審査員らが語り尽くす関西演劇祭の魅力「期間中に劇団の変化や成長をみんなで楽しめるから面白い」

演劇を通して関西の街を元気にしようと2019年に始まった『関西演劇祭』が、今年も11月12日(土)から20日(日)に開かれます。間近に迫ったこの一大イベントに向けて、今回はスペシャル座談会を実施! 実行委員長を務めるフリーアナウンサーの笠井信輔氏、フェスティバル・ディレクターでお笑い芸人の板尾創路、​そして​スペシャルサポーター(審査員)、スーパーバイザーの各氏に演劇祭への思いや期待などを語り合ってもらいました。

出典: FANY マガジン
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関西演劇祭は「クリエイター×劇団×観客の出会いの場を提供する演劇祭」をモットーに、関西から演劇シーンを盛り上げようと始まったもの。4回目となる今年は、有名無名を問わず実力勝負で選ばれた10劇団が参加。バラエティ豊かなラインナップは、演劇ファンはもちろん、観劇初心者も魅了する内容です。

今回の座談会には、笠井氏、板尾のほか、スペシャルサポーターとして2.5次元ミュージカルを中心にプロデュースするネルケプランニング社長・野上祥子氏、映画監督の三島有紀子氏、NHKエンタープライズでドラマ制作を担当する山本敏彦氏、さらに、スーパーバイザーの劇作家・西田シャトナー氏の計6人に参加してもらいました。

板尾「お祭り感が出ればいいな、と」

笠井 今回、関西演劇祭に初参加です。10劇団が出演されますけど、関西の劇団がほとんどですよね。東京にいると、関東以外の劇団に触れる機会がなかなかないんですよ。新しい出会いがありそうで、非常に楽しみです。

出典: FANY マガジン
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山本 僕も初めての参加なのですが、関西の空気で演劇を観られるというのも嬉しいです。「ツカミはどうくるのか」「オチはどうするのか」と、どんなドラマが繰り広げられていくのか期待が高まりますね。物語に込められたメッセージもしっかり受け止めたいと思います。

笠井 吉本興業さんの主催という視点から見てもすごく面白い。スタッフの方たちと話していても、10劇団を選ぶのに際して「吉本の“選ぶ目”は、すごいんだぞ」という意気込み・本気度を感じるんですよ。「皆さんに楽しんでもらいたい」「お客さんを集めたい」という思いだけではなく、いい作品を上演して、全国の方たちに参加劇団のことを知ってもらい、飛躍してほしい――という気持ちが伝わってきました。おもちゃ箱のような、多彩な作品が出てくるんじゃないかと期待しています。

野上 私は、ティーチイン(上演後に劇団員、観客、審査員が意見交換する仕組み)には参加したことがあるのですが、審査をするのは今回が初めて。観劇して、どういう感情になるのかとても楽しみです。次の演劇をつくるときに、今回で得たものを生かせるのではないかと期待しています。

出典: FANY マガジン
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三島 私は演劇を観るとき、なるべく初日か千秋楽を観たいなと思っているのですが、ぜんぶ観るのが難しければ、(期間中に1劇団3公演するなかで)初回公演か3回目の公演を観たいと思っています。私も審査は初なので、皆さんのお話を聞きつつ、総合的に判断したいですね。

板尾 当然のことですが、劇団の皆さんには楽しんでほしいです。お客さんも、演者側も、運営側も楽しめるのがいちばん。関西演劇祭は“お祭り”ですからね。子どものころ、地元のお祭りって楽しかったじゃないですか。イベント自体もお祭り感が出ればいいなと思っています。

ティーチインでヘコまされて…

笠井 劇団の公演をたくさん観ることによって、どんなことがわかるのでしょう?

西田 審査員同士で「昨日の回よりも今日のほうが面白くなってた」「ティーチインでヘコまされていたけど、今回頑張ってた」など、楽屋で情報交換をできるのですが、皆さんいろんなお芝居を観たり、つくったりしてきた方なので、聞いていてもリアルに想像できて、すごく面白いです。

出典: FANY マガジン
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笠井 「ヘコまされる」というのはどういう意味なんですか?

