ケンドーコバヤシと麒麟・川島明がMCを務める大型企画『会うもの全てを笑わせる!Everytime芸人』の配信が、10月30日(水)から動画配信サービス「DMM TV」で始まりました。「芸人たるものいつ何時、どのような状況でも笑わせなくてはならない!!」というテーマのもと、24時間のなかで番組の仕込んだ8人の刺客全員を笑わせることができるか、という過酷なゲーム。成功した芸人たちには賞金1000万円が山分けされます。今回はこのゲームに挑戦中のパンサー・尾形貴弘を直撃。ふだんは聞けない熱~い「芸人論」を語ってもらいました。
「魂を削られる番組だと思います」
今回、『Everytime芸人』に挑戦するのは、尾形貴弘(パンサー)、とにかく明るい安村、斎藤司(トレンディエンジェル)、アタック西本(ジェラードン)、稲田直樹(アインシュタイン)、ナダル(コロコロチキチキペッパーズ)、植田紫帆(オダウエダ)、国崎和也(ランジャタイ)の8人です。
カメラは芸人たちに24時間密着。この間、接触してきた人のなかに番組から送り込まれた刺客が8人いて、刺客を1人でも笑わせることができなかった場合、あるいは気づかずにスルーしてしまった場合は、その時点で即脱落となります。
笑わすまでに与えられた時間は「1分間」のみ。誰が刺客かわからないなか、唯一の“攻略法”は、24時間、とにかく接触した人全員を笑わせること――。ゲームに参加途中の尾形は、緊張したままの面持ちで語り始めました。
――「仕込まれた8人の刺客を笑わせる」チャレンジ中ですが、ここまでを振り返ってみて、どうですか。
いやー、もうまったく覚えていないですね。もう必死なんで。魂を削られる番組だと思います。24時間、こうやって密着されると、休んでいるヒマもないんで大変ですよ。
――「芸人たるものいつ何時、どのような状況でも笑わせなくてはならない!!」という番組のテーマを聞いたときは、どのように感じましたか?
無謀なことをするなあというか。僕は、プライベートは「ワー!」というタイプじゃないんですよ。けっこう根暗なんで、自信は持てないですね。
――誰が刺客なのかはわかるものですか?
まったくわかんないんですよ! 油断したらもう終わり。笑わせたあとに「こいつがターゲット(刺客)だったのか!」とびっくりするやつもいるんで、本当に出会う人、全員を片っ端からいくしかないです。ずっと、「もう(チャレンジ)失敗したかな?」という不安な気持ちですね。
――尾形さんが頑張りすぎて、脱水症状になったというウワサも聞きました。
そうです。1000万円がかかっていますから、体を張りすぎてしんどいっすよ、もう……。でもケンコバさんと川島さんがスタジオで見てくれているんで、頑張ります。こういう芸風は、あの2人から教えてもらったんで! きっと笑ってくれると思います。
毎回全力で「なんとか笑ってくれ!」
――番組のタイトル『Everytime芸人』にちなんで、尾形さんの芸人論もうかがいたいと思います。尾形さんは、体を張って笑いを取り続けていますが、どうしてそこまで身を削るのでしょうか。
芸風的に“これしかできない”というかね……。ただただ、ほかのお笑いが得意じゃないんですよ。芸歴を重ねていくうちに、できないことをどんどん削っていったら、できることが、体を張ることしか残っていなかった。正直、勇気と根性さえあれば、こんな芸は誰でもできるんですけどね。
――いやいや、そんなことはないと思います。誰にもマネできないと思いますが、自信はないんですか?
自信なんてまったくないですよ。もう常に怖いです。
――最近、手ごたえのあった仕事は?
ないですよ、ずっと。(お笑いが)わかんないもん、オレ。手ごたえなんかないですよ。
――だからこそ1回1回、全力で仕事ができるのでしょうか。
そうっすね。なんとか「ウケてくれ!」っていう感じですかね。笑われても何でもいいから、「なんとか笑ってくれ!」って感じです。
お笑いへの意識を変えた後輩・中村憲剛の姿
――お笑いをするうえでのポリシーはありますか?
「真っ直ぐにやる」ってことですかね。リアクションも、カラいものは「カラい!」、熱いものは「熱い!」で勝負するというか。
たとえばカラいものを5人で食べて、4人のリアクションが「カラい」だったら、5人目は「カラくない」ってガマンして言えば、ウケそうじゃないですか。でも、そういうウソはつかないと決めています。5人目で回って来ても、「カラい!」でどうにか笑わせる。ポリシーはそれくらいですかね。リアクションでウソをつかないこと。スカさないこと。
――尾形さんはこの世界に入ったときから、そういう芸人像を目指していたんですか?
ぜんぜん違いますよ。本当はセンスでやっていきたいと思っていましたから。NSC(吉本総合芸能学院)で1回目にコンビを組んだときは、正統派ツッコミでした。
――そのころは誰に憧れていましたか?
