毎年8月8日に開催される、大阪・なんばグランド花月(NGK)の夏の風物詩『吉例88 第41回桂文珍独演会』が、今年も開催されます。5月18日(木)にNGKで取材会を行った文珍は、新聞紙で作った兜をかぶり、「古典と落語の二刀流です! お客さまも一緒に文珍ワールドを楽しんでいただければ」と呼びかけました。
「寄席はダイバーシティ」
今年は火曜日に行われる『桂文珍独演会』。今回の演目は、文珍の師匠である五代目桂文枝の十八番で、弟子たちが脈々と受け継いできた古典の「船弁慶」と、文珍が手がけた新作の「携帯供養」です。また、ゲストに東京落語界から柳家花緑を招きます。
「船弁慶」について、文珍はこう語ります。
「じつに大阪らしい、なおかつ夏らしい、ジリジリするような暑い大阪の夏の風情が出ています。恐妻家の亭主というのが顕著で、私はこの噺を長い間やっておりますけど、いちばん主人公の喜六の気持ちがよくわかるんです。家で冷遇されているものですから、他人事とは思えません」
さらに、「師匠の五代目文枝も長年やっておりましたので、師匠に教えてもらった通りのところと、私がちょっと手を加えているところもあります」と続けると、「師匠の口調とか呼吸が降りてくるような、そういう感じがしますんやわ~」と五代目文枝のモノマネも披露しました。
そして、「師匠の華やかさまではいきませんけども、できるだけ近づくように頑張ってまいりたいと思っております」と意気込みました。
新作の「携帯供養」について文珍は、「いまの時代を映し出した作品で、ベースにはLGBTQをテーマに扱っています」と説明。タイトルは「永代供養」とかけており、亡くなった父親のリュックに残された1枚の写真と赤い水玉のワンピースから、どうやら父が日曜日になると“お姉さん”になっていたらしいということが判明。受け止め方がわかれる兄弟のやり取りを描いた作品です。
昨年つくって以来、口演すると観客の反応もわかれるそうですが、「寄席はダイバーシティ(多様性)」と文珍は続けます。
「多様性を認めていないと、こんなヘンな人ばっかり出て来ないでしょ(笑)。『携帯供養』は、個性的でキャラクターの立った人たちを楽しみましょうということをテーマに、ちょっとした作品に仕上げていますので、笑っていただけたらいいかなと思います」
独演会のポスターもお気に入り
文珍は、いま話題の対話型AI(人工知能)「チャットGTP」に、新作落語を作らせようとオーダーしてみたそうです。しかし、できた落語は「面白くなかった」そうで、文珍はこう解説しました。
「どうして面白くないのか研究した結果、怒りとか笑いとかセクシャルなものなどをあまり表に出さないよう、AIにフィルタリングがかかっているからで。フィルターの枠からはみ出しているというのが、われわれ落語家の生きる道ですから、落語はAIに負けないということがわかりまして、喜んでおります」
ゲストの柳家花緑については、次のように紹介しました。
「花緑ちゃんは柳家小さん師匠のお孫さんで、関西以外でお仕事を一緒にする機会が多いのですが、芸風がきっちりされていて、上手だなと思って。これからが楽しみな方です。毎年、『88文珍独演会』にお招きするゲストは、これからグーっと上がっていく人と、いま見とかなあかんという人に来てもらっていまして、今年は非常に有望な花緑さんにお出ましいただいて、一席やっていだだこうと思います」
独演会の宣伝ポスターもお気に入りの様子で、文珍は「私の似顔絵を“アンディ・ウォーホル風”に仕立てました。この似顔絵は、いまから20年前にNHKの番組で山藤章二さんに描いてもらったものです」と顔をほころばせました。
最近、どんなことに興味があるのかと記者から尋られた文珍は、「コロナ禍を創造的休暇と捉えて、飛行機のマルチエンジンという機体のライセンスを取って、茶道も始めました」と明かしました。飄々とした語り口で時代の最先端を落語に取り入れ、笑いに昇華する文珍の独演会。今年も面白いものになること請け合いです。
公演概要
『吉例88 第四十一回 桂文珍独演会』
日程:8月8日(火)
時間:開場18:15 開演19:00
会場:なんばグランド花月
出演:桂文珍
ゲスト:柳家花緑
チケット:前売・当日4,500円
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