西田 ティーチインのとき、ストレートに「自分には好きなジャンルではなかった」と言う言葉が出たことがあって。「でも、こうしたらもっと面白かった」というアドバイスも同時にあったんです。なんと、劇団は次の回でアドバイス通りではなく、逆にジャンルの好みを吹き飛ばすほど奮起した演技をして、それは素晴らしい出来になりました。

三島 それって本当にいいことですよね。ふつうは言ってくれないから。

西田 その意見を聞いた劇団が、次の公演で良くなっているのを観ると、胸が震えるし、「関西演劇祭ってすごく面白いお祭りだな」と感じます。

笠井 映画祭もティーチインがありますが、たとえ文句を言われても編集はできないですからね。正直にズバッと切り込まれて「次の公演で変えよう」なんて驚きです。

三島 映画祭のティーチインもそうなのですが、作品をつくった方が登壇されて、目の前で「どういう思いでつくっているか」「完成に至るまでどれだけ大変だったか」といったことを聞けたり、感じたりできるので、身近に感じられますし理解も深まります。当然、応援したい気持ちになっちゃいますよね。お客さまの意見を吸収した皆さんが、最後にどういうお芝居を観せてくれるのか。非常に楽しみです。

出典: FANY マガジン
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野上 そうなんですよね。審査員の皆さんから情報を聞いたりすると、とたんに参加劇団のことを身近に感じて、ぜんぜん知らなかった彼らのことが家族のように思えてくるんです。だから、こちらとしても、思ったことはきちんと伝えたくなる。作品を観た方は、どの劇団も好きになっちゃうと思います。私は気になって、全劇団のSNSフォローしちゃいましたもん(笑)。

山本 これまでも、NHKの職員が審査員として参加しているのですが、俳優だけではなく、脚本家とも話ができて、「どういう経緯でこの主題を思いついたのか」など、詳しく話が聞けると言っていました。とても楽しみですし、出会いの場としてもいいなと思いますね。演劇祭のテーマでもある「つながる演劇祭」という意味では、演劇界と、テレビドラマ・映画界がつながるイベントになればいいなと思っています。

出典: FANY マガジン
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同じ作品を見比べる楽しみ

​​西田 全力でやっていると予想外のことが起きたりしますね。ある劇団が、1回目の公演ですごくウケたんです。それで気合が入りすぎたのか、2回目ではいろいろ空回りしていた。我に返った感じで3回目はまた素晴らしい出来になりました(笑)。公演後、板尾さんが「この劇団はどうしても無視できない」とおっしゃってね。

板尾 「審査員特別賞」を贈りましたよね。

西田 作品の中身に加えて、公演の「プロセス」が選考材料になったケースですよね。本来は、プロセスに関する賞なんてないんだけど、「期間中に、コイツら全力を尽くしたんだ」という劇団から感じる熱意に感動させられてしまいました。板尾さんを始め、審査員のみなさんが、そういったことを汲んで観ていたのは、私も劇団出身者として嬉しかったし、よかったなと思いました。。

板尾 演劇ってどうしてもメディア・映像で流れにくいし、広がらないことがほとんどじゃないですか。関西演劇祭は、10劇団を凝縮して観ることができるし、発信もできるから、とてもいいイベントだと思いますね。45分の公演を期間中に3回やるなかで、劇団の変化や成長をみんなで楽しめる。だからこそ、そこに生まれてくる「感情」に心が動かされるんでしょうね。そういった意味でも「審査員特別賞」をあげたくなったんですよ(笑)。

出典: FANY マガジン
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笠井 演劇ファンって公演期間中にリピートすることがあるんですけど、演劇“祭”をリピートするのも楽しそうですね。約1週間の間で、同じ作品を観くらべる楽しみ方がある、というのは面白い! あと、たとえ劇場に来られなくても、オンライン配信があるから、全国のみなさんともつながれるのがいい。味見をするという意味でも、配信はおすすめですね。


『関西演劇祭』公式サイトはこちらから。