安藤忠雄と細野晴臣が親子に向けてトークショー「コンビニの前で警察に通報されました」

子どもたちに多様な本を手にとってもらい、無限の創造力や好奇心をはぐくんでほしい――そんな思いで造られた子どものための図書館「こども本の森 中之島」(大阪市北区)で11月8日(月)、建築家・安藤忠雄(80)とミュージシャン・細野晴臣(74)のトークショーが開催されました。子どもたちに向けて大人が真剣に語る「セッション・イン・ザ・フォレスト」の第2弾となる今回のイベント。あまりにも素敵な空間に、大人なのにテンションがあがってしまった芸人ライターの吉本新喜劇・𠮷岡友見がリポートします。

出典: FANY マガジン
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すべての壁が天井まで本に覆われた子どもたちの好奇心をくすぐるこの施設は、大阪出身の安藤氏が設計・建設し、建物を大阪市に寄附したもの。トークショーには、親子20組を含む70人が参加しました。子どもたちのはしゃぐ声や泣き出す声に「元気な証拠!」と楽しそうに応える2人。和やかなムードのなか、イベントは始まりました。

いまの子どもは「感性」を磨く時間がない

「私は音楽のことはわからないけど、ウィーンの街を歩いているだけで音楽が聴こえる。大阪にも、そんな場所をつくりたい」

そう語る安藤氏は、現代の子どもたちの“感性”を心配します。

「建築は視覚ですが、音楽は聴覚。視覚はあまり心に残らないんです。音楽はずっと心に残る。だから子どものときから音楽を聴くのはものすごく大事な感性を磨く。しかし現代の子どもたちは忙しくて感性を磨く『時間』がない。大きなカバンを持って勉強して……。ボーっとして音楽を聴く時間は必要です」

出典: FANY マガジン
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一方、自身の音楽との出合いについて、「僕は子どものころ、蓄音機で音楽を聴いていました。いろんなジャンルの音楽を聴いていたけど、3歳くらいのときになぜか『ジャズ』が好きになったんです。子どもっていうのは自分で選ぶんですね」と語る細野氏。どこで音楽を聴くか、という話題になると、驚きのエピソードを披露します。

「僕は車の中で音楽を聴きます。ミュージシャンですが、家ではほとんど聴かない。以前、コンビニの前で車をとめて、爆音で音楽を聴いていたら警察に通報されました(笑)」

出典: FANY マガジン
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さらに、ライブなどの「生演奏」のよさを語り合う2人。「ライブをやると健康になります(笑)」と細野氏が会場を沸かせると、安藤氏は、「人間が目の前で語りかけ、演奏することは素晴らしいですね。しかし、いまの若い人、みんなコンピュータでしょ。ずっとスマホ。私の事務所には30人くらいいるんですが、来てから帰るまで一言も喋らない。私ひとり喋ってますわ(笑)」と笑いをとりつつ、嘆いていました。

出典: FANY マガジン
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音楽と建築のどっちが好きですか?

台本なしのトークは、安藤氏の「質問ある人はどうぞ。お子さんでも親御さんでも」という提案で、質問コーナーに。客席から次々と手が上がります。

「どういう音楽を子どもに聴かせたらいいですか」「まだ音楽に興味のない子どもに、いろいろ音楽に触れる場所に連れて行って、何かみつかりますか」といった保護者からの質問に、細野氏が、自身の子ども時代の経験を織り交ぜながらアドバイスします。

「リズムに反応する。踊りだす。そんな音楽がいいんじゃないかな。頭で考えるんじゃなく、体が反応するのが自然。自分もそうでした。ブギウギ聴いて、飛び跳ねていましたから。そして、いろいろ連れて行ってあげてください。生の音、僕の経験だとオーケストラといった豊かなハーモニーがいいかと思います。ゾクゾクするので。みんな音楽家になれる素質はあります。そしたら、みんな僕のライバルになっちゃうけど(笑)」

出典: FANY マガジン
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一方、「いままでで、いちばん難しかった建築はなんですか」という子どもからの可愛らしい質問に安藤氏は、「5坪の美術館です。けど、引き受けてよかった。『小さい』のには心が入るから」と建築家ならではの答え。

さらに、子どもから「建築と音楽だったら、どっちが好きですか」という“究極”の質問が飛び出すと、安藤氏は率直にこう語りました。

「どっちも好きだけど、仕事が建築だからね。建築は依頼してくる人のおカネだから、失敗してもいいくらいの気持ちでやってる(笑)。気張らずにできるから建築かな。けど、本当のことを言うと、5歳くらいの小さいときに音楽を聴いていればよかったなと思っています。本もそう。夏目漱石も10代で読んでおけばよかったな。だから、子どものころから音楽や本に触れておいたほうがいいよ」

最後に安藤氏が「この『こども本の森 中之島』で、館長さんに頼んで音楽イベントできたらいいな。ぜひ、ここでやっていただけませんか」と突然の提案。投げかけられた細野氏が「やらせてください」と即答し、会場は大きな拍手に包まれてイベントは終了しました。

出典: FANY マガジン
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小さいころに触れたものが心を豊かにし、想像力や創造力を育む――。この日、ホンモノの大人に触れた子どもたちが何を感じて、どんなふうに成長していくのか楽しみです。そして私自身、人生の大先輩おふたりのお話を聞いて、「大人になっても日々、新しい何かに出逢うため、好奇心を忘れずにいたいなぁ」と感じた素敵な1時間になりました!

11月12日(金)からは、細野氏のデビュー50周年記念展『細野観光1969ー2021』 がグランフロント大阪 北館 で開催されます。


『細野観光』公式サイトはこちらから。

施設概要

『こども本の森 中之島』
開館時間:9:30~17:00
休館日:毎週月曜(祝日の場合は開館し、翌平日に休館)、蔵書整理期間、年末年始
利用対象者:メインターゲットは乳幼児から中学生まで
入館料:無料(要予約)

公式サイトはこちらから。

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