「関西演劇祭」吉田裕×シゲカズです公演直前スペシャル対談! 「ギャグなし」舞台に新喜劇メンバーが挑む!?

11月12日(土)に開幕した「関西演劇祭」には、選りすぐりの10劇団が参加しています。そこには、吉本新喜劇の吉田裕が率いる「劇団なんば千日前」と、ピン芸人のシゲカズですを中心に、よしもと漫才劇場(マンゲキ)の所属芸人で構成された「劇団イロモンスター」という2つの劇団の名前もあります。吉本の芸人たちが演劇祭でどんな舞台を見せるのか。本番直前の吉田裕とシゲカズですに、それぞれの劇団や作品、稽古の様子などについて語ってもらいました。

出典: FANY マガジン
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【劇団なんば千日前】
『カレーとシチュー』
作:村上純(しずる)
演出:高梨由
出演:吉田裕、レイチェル、桜井雅斗、鮫島幸恵、吉岡友見

【劇団イロモンスター】
『感情のないあっきー』
作・演出:シゲカズです
出演:シゲカズです、秋定遼太郎(滝音)、兎(ロングコートダディ)、河野良祐(令和喜多みな実)、つーこ、松永圭輔(スナフキンズ)、守谷日和、熊元プロレス(紅しょうが)、浜田順平(カベポスター)、田中ショータイム(フースーヤ)、谷口理(フースーヤ)、下田真生(コウテイ)

しずる・村上純が脚本の「人情モノ」

――それぞれの劇団は、どんな舞台を用意しているんですか。

吉田 「劇団なんば千日前」は、新喜劇のメンバーがギャグなしの真面目な話をします。稽古でも台本を理論的に解釈していく感じで。しずる・村上(純)くんが書いた人情モノを上演します。

シゲカズ 僕らはいつもと変わらないというか、ちゃんとしたお話は劇団の方々がされるので、僕らの土俵に皆さんを引きずり込んでやるしかないなっていう感じです。

出典: FANY マガジン
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――人数もぜんぜん違いますね。

吉田 そうですね。劇団なんば千日前は5人で、劇団イロモンスター12人です。

――5人だと話し合いもまとまりやすいですか。

吉田 息が合うのは早かったですけど、そのなかで「この役の人って、どういう人間なんかな」とか、おさらいして。それでちょっと演出が変わってきたり……。

シゲカズ うちは12人ですけど、むかしからみんなやってるので息とかは合ってると思うんです。僕がもうぜんぶ掌握してるので、ヤツらの感情とかに関しては。でも、向こうから意見が出てくることもありますね。

――たとえば、誰ですか?

シゲカズ コウテイの下田(真生)は意外とね、「ここは、こうやったらどうすか」みたいな意見をいっぱい言ってくれますね。(ロングコートダディ)兎は、マジでどうやったら早く家に帰れるのかと思いながら稽古に参加してますけどね。リハでも「台本持ったらあかんのか」とか言ってましたから。セリフが飛びそうやからって。そんなん持ってる人おらんでって、なんとか話をつけたんですけど。

吉田 新喜劇のなかでは(島田)一の介師匠がいち早く台本を手放すんですけど、セリフが飛ぶんですよ。川畑(泰史)座長に「飛ぶんやったら持ってくれ」って怒られてます(笑)。

出典: FANY マガジン
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――それぞれの劇団のなかで、意外な一面が見えたメンバーはいますか。

吉田 レイチェルですね。新喜劇のなかでは“ギャガ―”のイメージがありますが、こんなお芝居もできるんやっていうキャラのギャップがあります。

シゲカズ フースーヤの田中ショータイムは、すぐ主人公みたいな動きするんですよ。こいつマジで主人公みたいな動きするな~って思いますね。

吉田 主人公じゃないのに(笑)。

シゲカズ それがおもろすぎて採用したんですけど、自分の役を主人公みたいに勝手にやりよるんですよ。オートでそうなってます。

――吉田さんが、しずる・村上さんに脚本を頼んだいきさつは?

吉田 レイチェルが村上くんの本でコウテイ・九条(ジョー)くんとふたり芝居したり、僕も(新喜劇の)佐藤太一郎の企画で村上くんの本の芝居に出してもらったりして、“人情のお芝居を描きはる人やな”って思っていたんです。
今回、やるからにはメッセージ性のあるものをやりたいなって思っていて。まったく関係性のない作家さんよりは、知っている人のほうがいいなっていうのがあったので、レイチェルが勧めてくれたのもあるんですけど、1回お願いしてみようかと。村上くんはあてがきしてくれて、メンバーが出ている新喜劇の映像を見てくれたり、実際の家族構成をヒアリングしたりして、このメンバーだったらこんな話がいいかなっていう感じで書いてくれました。

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――「イロモンスター」の舞台はどうやって作ったんですか?

シゲカズ あっきー(滝音の秋定遼太郎)がどうやっても秋定の喋り方しかできなくて、おもろいからこれで1本作るかみたいな感じで作りました。滝音の漫才そのままです。でもあっきーは演技をやろうとするんですよ。それはやめてくれと。稽古するとみんな役に入ろうとするんですけど、それは要らんと。人間的な素材そのままであってほしいというか。「お前が深く踏み込んで、役に入る必要はない。それはこっちがやるから」と言ってます。

直前に変更された舞台タイトル

――『関西演劇祭』は1公演で2劇団が上演しますが、組み合わせが一緒の日はありますか?

