タレントの社会的責任が高まるなか、吉本興業のタレント向けのコンプライアンス研修会が、3月27日(水)に東京・IMM THEATERで開催されました。タレントも社会を構成する一員として、発言や行動に責任を持つのが当然となるなか、吉本興業では、これまでもさまざまな研修を行ってきました。今回は、大規模な研修会として、タレントにも参加意識を持ってもらうよう、弁護士らによる講演に加え、人気芸人たちも交えたパネルディスカッションも実施、改めて危機管理などの重要性を学びました。
「“ともに学ぶ場所”にしていきたい」
この日開かれた『吉本興業タレントコンプライアンス研修』には約600人のタレントが出席。スケジュールの都合などで来られなかった1600人以上のタレントもオンラインで視聴しました。
冒頭、吉本興業の岡本昭彦社長がこう挨拶しました。
「昨今の世の中におけるコンプライアンスへの意識の高まりを感じ、どのような形で取り組んでいくべきかを考え、このような形での研修を開催しました。吉本興業は今年で112年になるが、先人の芸人、タレント、スタッフが時代に寄り添いながら歩んできた会社。皆さんに才能を最大限発揮してもらうために、今、という時代に寄り添っていけるか、今回、ともに学び、感じる場所にしていきたい。皆さんの力、社員・スタッフの力で、ひとりでも多くの方に笑っていただき、喜んでいただき、楽しんでいただき、今という時代を一緒に乗り切っていけるよう、この会を実りあるものにしたいと思っております」
「不祥事はぼやで止める」
続いて「危機管理」について講義をした吉本興業ホールディングス社外取締役の山田秀雄弁護士が「吉本興業ホールディングスの危機管理について」と題して講演。初めに「危機管理は自分と会社を守ることが目的」としたうえで、「不祥事が起きた際は、ぼやで止めるためにも初期対応が重要」などと説明したほか、危機管理の目的、コンプライアンス(法令遵守)、ハラスメント(いやがらせ)をはじめ、2023年年7月に施行された「不同意性交等罪」などの各項目について詳しく講義しました。
続いて登壇したのは、吉本興業の経営アドバイザリー委員を務める三浦瑠麗さん(山猫総合研究所代表)。「性的同意をめぐる現在地と人間関係構築のあり方について」をテーマに講演し、性行為の同意について刑法の改正があったことも踏まえ、「性加害の基準が大きく変わっている」「行為の中身と事後の態度も重要」「自分の振る舞いを客観視することが重要」などと呼びかけました。
そして、参加したタレントらに「人間社会は人間でできているので、長く愛されるためには、才能だけではなく人格がものをいいます。自分のふるまいを客観視することは、ダメージコントロールの観点からも重要です」とメッセージを送りました。
人気芸人たちがパネルディスカッション
研修の後半は、パネルディスカッションへ。「タレント活動におけるコンプライアンスとの向き合い方」 と題して、ブラックマヨネーズ・小杉竜一が進行を務め、パネリストとしてNON STYLE・石田明、相席スタート・山﨑ケイ、ニューヨーク・屋敷裕政のほか、岡本社長、山田弁護士、三浦さんが参加しました。
「SNSとどう向き合うか?」というテーマでは、NON STYLE・石田がSNSでネタ番組を告知したとき、予想外のことで一部から批判を浴びた経験から「ネタもアカンねやと思った」と話します。ニューヨーク・屋敷は、番組で攻めた発言をすると炎上するリスクも高まるなかで、「逆にそればっかり気にしすぎてもな……とも思っています」と悩ましい胸中を明かしました。
岡本社長はタレントたちに向けて、「自分が思っている5割増くらい影響力があると思ってSNSを活用していくのが、皆さんに求められることであり、スタッフも考えていかないといけない」と話しました。
「異性トラブル・性加害問題とどう向き合うか?」というテーマでは、山田弁護士が、「これからのことを考えるのはもちろん、過去のことは変えられないので、万が一、何かあった場合は、誠心誠意対応することが大切」と語ります。
そのうえで、「時代の常識は変わることを認識して、バランス感覚を持たないと大きな落とし穴に落ちる」「相手がどう感じるのか、想像力が大事」「自分の経験や業界の常識が本当の常識なのか、そう考えて物事に取り組む必要がある」と説きました。
パネルディスカッションでは、客席のタレントからも意見を聴くといった工夫も凝らしました。
最後に吉本興業グループのコンプライアンスガイドブックのQRコードを紹介、帰りにはタレントにお弁当が配布されました。
一方、4月3日(水)には、大阪のYES THEATERでも所属タレントを対象にしたコンプライアンス研修が開かれ、約300人が出席、約2000人がリモート視聴しました。
東京と同じく、岡本社長の挨拶、山田弁護士、三浦さんの講演に続き、パネルディスカッションを実施。ブラックマヨネーズ・小杉竜一と久代萌美を進行役に、太平サブロー、なるみ、藤崎マーケット・田崎佑一、山田弁護士、三浦さん、岡本社長がパネラーとなり、時折笑いを交えながら議論しました。