そりゃあ、ダウンタウンさんですよ。でも「ダウンタウンさんにはなれない」ことが、だんだんわかってくるわけです。そこから遠回りをしつつ、いまの芸風になりました。イジられたり、僕がメチャクチャやったあとにほかの芸人のひと言で笑いが起きたりして。「あ、こういう笑いの取り方もあるんだな」と思って。
――ちなみに学生時代からイジられることは多かったんですか?
ぜんぜんなくて、めちゃめちゃクールキャラです。だってオレ、高校のときとかサッカーのスーパースターでしたからね。オレをイジるやつなんか、いませんでした。
――名門・仙台育英高校でエースナンバーの10番を背負っていたんですもんね。中央大学時代の後輩には、元サッカー日本代表の中村憲剛さんもいますし。
オレが4年生のときの1年生が憲剛ですけど、怖い先輩だったと思いますよ。代返とかも頼んでいましたから。のちに話したときに「めっちゃ怖かった。こういう先輩になりたくないと思ってた」って言われました。そのころはサッカーも挫折して腐っていて、練習をサボって八王子にナンパばっかり行っていましたからね。
――そういうキャラクターだった自分から、イジられキャラの方向に変えるのは難しそうです。
いや、もう生き残るためにはこれしかなかったんですよ。変わるために頑張ったんですよね。
――変わるきっかけがあったんですか?
それこそ憲剛には影響を受けたと思いますね。あいつは有名な高校の出身でもないし、川崎フロンターレにもテスト生として入った雑草なんですよ。それなのに、プライドを捨てて必死にやって、日本代表にまでなった。とんでもねえなと。
オレは芸人になっても、最初は酒やギャンブルや女遊びばっかりしてたんですけど、憲剛のことを見ていたら、「オレもこんなんじゃダメだ」「一生懸命やってみよう」と思えたんですよね。
――プライドを捨てて頑張ることができた?
はい。いまはもう、プライドなんかないですね。
芸歴22年でも「オレはゴリッゴリの若手」
――これからのお笑いの話も聞かせてください。いまはコンプライアンスの問題で、尾形さんのような体を張る芸が「ダメ」と言われることもあると思いますが。
「昔はよかった」なんて本当は言いたくないんですけど、正直、すごく難しいですね。体を張る芸も、伝統芸能というか芸術としてとらえてほしいですよ。「あぶねえ」とかじゃなくて。
――芸術ですか。
芸術っていうと重くなりすぎるかもしれないけど。心配するんじゃなくて、笑ってほしい。うちの母ちゃんが言うならわかるけど、家族でもないんだし、こっちはやりたくてやってるんだから心配はしないでほしいな。
最近は、アラさがしをしながらテレビを観る人が多くなった気がします。寝転がってポテチでも食べながら、「あははー」と笑ってほしいですよ。オレ、この格好ですごく真面目な話をしてますけど、大丈夫ですか?
――大丈夫です(笑)。今後のお笑い界のことはどう思っていますか?
上はいろいろと詰まっていますから。僕ら若手が頑張って変えていかなきゃいけないと思っています。
――尾形さんは芸歴22年目ですけど、若手判定なんですか?
若手でしょう! 技術がなかったら若手だからね。オレは永遠の若手よ! 技術ある人は若手なんて言えないけど、オレはゴリッゴリの若手だから。
――かしこまりました(笑)。そんな尾形さんの今後の目標を教えてもらえますか?
目標は、続けることです。なんとかしがみついて、生き残りたい。NSCにも毎年どんどん人が入ってきて、若い子のほうが体は張れると思うけど、オレはこの芸風でどうにかやっていくしかないからね。
――10年後の目標も続けることですか?
そうですね。生き残っていたい。10年後は57歳でしょ。57歳でもたぶん若手ですけどね(笑)。
――同じく『Everytime芸人』にも出演していて、芸歴も近いとにかく明るい安村さんが昨年、世界進出を果たしましたけど、そういうことは考えないですか?
ヤスさんの活躍は、やっぱり刺激になりますよ。実は今年、自分も『ゴット・タレント』用にネタを持って行こうと思って、いろいろ考えているんです。だって「サンキュー」ですよ? 世界共通ですから。
――そのネタもやはり体を張ったものになりますか?
はい。自分らしい体を張った芸で勝負します。
――ありがとうございます。それでは最後の質問ですが、生まれ変わっても芸人になりたいですか?
まあ、うん……。そうだなあ。オレ、サッカー選手になりたかったからなあ。
――(笑)
カッコいいしなあ。でも、芸人が向いているのかもしれないですね。サッカーはダメだったから。芸人になりたいかもしれないです。
――芸人という道を選んだことに後悔はないですか?
それは、ないですね。まったく!
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