人気芸人たちが「ビジネスマン芸人」となってスタートアップ企業をサポートする企画がスタートして3カ月。その間の取り組みを披露してナンバー1を決める『ビジネスマン芸人グランプリ ザ・ファイナル』が、10月18日(火)に大阪・YES THEATERで行われました。イベントを開いたり、CM動画をつくったり、お笑いのノウハウを伝授したり――スタートアップ企業と芸人の組み合わせで、いったいどんな化学反応が生まれたのか!?
「世界に通用するビジネスを期待」
『ビジネスマン芸人グランプリ』は、吉本興業と大阪のスタートアップ企業の若手経営者の会・秀吉会がタッグを組み、関西のビジネスシーンをお笑いの力で盛り上げることを目的に企画されました。
ファイナルでは、スタートアップ企業10社と組んだ芸人たちが、それぞれの担当企業の、この3カ月間の“のびしろ”を5分間でプレゼン。事業内容の理解度に加え、わかりやすく、おもしろくPRできているかなど、企業ではなく芸人の働きを審査・採点してベスト3を発表します。会場には参加企業の社員を始め、多くの観客が詰めかけて熱気ムンムンです。
MCの浅越ゴエ(ザ・プラン9)がステージに登場し、10組のビジネスマン芸人を呼び込むと会場から大きな拍手が起きます。続いて今回の審査を担当する、『Forbes Japan』の藤吉雅春編集長、和歌山大学経済学部の足立基浩教授、そして笑い飯・哲夫の3人もステージに登場しました。
藤吉編集長は「世界に通用するビジネスを期待したいと思います」とコメント。足立教授は「僕も世界に通用することに加えて、和歌山で通用する人を」と話し、大学のある和歌山でのビジネス振興にも期待を込めます。哲夫は、豪華審査員との並びに「ついに、ここまで来れました!」と一言。ゴエがルールや審査基準、審査方法などを説明したあと、さっそくプレゼンがスタートです!
企業と真剣に向き合った芸人たち
1社目はギャロップ(林健、毛利大亮)と、輸入車専門の中古車販売などを手がける岡山のCARPRODUCEからです。ギャロップは、漫才でプレゼン。スタッフがやさしいという会社の印象やSNSの活用に取り組んだこと、スタッフとのやりとりでアイデアがどんどん出てきたことなどを盛り込んだネタを披露しました。
続いては藤崎マーケット(田崎佑一、トキ)と、大学新卒を中心としたダイレクトリクルーティングサービスを運営するi-plugです。藤崎マーケットの2人は、社長や社員とともにステージに登場すると横一列に並びます。スクリーンに「卒業式」という文字が映し出され、「仰げば尊し」をBGMに、これまでの取り組みを“思い出”を振り返るように発表していきます。会社のロゴを考えたことや、毎週のように通って訪問回数が11回にもなったこと、そして社長が宮古島に行って真っ黒に日焼けしていたネタなどが盛り込まれていました。最後は全員で「仰げば尊し」を熱唱し、社長の「明日からも宮古島へ行って参ります!」という一言で締めくくられました。
3組目はコヴァンサン&きょうくん(ザ・プラン9)と、天然木のタッチパネルディスプレイ「muiボード」などスマートホーム市場向けにIoTデバイス・システムを開発・提供するmui Labです。ステージに登場した2人は、「(デバイスを)知ってもらおうということにポイントを置いた」とプレゼンの趣旨を説明。そして、「せっかくコラボをしているから形のあるものを残したい」と制作されたCMをスクリーンに流しました。
タナからイケダ(田邊孟徳、池田周平)と組んだのは、看護師人材の経験・知見のデータベース化してフリーランスの看護師と利用者をつなぐ保険外看護サービスを展開するSuper4。池田が「全10組のなかで、いちばん仲良くなれた、密な関係を築けた自信がある。全社員の顔と名前を覚えた」と豪語すると、すかさず田邉から「(社員が)2人しかおらんからな!」とツッコミが入ります。ミーティングの写真や飲み会の写真などを見せつつ、フリーランスの看護師をサポートする事業のことや、保険外看護について説明。さらに、フリーランスの看護師からリモートで話を聞いたこと、車イスを使った疑似看護体験をしたことなどを明かしました。
続いてはspan! (水本健一、マコト)と、カレンダーやタオルなどの名前入りグッズやカスタムオーダー製品をネット販売するレスタス。「人といかに触れ合うかがテーマだった」と話してプレゼンがスタートします。最初に社長から「地域を盛り上げたい。会社がそこにあることを知ってもらいたい」といった思いを聞き、大阪府住みます芸人でもあるspan!と意見が合致したそうです。地域でお祭りイベントを開き、span!の2人も折り紙教室やインスタライブなどに尽力したとアピールしました。
漫才の作り方が営業活動のプラスに!?
