“沖縄県住みます芸人”として活動するお笑いコンビのオリオンリーグ(剛くん、玉代勢直)が、7月26日(日)に沖縄・壺屋演劇場かさねで単独ライブ『組踊漫才研究所~嘉数先生からのミッション~』を開催しました。
近年、オリオンリーグの2人が力を注いでいるのが、沖縄の伝統芸能・組踊(くみおどり)と漫才を融合させた独自のネタ「組踊漫才」です。笑いを通して組踊の魅力や見どころを存分に伝えた75分のライブの模様を、よしもと沖縄に所属する又吉ごはんがレポートします!

組踊の先生から与えられたミッションに挑戦
オリオンリーグは2010年に東京でコンビを結成。その後、2020年から拠点を地元・沖縄に移し、よしもと沖縄に所属する芸人で旗揚げしたエイサー団体「吉本橙風太鼓(よしもととうかじだいこ)」のほか、スタンドアップコメディやバルーンアートに取り組んでいます。
組踊漫才は、笑いを通して組踊の魅力を伝えるために編み出したスタイル。組踊演者であり、沖縄県立芸術大学准教授の嘉数道彦先生が監修しています。この日のライブでは嘉数先生から次々と〝ミッション〟が課され、その課題をクリアしながら組踊を学んでいくという構成です。
この日のMCを務めたのは浦添ウインドゥ・島智大。ライブはオリオンリーグによる漫才からスタートします。オリオンリーグは沖縄の賞レース「O-1グランプリ」や「お笑いバイアスロン」などでも決勝に進出するほどの実力者です。

今回、披露したのは「ヒーロー戦隊をやりたい」というネタ。怪人と戦うために沖縄各地に移動してしまったり、全島エイサーまつりの“あるある”を取り入れたりした沖縄独自ネタにお客さんは大爆笑です。ヒーローが戦うシーンでは壮大なBGMを流し、怪人の独白シーンでオルゴール調の音楽を流すなど、漫才の枠を超えた演出でも楽しませてくれました。
ネタ終わりにVTRで嘉数先生が登場し、さっそくこんな指示が!
「組踊漫才の目的は組踊を知らない人に組踊に興味を持ってもらう、逆に組踊のお客さんにお笑いを楽しんでもらうこと。このイベントは、いままでに3年間で9公演も一緒にやってきました。オリオンリーグ、そろそろ自分たちだけでやってみなさい!」

嘉数先生からの最初のミッションは“唱え(となえ)”。唱えとは組踊におけるセリフのことで、性別や役柄の身分によってもその唱え方が変わります。男性は大木を抱えるような姿勢、女性は左足を少し上げた姿勢が基本だそう。
オリオンリーグには事前に嘉数先生から唱えの宿題が出されており、その出来栄えをMCの浦添ウインドゥ・島と客席が判定します。まずは玉代勢が唱えに挑戦!
「でょーちゃるむぬや 玉代勢直 宜野座生まれ沖縄市育ち 東京に渡てぃ芸人になやい なまや よしもと沖縄ぬ所属やいびーん」
(玉代勢直は、宜野座出身・沖縄市育ち。東京へ渡り芸人になり、いまはよしもと沖縄に所属しています)

