映画監督・中島貞夫の生き様に迫るドキュメンタリー映画公開! 「時代劇の本質を後世に伝えなければならない」

京都国際映画祭2021、大阪アジアン映画祭2022で上映され、好評を博したドキュメンタリー映画『遊撃 / 映画監督 中島貞夫』が、1月27日(金)からテアトル新宿(東京)、シネ・リーブル梅田(大阪)、アップリンク京都(京都)などで劇場公開されています。1月28日(日)にはアップリンク京都で舞台挨拶が行われ、中島貞夫監督と女優の三島ゆり子が登壇。過去の出演作の撮影秘話など、ここでしか聞けないエピソードが飛び出しました。

出典: FANY マガジン
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「俳優に理解を促すのが監督の仕事」

中島監督は、「くノ一忍法」(1964年)で監督デビュー以後、「893愚連隊」(1966年)、「まむしの兄弟」シリーズ、「木枯し紋次郎」シリーズ、「極道の妻たち」シリーズなど、数々の傑作映画を生み出してきた“伝説の映画監督”です。

今回の作品は、その中島監督が20年ぶりに手がけた映画「多十郎殉愛記」(2019年)の制作・撮影過程を追ったドキュメンタリー。自身が育った京都撮影所の伝統である“ちゃんばら”を次世代に伝えたいという思いで挑んだ、覇気あふれる映画作りの現場は必見です。

監督は松原龍弥が務め、同作に出演した高良健吾、多部未華子のメイキングに加え、“主役”の中島監督と親交の深い倉本聰(脚本家)、三島ゆり子、橘麻紀(女優/歌手)、熊切和嘉(映画監督)、高田宏治(脚本家)、荒木一郎(俳優/作家/歌手)らのインタビューによって、「監督・中島貞夫」を立体的に描いています。

出典: FANY マガジン
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この日の舞台挨拶では、「多十郎殉愛記」で監督補佐・共同脚本を務めた谷慶子がMCを担当しました。

これまでに13本もの中島作品に出演している三島は、「私と中島監督はもう60年の仲なんです。東映映画にはしばらく出ていなかったのですが、今回、(「多十郎殉愛記」に)声をかけていただき光栄でした」と感謝します。

「若いころの中島監督はどんな監督でしたか?」という谷の質問に、三島は次のように答えます。

「元気で弾丸みたいな勢いは、いまと変わらないです。なかには細かく演技指導する監督もいますが、中島監督は現場で怒鳴ったりすることはなくて。わたしは、演技指導をされたことがあまりないんです。(ドキュメンタリーのなかで)おとよ(多部未華子)がしっかり指導されていて、いいなあと思いました(笑)」

一方、直接的な演技指導をしない理由について中島監督は、「俳優さんを才能のある人だと思っているからです。こうしろ、ああしろと言うのではなく、こちらが求める表現のためには何が大事か……と理解を促すことが仕事だと思っています」と語りました。

1960年代のヌード撮影秘話

中島監督のデビュー作品である「くノ一忍法」に出演した三島は、当時の映画界では画期的だったヌードシーンについて、その心境を振り返ります。

「最初に内容を聞いたときはビックリしました。“裸になるってどういうこと!?”って。『くノ一忍法』が監督のデビュー作だったので、“中島さんを男にしてやらなきゃ”と思って」

出典: FANY マガジン
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また、当時の現場の様子がわかるこんな話も飛び出しました。

「厳重な警戒のなか、ヌードシーンを撮りました。セットの外にガードマンが立っていてね。セットを見学するには、助監督の許可がないと中に入ることができないシステムだったんです」

さらに、「いままであまり話していないエピソードがある」と三島が振り返ります。

「(「くノ一忍法」撮影時に)週刊誌に載せるための写真をスチールカメラマンが撮っていたんです。現場では、いろいろな角度から人に見られていたので、芝居以外でいつまでも裸の写真を撮られているとみじめで少し泣いてしまったんです。そうしたら監督が『もういいだろう』と言ってくださって、写真撮影を止めてくれたことがありました」

中島監督は、ともに作品作りに携わる俳優についてこう語りました。

「映画で新しい表現をしようとすると、乗り越えなければいけないものがたくさんあるんです。そんなときにそれをやってくれる俳優さんがいるかいないか。やらないのは簡単だけど、(新しい表現に)チャレンジしてくれる俳優さんはありがたいですよ」

出典: FANY マガジン
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最後はフォトセッションが行われ、中島監督は「時代劇の本質を、われわれが後世に伝えていかなければいけないと思っています」とコメント。さらに「これからの映画は新しいものが作られていかなければならない。内容だけではなく、作り方の新しさも大切です。この作品をひとつの参考として観てもらえたらありがたいです」と締めくくりました。

作品概要

「遊撃 / 映画監督 中島貞夫」
出演:中島貞夫
高良健吾 多部未華子 倉本 聰 三島ゆり子 橘 麻紀 熊切和嘉 高田宏治 荒木一郎
監督・撮影・編集:松原龍弥
配給:吉本興業
2023年1月27日(金)からテアトル新宿 シネ・リーブル梅田、アップリンク京都 ほか全国順次公開

公式サイトはこちらから。