漫才・コントなどジャンルを問わず“デビュー10年以内”の若手お笑い芸人の頂点を決定する『第46回ABCお笑いグランプリ2025』で王者に輝いたのは、ラストイヤーのエバース(佐々木隆史、町田和樹)でした。昨年のM-1 で4位に入るなど、いま勢いに乗る2人。6月29日(日)の決勝戦後の優勝会見では、この日の手応えや、今後の目標などさまざまな思いを語りました。

「いったん10年目でまくったからよかった」
「ラストイヤーで優勝できて、同年代がいっぱいいるなかで、いちばん面白いということを証明できてよかったです」(佐々木)
「同期にはもう結構売れているというか、テレビに出ている芸人もいっぱいいましたけど、いったん10年目でまくったから、よかったです。嬉しかったです。ありがとうございます」(町田)
2回目の決勝進出で、ラストイヤーでの優勝を果たしたエバースの2人は、優勝決定後の会見でこう喜びを語りました。
エバースは2016年に結成、2024年には『NHK新人お笑い大賞』優勝、『ツギクル芸人グランプリ』決勝進出、『第45回ABCお笑いグランプリ』決勝進出、『M-1グランプリ2024』で第4位と快進撃を続け、2025年も『第10回上方漫才協会大賞』で文芸部門賞を受賞と、いまノリにノッている2人です。

1980年からスタートしたこの賞レースには、今回542組がエントリー。決勝はエバース、かが屋、家族チャーハン、金魚番長、金の国、ザ・マミィ、Gパンパンダ、センチネル、ソマオ・ミートボール、天才ピアニスト、ハマノとヘンミ、フースーヤ(※50音順)の12組が争いました。
決勝では、A、B、Cの3つのブロックに分かれてネタを披露し、さらに各ブロックの勝者3組がファイナルステージに。審査員は、陣内智則、ダイアン・ユースケ、かもめんたる・岩崎う大 、かまいたち・山内健司に加え、今年は『M-1グランプリ2020』王者のマヂカルラブリー・野田クリスタル、『M-1グランプリ2019』王者のミルクボーイ・駒場孝、そして『キングオブコント2018』王者のハナコ・秋山寛貴が新たに加わり、それぞれの視点でジャッジします。
漫才 vs コントの熾烈な戦いを制したエバース
まずはファーストステージから。Aブロックは、いずれも決勝初出場の金の国、家族チャーハン、センチネル、そして4年連続4回目の決勝進出で、今年がラストイヤーとなる天才ピアニストによる戦いが繰り広げられ、漫才を披露した家族チャーハンがファイナルステージへ。
野田クリスタルは「芸歴1年目から堂々と漫才するコンビ。まったく緊張していないように見える域まで達していてすごかった」と絶賛しました。

BブロックはGパンパンダ、ザ・マミィ、エバース、金魚番長が登場。ファイナルに進んだのは漫才を披露したエバースで、審査員が全員1位を入れるという快挙も成し遂げました。「漫才とコントを比べるのが難しいブロックだったが、漫才の熱が高かった」とハナコ・秋山が、その熾烈な戦いを評しました。
Cブロックに登場したのはソマオ・ミートボール、フースーヤ、かが屋、ハマノとヘンミです。ソマオのリズムネタにフースーヤの怒涛のギャグ漫才、かが屋と、ハマノとヘンミが細部まで作り込んだコントと、まさに異種格闘技の大波乱です。
審査員も口々に「審査が難しい」とつぶやくなか、占いのコントを披露したかが屋がファイナルステージへ。かもめんたる・岩崎は「いいコントを観たときに思うことで、たまたま何かが起きている空間をわれわれが目撃した感じでした」とコメントしました。

かが屋とはよきライバル
ファイナルステージは、かが屋、エバース、家族チャーハンの順でネタを披露。そして、700点満点中667点を獲得したエバースがチャンピオンに輝き、チャンピンベルトと副賞100万円を手にしました。
「最高のメンツで戦って、そのなかで優勝できるなんてガチでえぐいぞ!」と町田のフレーズを使う佐々木。町田は「それオレの!」と即座にツッコみつつ、「10年目のなかで、チャンピオンはオレたちでした!」と喜びをあらわにしました。

