UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)をサポートしている特定非営利活動法人「国連 UNHCR 協会」が主催する『第20回難民映画祭』が12月7日(日)までの期間、東京や大阪の劇場およびオンラインで開催中です。11月13日(木)には、大阪・TOHOシネマズなんばで映画『ハルツーム』が上映され、終映後のトークイベントに天才ピアニスト(竹内知咲、ますみ)が登壇。映画の感想や素朴な疑問、難民問題とのかかわり方などについて語りました。

竹内「学ぶきっかけになるありがたい機会」
「ある日突然、難民と呼ばれるようになった人たちにも、かけがえのない人生があることを知ってほしい」──そんな思いから、2006年にスタートした『難民映画祭』。これまでに270本以上の作品が上映され、10万人以上の観客が参加しました。今年は11月6日(木)〜12月7日(日)の期間に開催されていて、劇場およびオンラインで9本が上映されます。
この日、上映された『ハルツーム』はアフリカ、スーダンの首都ハルツームで暮らす5人の人生を追った作品。シングルマザーや民主活動家、公務員、ゴミを集めて生きる少年といった年齢や性別、属性がバラバラな5人。紛争によって日常が一変し、1000万人以上が避難を余儀なくされるなか、懸命に生き抜く彼らの姿を見つめるドキュメンタリーです。
また、本編の前に短編作品『リスト:彼らが手にしていたもの』を上映。迫りくる命の危険を前に、たった10分たらずの時間のなかで彼らが持ち出したもの……その“リスト”から登場人物のストーリーを浮かび上がらせる朗読劇です。監督は関根光才、出演には鈴木亮平、渡辺真起子、Crystal Kay、サヘル・ローズらが名を連ねています。

短編作品『リスト:彼らが手にしていたもの』:https://www.youtube.com/watch?v=aY16LULeT4U
すべての上映終了後、司会を務める国連UNHCR協会・国連難民サポーターの松田陽子さんが登壇。さらに、国連UNHCR協会の芳島昭一さんと天才ピアニストも呼び込まれます。
天才ピアニスト・竹内は、イベントへの依頼を受けたときのことを振り返りながらこう語りました。
「ほんまに(難民について)知識がないんですよ。だから“私たちでいいんですか”って最初は思いました。でも、学ぶきっかけになるありがたい機会だとも感じました」
相方のますみも「国連の仕事を我々お笑い芸人がやっていいのか、という気持ちもありながら」と言いつつ、「難しく捉えている方も多いと思うので、私たちが一緒に勉強することでもっと身近になれば」と話しました。

ますみ「初めてちゃんと考えさせられました」
ロシアのウクライナ侵攻や、イスラエル軍によるガザ地区への攻撃のニュースが日々報じられるなかで『ハルツーム』を観賞した天才ピアニストの2人は、作品の“個人を描く力”に強く揺さぶられた様子。竹内がこう語ります。
「ニュースではショッキングな場面が中心で“出来事”として見てしまいがち。でも、この映画は日常の些細なことも細かく描かれてて、解像度が上がったというか。一人ひとりの人物が知り合いみたいに感じられました」
一方、ますみは子どもたちのエピソードに衝撃を受けたと語ります。
「子どもたちが描く“戦争の絵”がすごい衝撃的で。子どもたちの脳に刻まれて、それを鮮明に再現しているのを見ると胸が痛かった。一生消えない傷になるんじゃないかと心配になりました」
ますみはさらに、日常が突如として奪われる理不尽さについても触れます。
「私なんか普段、551の豚まん食べたり、りくろーおじさんのチーズケーキをワンホール食べたりしてるけど、そんな日常が争いで奪われるなんて、絶対にあってはいけない。“じゃあ、自分に何ができるんだろう”って、初めてちゃんと考えさせられました」