後半は、女と男(ワダちゃん、市川)と、外国人の人材紹介情報サイトや、宿泊施設運営などの事業を手がけるFuntocoから。まずは、外国人労働者がクリーンに働ける環境を作ることの重要性や、特定技能ビザについて説明すると、実際に自社では外国籍の人材が4割、女性が7割と多様性があることを強調。また、女と男の2人がオフィスを訪問したときの様子や、外国料理の試食会をした様子などのダイジェスト動画も流されます。最後は、ネパールとインドネシアから来たスタッフもステージに上がり、4人で漫才のようなやりとりを見せて会場を盛り上げました。
次はミサイルマン(岩部彰、西代洋)と、家を売りたい人と不動産会社をつなぐプラットフォームを運営するイクラ。2人はホームページの改善や営業力の向上、そしてノベルティ制作に取り組んだとのこと。西代がロケで培った対人ノウハウを活かして、不動産の売主がノンストレスでやりとりできることを最重視してホームページを改善したところ、アクセス数や登録数が飛躍的に伸びたそうです。ノベルティ制作では、岩部がイラストの腕を発揮。「親しみやすくなることを目指した」という手書きイラストのピンバッジやTシャツ、カレンダーなどのアイテムが披露されました。
ガクテンソク(よじょう、奥田修二)とタッグを組んだのは、企業や学校で働く人たちに向けてテクノロジーを使いこなすための研修やコンサルティングを提供するストリートスマート。奥田は「自分たちが研修を受けてDX化することが、いちばんのプレゼンになるのではと実践した」と話します。スクリーンに映し出されたGoogleのトップ画面から、さまざまな検索ツールを使って実演。さらに漫才の作り方を教えたところ、それが実際のプレゼンや営業に役立ったことなどを説明しました。
スマイル(瀬戸洋祐、ウーイェイよしたか)と、専門学校生の学習・就職活動を支援するアプリの開発・運営などを行うグッドニュースは、スタッフも一緒にステージへ。スマイルの2人は「週一社長」として活動したといい、「挑戦する気持ち」を自分たちなりのミッションとして掲げたと説明します。そして、実際に学生と一緒にインターンシップに取り組んだことや、就活生にインタビューしたエピソードを披露。さらに、週1回のスマイルによる朝礼を楽しみにしていた社員が多かったことなどを報告しました。同社のスタッフは「3カ月で終わりたくない。この先もパートナーとして学生の応援に携わっていただきたいくらい満足度が高かった」と2人を絶賛していました。
ラストはモンスターエンジン(西森洋一、大林健二)と、中小企業向けの採用業務オンラインツールの開発・運営をしているネットオン。このチームは、CM動画を作ってSNSなどでばらまく作戦でいこうと決めたそうです。今回のプレゼンでは、面接の際の「あるあるエピソード」を集めて作った動画など数本を実際に流して、撮影のウラ話を披露。動画を計22本制作し、総再生回数は8万回に上ったと明かしました。
ミサイルマン・西代「企業が芸人を求めている」
全組のプレゼン終了後、ビジネスマン芸人と各企業の代表がステージにそろうと、審査が終わり、いよいよ結果発表です。同点で第3位になったのは、span!とタナからイケダの2組。第2位はスマイルに決定。そして、堂々のグランプリに選ばれたのはミサイルマンの2人!
笑い飯・哲夫からトロフィーと目録が手渡され、足立教授が「カレンダーを作るなど手がこんでいた。発想もよかった」と称えると、哲夫も「自分たちの特技を生かしていてよかった」と評価しました。
3カ月間でいちばん印象に残っていることを聞かれた西代は、自分が講師となって同社でコミュニケーション講座を開いたことを振り返ります。その後、同社スタッフが大手不動産会社でプレゼンし、幹部社員の心を動かしていたのを見て、「成長したんだな」と感じたとのこと。岩部は、Tシャツのデザイン案を4、5枚持って行ったところ、カレンダーも出したいと言われて、「あと12枚いるのか……」と肩を落として家に帰ったエピソードを明かしました。
企業に対して「影響を与えた、何かが変わった」と感じたことを問われた西代が、こう話します。
「企業の方々も、芸人を求めてるんじゃないかと思った。芸人の当たり前が当たり前じゃなくて、こんなことで喜んでもらえるのか、ということも多々あった。これからも芸人が携われることがあるのではと思う」
一方、イクラの坂根大介CEOが「コミュニケーションに特化して西代さんに教えてもらった。岩部さんの可愛いデザインで明るくしようという発想も、これまでは全然なかった。ここまでやってくれるとは本当に思ってなかった。ありがとうございます」と感謝の言葉を語ると、最後に西代が「最高でした! これからも大きく飛躍してください!」とエールを送りました。