今年で4回目を迎えた「関西演劇祭2022」が11月12日(土)からスタートしました。多数のエントリーから有名無名を問わず厳選された10の劇団が、それぞれの舞台を披露します。初日には、演劇祭の舞台となる大阪・COOL JAPAN PARK OSAKA SSホールで開会式が開かれ、参加劇団の代表者たちが意気込みを語りました。
関西演劇祭は、「つなぐ」をテーマに2019年からスタート。これまでの受賞者たちは演劇祭を機に、テレビや舞台などでの活躍の場を広げています。新たなコミュニティやコンテンツも次々と派生するなか、演劇祭は「つなぐ場」から「つながる場」へ――そこで、4回目となる今年は「つながる」をテーマに開催することになりました。
参加する劇団は、かのうとおっさん、劇団イロモンスター、劇団なんば千日前、激団リジョロ、幻灯劇場、芝居処 華ヨタ、TAAC、Micro To Macro、ラビット番長、RE:MAKEの10組です。
吉本芸人による2つの劇団も参加
開会式の司会進行を務めたのは、浅越ゴエ(ザ・プラン9)と安部若菜(NMB48)。この日は会場に来ることができなかった「幻灯劇場」を除く9つの劇団の代表者が意気込みを語りました。
「かのうとおっさん」の嘉納みなこは、家を出た瞬間にハチがまとわりつき、命の危険を感じたというエピソードを語りつつ、「ハッピーなお芝居を皆さんに届けたいと思います」と挨拶しました。
吉本芸人で構成された2劇団も参加します。よしもと漫才劇場(マンゲキ)のメンバーを中心とした「劇団イロモンスター」の代表、ピン芸人のシゲカズですは「芸人集団ですので、楽しく笑ってもらえるように頑張りたいです」と語りました。
吉本新喜劇の劇団員による「劇団なんば千日前」の代表、吉田裕はこう語ります。
「ふだんは吉本新喜劇で、服を脱がされて、茶色い棒で右乳をドリルされる芸をやらせてもらっていますが、今回はそのすべてを捨てて新喜劇5人のメンバーでまっすぐのお芝居で勝負したいと思います。ギャグは完全に“せんのかい!”です」
東京・池袋を拠点に活動する平均年齢42歳の「ラビット番長」の井保三兎は「舞台上に加齢臭をまき散らしながら、出演者の3分の2は腰痛を抱えながらやっています。生暖かく応援してくれると嬉しいです」と挨拶しました。
一方、出演者の平均年齢が17歳という「RE:MAKE」の大西千保は、トップバッターで上演することもあって、「皆さんの胸を借りる気持ちで、思いっきり勢いをつけて元気よくいきたいと思います」と声を弾ませました。
「初めての劇団と出会うことが楽しみ」
開会式には、演劇祭の実行委員長を務めるフリーアナウンサーの笠井信輔氏も登壇。演劇祭への期待を語ります。
「今年は舞台を70本くらい見ましたが、『関西演劇祭』に出演される劇団はお初の方ばかりです。初めての方と出会うことをとても楽しみにしています」
一方、第1回からフェスティバル・ディレクターを務める板尾創路は、今年も開催できた喜びを語りました。
「4年目のフェスティバル・ディレクターをやらせていただきます。あっという間に4回目を迎えました。3年続いたらいいかなと思っていたら、今年もできるということで、今後ももっともっと回数を伸ばしていきたいですね。今回も初めて参加される劇団さんが多いですが、自分たちの劇場やと思って伸び伸びと一生懸命やっていただくと、すごく伝わるものがあると思います。ティーチイン(上演後に劇団員、観客、審査員が意見交換する仕組み)でもお客さんとか、われわれ審査員と意見交換をし合って、どんどんつながりを深めてほしい。熱演を期待しております」
スペシャルサポーター(審査員)として初参加の野上祥子氏は、ミュージカル『テニスの王子様』、ライブ・スペクタクル「NARUTO-ナルト-」など2.5次元ミュージカルを中心に多くの舞台をプロデュースするネルケプランニング代表です。今回の関西演劇祭への思いをこう語りました。
「出演する劇団は、何歳の人でも演劇を楽しんでもいいということがとてもよくわかる顔ぶれだと思います。今回の出会いに期待をしております」
国内外で多数の賞を受賞してきた映画監督の三島有紀子氏は、大阪・堂島生まれ。かつて大阪にあった小劇場でたくさんの舞台を見てきたそうです。それだけに「こうして関西で皆さんのお芝居を観られることを楽しみにしています」と期待を寄せました。
多くのドラマを手掛けるNHKエンタープライズのエグゼクティブ・プロデューサーの山本敏彦氏は、キャスティングを考えるうえでも、ふだんからさまざまな劇団を観ているといいます。
「ここでご縁ができて、ドラマに出てもらいたいと思います。審査もしますが、会場の皆さんと一緒に楽しみたいですね」
最後は、第1回からSPサポーターとして携わり、今年はスーパーバイザーとして参加する脚本家・演出家の西田シャトナー氏が挨拶しました。
「リハーサルもすべて拝見しました。びっくりするぐらい、いろんなお芝居があります。SNSなどを通じて面白いことを伝えていけたら」
「もっともっとつながって、もっと大きくなれば」
開会式を終えた笠井氏と板尾が囲み取材に応じました。板尾は、過去3年の手ごたえをこう語ります。
「1年目が手探りでやってきて、それからコロナ禍になり、大丈夫かなと思いながらもなんとか2年間やりきって。見せ方も固まってきたので、4年目からはさらに演劇祭のことをいろんな人に知っていただいて、もっともっとつながって、もっと大きくなればと思います。長く続けられる演劇祭にしていかないといけないと、4年目からは思っております」
“観劇マスタ―”である実行委員長の笠井氏には、初めて演劇を鑑賞する人に楽しみ方のアドバイスをもらいました。
「とにかく皆さんのフレッシュなパワーといいましょうか、大きな劇団にはないような、われわれの想像を超える部分をとても楽しみしています。笑えたり、難解すぎたり、そういったさまざまな表現がとても楽しみですね。小さな劇団に初期のころから出会っておくと、その劇団が大きくなったあとに『あの劇団、前から見てたんだよ』って青田買いができる。これはなかなか楽しいものです。将来、マウントを取れるので、まずは劇場に来て、楽しんでいただければと思います」
最後に、今回の演劇祭のコンセプトである「つながる」について板尾がこう語ります。
「つながるといっても、いろんな意味があると思っていて。いろんな縁が交錯して、将来につながっていくということがいちばん、関西演劇祭をやる意味があるのかなと思います」
笠井氏は、関西演劇祭について「“ここに来れば、自分が知らなかった劇団と出会える”という、新しい友だちができるような、興奮と新鮮な喜びがある」と評価したうえで、「エントリーの面でも、東京の劇団からもどんどん申し込んできてますから、一定の役割を果たし始めていると思います」とその役割に期待を寄せました。
『関西演劇祭2022』公式サイトはこちらから。