現地の言葉で日本のお笑いを広めているわけだから。

出典: FANY マガジン
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三木 ありがとうございます! 海外に行った当初は知らないことが多くて、そのひとつが「スタンダップコメディってなんだろう?」ということだったんです。海外のお笑いって、だいたい1人喋りから始まるんですよね。でも、逆に日本ではスタンダップが流行っていない。なんでなんだろうと不思議でした。

太田 日本のお笑い文化は本当に独特なんですよね。でも、それでいて質が高い。台湾で活動を始めて7年なんですけど、少しずつ、漫才を始める現地の子たちも出てきました。じつは、最近の台湾で漫才始める人たちのほとんどが、NON STYLEさんがコロナ禍で公開した漫才動画がきっかけになっているんですね。いわば台湾には、NON STYLEチルドレンがいっぱいいるんですよ!

石田 えー、ほんまに? それはうれしい!

石田、漫才少爺のネタを見る

――では、ここで、漫才少爺さんのネタを石田さんに見てもらいましょう!

動画はこちらから。

出典: FANY マガジン
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(中国語でテンポよく漫才をする2人。台湾人ならわかる、あるあるが満載のネタを見終わって)

石田 すごーーい!(と拍手) むちゃくちゃすごい! しっかり漫才やし、海外で勝負するポイントが押さえられてる。思っていた以上にすごく良かった。

太田 ありがとうございます! めちゃくちゃ緊張しますね。

三木 このネタはスタンダップぽいというか、試しに1本作ってみたものなんです。

石田 お客さん、めちゃくちゃウケてた。あれだけウケたら楽しいよなっていうくらい。

太田 台湾の人って、日本のお客さんより、一緒に盛り上がりたいみたいなところがあるので。「イエーイ!」も一緒に言ってくれたり。

三木 日本だったらお客さんは見る側になっちゃうけど、台湾の人は、一緒に楽しんでくれるんです。

太田 僕ら、台湾で単独ライブもやっているんですけど、途中のゲームコーナーではお客さんからの質問をもらうとか、お客さんを舞台に上げるとか、一緒にできるものを大事にしています。

石田 こういうのを見ると、挑戦したくなりますよね。

漫才少爺 マジっすか(笑)。めちゃくちゃうれしい。

出典: FANY マガジン
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――完成度の高いネタでしたが、石田さんから、より良くするためのアドバイスはありますか?

漫才少爺 ……(キラキラした目で石田を見る)。

石田 ……僕が言うのは難しいなぁ。やっぱり台湾なり現地の常識を知らないとお笑いはできないけど、そこを知っている漫才少爺のおふたりなので。僕が言えることっていうのは、そんなにないですね。
ただ、あんなにお客さんが前向きに楽しんでくれているのであれば、もっとエネルギーを前に飛ばすというか、平面ではなく、もう少し立体的にしてもいいのかなと。たとえば、「お前バカか」っていうツッコミのときに一歩前にでるとか。それだけでも、お客さんってもう一個、壁が壊れた感じになって、より楽しんでくれる。そういうこともやると、もっと盛り上がるのかなという感じがしました。

三木 僕からも質問していいですか? 台湾に住んで7年なんですけど、これまでは外国人というのを強みにして漫才をやってきました。でも今後、もう少し深い笑いをとなったとき、どういう方向に発展していったらいいでしょう?

石田 確かにね。台湾に住んでいる外国人で、というさわりだけじゃないところに行きたいもんね。難しいね。ちなみに、ぱっと見で、日本人って台湾の人にはバレてるの?

三木 いや。最近ではだんだん、台湾人と間違えられたり。

太田 中国語をしゃべっていても、香港人だと思われることもあります。中国語は結構しゃべれているけど、台湾の方からすると「母国語ではない。でも、日本人が話す感じともちょっと違う」みたいな。だから、1発目で日本人とわかってほしいというところもあって、漫才の入りは「どうもー」という日本語にしています。

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石田 そうかー、なんやろうね。これ、質問とはまたちょっと違うかもしれへんけど、なんかムキになったとき、めちゃくちゃ日本語をしゃべるとかそういうのをやって。で、それに対して、「ちゃんと言えや!」とツッコんだら、中国語で最初とぜんぜん違うことを言ったところで、ツッコミが「いやいや、こいつ、さっき、こんなこと言ってたんですよ」とかもありかもね。

漫才少爺 (2人そろって)あーーー! なるほど!

三木 確かにそうですね。ムキになって日本語でしゃべるのか、なるほど。たまにミニコントみたいな感じで、ゲームコーナーでうわーっと日本語でしゃべって、「お前、なに言うてんねん」とか、そういうのはやったことあるんですけど、確かにネタにも盛り込める感じですね。

「なんでやねん!」は日本でしかない伝わらない

太田 中国語の漫才で最初に大変だったのが、「ツッコミ」という概念がないということでした。「何してんだよ!」「なんでやねん!」に当たる言葉がないんですよ。だから伝わらない。「なんでやねん」って言葉がないから、何のことを言っているか、わからないんですね。

――「WHY?」ではダメなんですか?

三木 最初はそれをやったんですよ。

太田 でも、それだとツッコミではなく、ただの疑問形なんですよね。だから、ふつうに理由を説明しなきゃいけない流れになる。「なんでだよ」と相手にツッコむということが、もともとの台湾の文化にないから、それができない。

石田 面白いね。実はいま、うっすら動いているのが、海外の方々に漫才を知ってもらおうというプロジェクトなんです。「TEMPURA、FUJIYAMA」と同じように「MANZAI」も世界で通じる言葉になってほしい。そのために何ができるかっていろいろ動いています。だから、まずはその足がかりとして、漫才少爺には、台湾で漫才を広げてもらえたらと思います。

出典: FANY マガジン
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太田 僕らも、漫才という言葉を知ってくれた人たちに「ボケ」や「ツッコミ」というのを言葉としてだけではなく、ニュアンスも含めて定着させていけたらと思っていて。一応、中国語にも似たような表現はあるんですけど、ボケは「バカを演じる」みたいな感じで、ちょっとニュアンスが違う。台湾で漫才をやっている子たちには、ボケ、ツッコミ、フリというのを、日本語として覚えてもらったほうがいいのかなと感じています。

石田 それはそうだね。ボケとツッコミも、世界の人に覚えてもらえるようになるといいね。

太田 外国人の芸人である僕らの使命として、漫才をやっている台湾の人たちに何を伝えていけるんだろうと思っていて。

三木 徐々にですけど、高校生くらいの若い子が漫才に親しんで、自分たちでも始めてくれたらうれしいですね。いま、週に1回、バーで漫才のライブをさせてもらっているんですが、台湾にも毎日公演できるような漫才の劇場ができたらいいなと思っています。

太田 コロナ前は、ときどき仕事で日本に行ったりもしていたんですが、それがコロナによってなくなったので、2年間、台湾の漫才だけに集中できた。そこは、ありがたかったなと思います。
あと、最初は僕らだけで漫才のことを考えていましたが、徐々に台湾人の仲間が増えてきて、「このワードどうかな」とか話せるようになってきた。これは、すごくうれしいことですね。漫才を始めた台湾の子たちと、できることをやっていきたいと思います。今回、石田さんとお話させてもらったのは大きな一歩で、すごく勉強になりました。ありがとうございました!

出典: FANY マガジン
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今回のインタビューの様子は漫才少爺のYouTubeチャンネル「漫才少爺 漫才ボンボン」で公開中です。
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