シゲカズ それがないんですよ。

吉田 イロモンスターさんは何とかして観たいと思ってます。

シゲカズ いや、観んといてほしいです(笑)。僕、新喜劇がむちゃくちゃ好きなんで。ほんまにすごい尊敬してるんですよ。お笑いの人に見られると緊張してしまいます。この世のお笑いで新喜劇がいちばんウケてますよね。僕の感覚としては、吉田さんがいま、日本でいちばん笑い声を聞いている人なんですよ。ほんまに。いろんな座長さんの回に出てはるから、そんな人の芝居ってすごいと思いますね。

吉田 恥ずかしいな(笑)。今回、何してんねんって思われそうや(笑)。僕たちはそんなにお笑いは入れてなくて。村上くんもそんなに入れてませんと。もちろんリアクションや関係性で笑いが起こることもあるかもしれないですけど、かといって完全に狙って、「振ってます。落とします」みたいな感じはないですね。

出典: FANY マガジン
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――そういうお芝居を45分、続けるというのはどんな感覚ですか?

吉田 僕ら新喜劇は「基本は絶対、芝居やで」っていう教えなので、演じることに違和感はまったくないんです。伝えたいことをお芝居するだけなんですけど、いざやってみたら“寂しさ”を感じるかもしれないですね。でも、『関西演劇祭』をイメージしてお芝居を作ったので、笑いがなくてもぜんぜん大丈夫です。

シゲカズ うちは絶対ウケなあかんやろってところはめっちゃあります。笑い声がなかったらスベってるという判定のところはいっぱいありますね。

吉田 矢野・兵動の矢野(勝也)さんが、お芝居でスベったときに「スベったって感じたらあかんねん。あれはそういう人やねんって思えばラクやで!」って言ってたんですけど、スベってるものはスベってるもんな(笑)。

シゲカズ 残念ながら(笑)。

吉田 新喜劇でも、ウケると思ってたところがスベったら足震えますからね(笑)。そういう意味で今回は「ウケるんかな、スベるんかな」っていう不安はないけど、「伝わるんかな」はありますね。それもまた違う楽しみ方で挑めます。あと、(しずる)村上くんから1個だけ変更してくれと言われたのは、タイトルを『ずっと見てくれてる、なんてそんなこと思ってなかった』を『カレーとシチュー』に変えてくれと(笑)。チラシで変更はもう間に合わなかったんですけど、まったく違うタイトルになりました。

――なぜ変更したんでしょう?

吉田 わかりやすい名前のほうがええかって。『ずっと見てくれてる、なんてそんなこと思ってなかった』だと、このシーンのことなんかな?とか想像させるじゃないですか。わかりやすい言葉のほうが(世界観に)入りやすいんちゃうかって。

出典: FANY マガジン
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次回はやなぎ浩二もメンバーに!?

――『関西演劇祭』ではMVO(Most Valuable Opus)や脚本賞、演出賞など6つの賞を決定します。第1回(2019年)は令和喜多みな実・野村尚平さん主宰の「劇団コケコッコー」がベスト脚本賞やベスト演出賞など4つの賞を受賞しました。今回、野村さんと何か話をする機会はありましたか?

シゲカズ 僕は軽く、「どんな感じ?」みたいなことを言っていただいて。「いつも通りでいいと思うで。頑張って」って言ってくれました。ロックスターみたいな感じでした。

吉田 革ジャン着てた?

シゲカズ はい。

吉田 ロックスターやな。ギター背負ってた?

シゲカズ はい。

吉田 ロックスターやないか! イロモンスターには相方さん(令和喜多みな実・河野良祐)も出るしな。

シゲカズ はい。河野さんは唯一、セリフが多くても大丈夫なんですよ。セリフが少なかったら「少ない」って言いはるので。なので、圧倒的にセリフを河野さんにお願いしました。

出典: FANY マガジン
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吉田 セリフが多い少ないって新喜劇のベテランさんしか言わへんで(笑)。「セリフ少なくしてや、頼むで~」って。ベテランさんは極力減らそうとするから。やなぎ浩二師匠なんか、「小さいころから苦労してきて、いろんなことを頑張ってきたんやろ」みたいな4行ぐらいのセリフを「ちょっとこれ、自分なりにまとめてええか」って言うから、「わかりました、どうぞ」と言ったら、次の回から「頑張ったな」ってそれだけやって(笑)。「それは違うでしょ、師匠!!」って。「大事な言葉が入ってるんですよ、それだけはなんとか、もうちょっと頑張ってください」って(笑)。

シゲカズ すごい!! イロモンスターの最上位の方です。

吉田 来年からやなぎ師匠にも入ってもらいましょう(笑)。


関西演劇祭で「劇団イロモンスター」の公演は11月14日(月)と19日(土)に、「劇団なんば千日前」の公演は17日(木)と19日(土)に予定されています。

『関西演劇祭2022』公式サイトはこちらから。

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