10月15日(土)、16日(日)に京都市内各所で開催されている「京都国際映画祭2022」。15日(土)、京都市京セラ美術館では、国内外で活躍するマイムトロニクスKAMIYAMAによるアートパフォーマンス『カリガリ』が行われました。 同美術館では映画祭の『第9回クリエイターズ・ファクトリー(アート部門、子ども部門)』が開催中。「才能の再発掘・再発見」をテーマに、過去のクリエイターズ・ファクトリー受賞作家やノミネート作家に今一度光を当て、作家の皆さんの過去・現在、そして作家自身を魅せる展示企画が実施されています。KAMIYAMAは、その会場となっている多目的室を出発地点に、館内を移動しながらのパフォーマンスで、来場者を不思議な世界にいざないました。
魚をつれて美術館の中をさまよう
多目的室に、グリーンの光を放つ不思議なボックスを背負ったKAMIYAMAが現れると、来場者の目は一瞬で釘付け。リードにつながれた魚を散歩させながら歩みを進めていくと、室内の空気が徐々に張りつめていくのが感じられます。もう一方の手には大きなトランクを携え、何かを探しているかのような動きで、見る者すべてをあっという間に“KAMIYAMAワールド”へと引き込んでいきました。
多目的室を出たKAMIYAMAは、ミュージアムショップを抜け、エントランス、出口と館内を回遊。ベンチでひと休みしている来場者の足元に、魚がすいすいと寄っていったり、階段を上がったところでは、鍵を差し込み扉を開けるパントマイムを挟んだりと、さまざまな動きにアドリブを加えていきます。いつしかたくさんの人垣ができ、スマホをかまえて撮影する人、目を丸くして見入る子どもたちなど、行く先々で注目を集めていました。
周囲の風景が一望できる東山キューブテラスでは、階段に腰掛け、トランクから出したマグカップでコーヒータイムも。さらに、切れ切れの小さな紙を大きな地図に変えてみせたり、通路に落ちていた紙くずを採集して小さな瓶に収めたりと、“何か”を探し続けます。
日本庭園では、大きなガラス窓の内側にいるギャラリーに向かって、メタリックなボールなど、トランクに収められたコレクションを取り出してパントマイムを見せる演出も。まるで庭園をバックにしたサイレント映画のようなシーンに、「えっ! これ何? 」「おもしろい! 」という声があちこちで上がっていました。
コンセプトは「時の放浪者」
1回目のパフォーマンスを終えたKAMIYAMAは、「『何だ、これは? 』っていう感じで、特に子どもは一瞬、グッと固まるみたいな。この美術館の建物もすごく存在感があって、それが味方してくれる感じもして、すごく楽しかった」と手ごたえを語ります。コンセプトは「見る方の自由」としつつ、「いわゆる放浪者なんですね。タイムスリップしながらいろんな時代に行って、不思議なものをコレクションしている男。いわゆる時の放浪者みたいな」と説明。タイトルの『カリガリ』は、ドイツの有名なサイレント映画『カリガリ博士』からきているそうで、「大好きすぎて、いただいちゃいました」と笑顔を見せました。
日本庭園でのガラス窓を隔てたパフォーマンスについては、「中の人は暑さとかも感じず、すごい適温で見られて、人ごとのような感じが逆におもしろい。初めての経験でしたが、またやりたいですね」と振り返ったKAMIYAMA。2回目のパフォーマンスは夕方のため、「暗くなると、もっと不思議さが増すかな」と楽しみにしている様子で、「ほとんど即興的にやってるんで、ここで何を、というのは決まってないんですよ。状況判断しながらやってるんで、もっと闇に包まれた感じで、明かりをいろいろ使ってやりたい」と意気込みを聞かせてくれました。