直後に放送されたABEMA特番で、MCのニューヨークから今回のネタ選びについて聞かれた佐々木は、こう語ります。
「1本目のネタは去年の『M-1グランプリ』の決勝進出を決めたネタでした。今回、不安だったので、1本目は自信のあるものでいこうと」
また、審査員が全員1位を入れた1本目について町田は、「コント師の方にも1位を入れてもらえるんだと思いました」と嬉しそうに答えました。
さらに佐々木は、「かが屋さんは、エバースとよきライバル。かが屋さんとは、ほかの賞レースで1勝1敗1引き分けだったので、これでどっちが強いか決まるなと話していました」と明かしました。

町田「ライブに出るたびにこのグランプリのことを考えていた」
その後の会見で、2人は今回の優勝についてさまざまな思いを話してくれました。
——去年はBブロックでの敗退となりました。この1年、『ABCお笑いグランプリ』に向けて工夫したことや、何か変えようと思ったことはありましたか?
町田 前回はガチガチで、お互いミスしたので、その後は毎回、ライブに出るたびに『ABCお笑いグランプリ』のことを頭に置きながら、『ABCお笑いグランプリ』から出てくるところを想像して漫才していました。
佐々木 いや、そんなことなかったです。出番ギリギリまで寝ていて、「ドゥワ~!」とか言いながらステージに出たりもしていました。
町田 いまのは個人の感想なんで、すいません。僕の気持ちはそうでした。

——昨年の『M-1グランプリ』4位も記憶に新しいですが、それから約半年間、漫才でここを変えたとか、今年のM-1に向けてこういうところを磨いている、という点はありますか?
町田 去年のM-1は自分たちのネタをやるのが精一杯という感じで、2人(だけ)でやっているという感じでしたが、今日はもうお客さん、審査員、テレビの前の皆さんも巻き込んで、すべてをひとつの空間にしようという感覚でやりました。
佐々木 いや。ウソです。
町田 ウソじゃないです。個人の感想なんで、すいません。
佐々木 僕ひとりの力で優勝できました。
町田 それはやばいです。
——1本目、2本目、それぞれ終わったあとの手応えはどうでしたか。
佐々木 1本目が終わったときは最終決戦にいけたかなっていう感じでしたけど、2本目はもう本当、わかんなかったです。五分五分ぐらいの。どうだった?
町田 1本目も2本目もいったなと思いました。なので、ふつうの表情をするのが大変でした。ニヤついちゃったりしないかなって……すいません。そんなことないです。
2本目はちょっと緊張しました。前半はあんまりだったので、後半でちょっと巻き返したかなと思ったんですけど、どうだろうって。

「M-1用に取っているネタもある」
——町田さんの優勝賞金の取り分は5万円だそうですが、その使い道は?
町田 衣装を買いましょうかね。衣装のモデルチェンジをしようかなと思います。
——佐々木さんは95万円。使い道は?
佐々木 親に仕送りしようかなって思います。
町田 オレがきついだろ、それ。
——M-1に向けて今後、どういう対策を?
佐々木 今日でネタを2本、消費させてもらいましたが、M-1用に取っているネタもあるので、それをあと数カ月の間、ふだんのライブや寄席でたたいて挑もうかなという感じです。
町田 今日は僕らがいちばん上(の芸歴)でしたが、M-1は先輩もいるので、ちょっとハードルを超えるようなことをしたいですね。
佐々木 ほう……。
町田 僕が何を言うんだみたいな空気のときもあるんで、漫才中に。そのハードルを超えるようなことを探します。

——芸人としての目標はありますか?
町田 エバースといったらこれ、みたいな番組を作りたいですね。みんな、「この人といったら、この番組」みたいな代表的なものがあると思うんで。あとは、世間のみんなに笑ってほしいです。
佐々木 東京ドームを埋められるような芸人になりたいですね。ラジオのイベントなのかわかんないですけど、エバースのイベントで東京ドームが埋まるぐらいの芸人になりたいです。