国連UNHCR協会の芳島さんは、難民が置かれている最新の状況を改めて説明。映画で描かれたスーダンでは避難を余儀なくされた人が1200万人以上にのぼっていることや、世界の難民の41%が18歳未満の子どもであること、そして世界の難民の7割以上は欧米などの先進国ではなく、中・低所得国が受け入れていることなどを紹介します。そのうえで「報道されているときは皆さん、意識されていると思いますが、報道されなくなってからも避難生活を送っているんです」と訴えました。
ここで、竹内が「初歩的な質問かもしれないんですが……」と前置きしたうえで、「移民と難民って、何が大きく違うんですか?」と質問。芳島さんは「難民=命の危険から逃れるため、やむを得ず他国へ移動した人」「移民=よりよい生活を求め、自分の意思で国境を越える人」と丁寧に説明しました。
さらに、ますみが「寄付がいちばんに思い浮かぶんですけど、どういう段取りでできるのか知りたい」と質問すると、芳島さんは「国連 UNHCR 協会のホームページから簡単に申し込みができます」と紹介し、食糧支援、子どもの教育、職業訓練、心理的サポートなど寄付金の用途についても説明しました。

竹内のヘアスタイルはSDGs!?
SDGs(持続可能な開発目標)が掲げる「誰一人取り残さない」という理念には、難民のことも含まれています。国連UNHCR協会の松田さんから「日々、 SDGs に関してどんな工夫をされていますか?」と質問された竹内は、「エコバッグで徒歩移動、そんなの当たり前なんです。それだけじゃなくて、使用する水の量を減らしたい、洗剤の量を減らしたいということで、極限まで髪の毛を切らせていただいて」と自分のヘアスタイルの“隠された狙い”をアピール!?
一方、「与えられた食べ物は絶対に残さない」というますみは、「食べられる量だけ作る、買う。すべて食べる。果物の皮も食べております。キウイとか柿とかりんごとかは全部皮ごといってますよ。皮に栄養があるって言いますもん」と胸を張りました。
最後に天才ピアニストの2人は、『難民映画祭』に向けてこんなエールを送りました。
「映像で見るっていう衝撃もありますし、やっぱ映画の力はすごいって今回、ひしひしと感じました。映画で見たからこそ難民問題を身近に感じられたし、もっと知りたい、何かしたいって思えました」(竹内)
「自分の中に取り入れやすい映画で見ることができて、“知らないって罪だな”と感じたので、月並みですけど自分のできることからほんまにやってみようかなと思っています」(ますみ)

イベント終了後には、同時上映された『リスト:彼らが手にしていたもの』にちなんだ質問が。逃げなければならないときに何をいちばんに持ち出すかを聞かれたますみは「ほんまのことを言ったら整腸剤です」と即答。芸人になる前は看護師だっただけに、「私は腸内環境がすごく悪くて、整腸剤がなかったら非常に困る。自分の生命維持をするにも、生活を潤滑に行うにも、やっぱり腸から」と語りました。
一方、竹内は「(賞レースの)トロフィーでいかせてください」と回答。天才ピアニストはこれまでに『第6回女芸人No.1決定戦 THE W』などを7つの賞レースで勝っていますが、竹内は「それを大きいトートバッグに詰めて、けっこう持ち出しやすい位置には置いております。なぜなら毎日見たいので」と笑顔を見せます。すると隣で聞いていたますみは「私も!」と前のめりに乗っかって笑いを誘いました。
開催概要
「第20回難民映画祭~世界を想う。平和を問う。~」
■オンライン開催
11月06日(木)~12月7日(日)
■劇場開催
11月06日(木) TOHOシネマズ 六本木ヒルズ(東京)
上映作品:「ハルツーム」
11月13日(木) TOHOシネマズ なんば(大阪)
上映作品:「ハルツーム」
12月02日(火) イタリア文化会館(東京)
上映作品:「あの海を越えて」
12月03日(水) イタリア文化会館(東京)
上映作品:「ぼくの名前はラワン」
参加費
オンライン鑑賞、劇場鑑賞ともに、(A)寄付つき鑑賞、または(B)無料鑑賞、から選択してお申込みください。
【1作品を申込む】
(A)寄付つき鑑賞(2,000円/3,000円/5,000円/10,000円/20,000円)、または、(B)無料鑑賞
【オンライン鑑賞で8作品まとめて申込む】
(A)寄付つき鑑賞(5,000円/8,000円/15,000円/30,000円/50,000円/100,000円)、または、(B)無料鑑賞
※将来を担う若年層の方たちが参加しやすいように、無料鑑賞の選択肢を設けています。本映画祭は、企業・団体・個人の皆様のご寄付やご協力によって運営されていますので、寄付つき鑑賞にご協力いただければ幸いです。
「難民映画祭」公式サイト:https://www.japanforunhcr.org/how-to-help/rff#overview
