入門25年以下の上方落語家を顕彰する「第20回繁昌亭大賞」が12月9日(火)、天満天神繁昌亭で発表されました。今年は、笑福亭鉄瓶と桂佐ん吉が大賞を史上初の“ダブル受賞”。さらに新人賞に笑福亭笑利が選ばれました。今年から東京に拠点を移した笑利は、受賞会見で「上方落語も通用するとちょっとずつ思っているところ」と手ごたえを語りました。

「これからもライバルでありながら仲良く」
今年の大賞は、繁昌亭大賞20回の歴史で初めて2人同時受賞。なお、奨励賞は該当者がありませんでした。
会見には、上方落語協会会長の笑福亭仁智と受賞者が登壇しました。
仁智は鉄瓶について、「近年めきめきと頭角を現し、さまざまな仕事や会に挑戦してきたことが評価につながったのでは」と評価。佐ん吉については「若いころから名人口調の印象があり、2014年に(繁昌亭大賞の)奨励賞を受賞して以降はコンテストにも積極的に挑戦していた」と活躍をたたえます。
また、新人賞を受賞した笑利の印象をこう話しました。
「彼は“異彩を放つ異才”。若いときからちょっと変わった毛色の舞台を皆さんに届けているので、今後、どんな色を放ってくれるか楽しみにしたいと思います」

鉄瓶は、同期の佐ん吉とのW受賞についてこう語ります。
「17年前から2人で会を続けて、赤字も折半してきました。まさか繁昌亭大賞まで折半するとは思いませんでした。前回は大賞が該当者なしで、“ええ人がおらんかった”と選考委員の方々から暗に言われたことがすごく刺さって、この1年頑張れたと思います」
佐ん吉も昨年の“該当者なし”について、「去年、悔しい思いをしたので、今年は何が足りなかったのかを考えて努力した」と語ると、「これからもライバルでありながら仲良く、上方落語を盛り上げる歯車になって頑張りたい」と意気込みました。
一方、新人賞の笑利は喜びをこう語ります。
「大賞を目指すキャリアではないですが、この1年間、いろいろ考えてやっていたことを選考委員の方が見てくださっていたことがありがたかったです。頑張っていたら人は見てくれるんだなと思いました」
そして、「上方落語を盛り上げたいという思いがあるので、芸歴とか意識せず、変えていけるところは変えるよう頑張りたいと思います」と意欲を見せました。

鶴瓶から「意味がわからん」と言われた
鉄瓶は、師匠の笑福亭鶴瓶に今回の受賞を報告した際、「意味がわからん、と言われた」とのこと。鶴瓶が出演していた『パペポTV』(読売テレビ)に憧れて弟子入りした鉄瓶が落語に本腰を入れたのは、入門からら4年後のことだったといいます。
鉄瓶は、「(今回の受賞で)恩返しのコップに水をためられたかなと思うので、満杯にしたいと思います」と師匠への思いを語りました。
佐ん吉は師匠の故・桂吉朝の着物を着ていることを明かし、「もし、師匠がいたら『世も末やな』と言われそうです」と笑います。笑利は、なにかの受賞を報告するたびに師匠の笑福亭鶴笑から「おめでとう、よかったな」という返信が来ることを明かし、「(今回も)師匠の返信は定型文でした」と笑いを誘いました。

2026年2月27日(金)には天満天神繁昌亭の夜席で「受賞記念落語会・表彰式」が開催されるほか、昼席では4月に桂佐ん吉、5月に笑福亭鉄瓶、そして6月に笑福亭笑利の「繁昌亭大賞受賞記念ウィーク」が予定されています。