練習してきたというだけあって意外にも様になっていましたが、「拭いきれないバラエティ色があった」という理由で島からは失格の判定。そして、続いては剛くんの唱え。
「わんや堀川剛 ラーメンが好き」
(私は堀川剛。ラーメンが好き)
玉代勢の唱えとは違って、その短さに会場も戸惑いも隠せません。玉代勢から「嘉数先生に(剛くんは)覚えきれないと思われてる」と指摘されると、剛くんも「ナメすぎでしょ!!」と声を荒げました。しかし、その短さが功を奏したのか、島からは合格の判定を受けて会場は大笑いです。
組踊ならではの表現方法を学べるライブ
続くミッションは〝音楽と所作〟です。組踊は中国からの使者に披露するために作られた宮廷芸能。そのため、斬り合いなど暴力的なシーンは見せられないのだとか。戦いの場面では演者は舞台袖に下がり、太鼓の音(タタンタンタン)だけが鳴ります。そして、勝者だけが舞台に戻ってくることで、戦いを表現するんです。
へぇ、おもしろ!!
この演出をオリオンリーグが実演。お互い睨み合って「ここで会ったが100年目!」と玉代勢が言い放つと、負けじと剛くんも「受けて立とう!」と返します。そして、次の瞬間、2人はそろって舞台袖へ。「タタンタンタン」という音のあとに玉代勢が再び現れました。
見せ場であるはずの戦闘を見せないという演出ですが、血の飛び交う争いも、品よく演ずることで、中国の人たちに琉球文化の崇高さや豊かな芸術性を感じてもらうために、あえて難解に作られているという説もあるそうです。
組踊って、知れば知るほどその奥深さに引き込まれます。今回も意外と様になっていたように思えましたが、ふだんとは違う演出にオリオンリーグの2人は少し緊張気味。最終的にMCの島からは「失格」の判定が出されました。
最後のミッションも、引き続き〝音楽と所作〟。組踊では抱擁する場面でも実際に抱き合わず、お互い向かい合わせに立ち、相手の肩に手を伸ばして表現します。そして、そのまましゃがみこみ静止することで音楽を引き立て、感情の動きを表すんです。これが「組踊が聞く芸能」と言われる理由でもあります。

今回はオリオンリーグが映画『タイタニック』の名シーンを組踊で再現。剛くんが船首に立ち、玉代勢が後ろから組踊の様式で抱きつきます。ロマンティックなシーンのはずなのにどこかシュールで客席から笑いが……。
視覚的にもわかりやすく〝音楽と所作〟を表現できていたように思いますが、MCの島が「面白過ぎる」として失格の判定を出し、さらに笑いが起きていました。
ほかにも組踊ならではの約束事である、「杖が出てきたら移動・場面転換」「笹を持っている人が出てきたら正気を失ってる人物」「仇討ちを題材とした作品が多い」などが紹介され、組踊がより身近に感じられました。

締めくくりに集大成の「組踊漫才」を披露
ライブの締めくくりは、この日、学んだすべてを盛り込んだ『組踊漫才』です。冒頭で披露した「ヒーロー戦隊」のネタが、組踊を取り入れることでどう変化するのか! 島も参加して3人で漫才を披露します。
いきなり「怪人になりたい」と言い出す剛くん。すると、三味線の音色とともにヒーローに扮した玉代勢が男性の構えでゆっくりと登場し「地球ぬ平和 汚(き)がらするやから 許すくとぅならん」と唱えを披露します。
玉代勢が「ここで戦うとみんなに被害が出てしまう! 移動するぞ!」と言うと、オリオンリーグの2人は杖を取り出して舞台上を歩き回り……島が思わず、「〝とう!〟ってジャンプするだけでいいんだよ!」と叫びます。
戦いの場面では玉代勢が「いくぞー!!」と叫ぶと2人とも袖に下がり、「激しい戦いだった」と玉代勢だけが再度登場。ヒーローとヒロインが抱き合うシーンも、組踊の所作で表現され、すべてが伏線回収となる構成に客席は大爆笑でした。

「戦いのシーンを見せろよ!」「なにを見せられてんだ!!」という島のツッコミも冴えわたり、この日、いちばんの盛り上がりを見せました。エンディングで島は「うまく漫才に落とし込んでましたね。ただ、組踊の動作を漫才に入れると、あなたたちがラクできる」と笑いながら振り返りました。
僕自身、沖縄に30年以上住んでいますが、組踊は「難しい」「敷居が高い」という印象を持っていました。今回、組踊の約束事や背景を知ることでグッと身近な存在に感じられました。僕以外にもそう思ったお客さんはいると思います。
終演後に話を聞くと、剛くんは次のように手応えを語りました。
「今回は組踊の先生方が舞台に立つのではなく、芸人だけで挑戦しました。ちゃんと伝わっている実感もあったし、新しいリアクションが見られて、やってよかったです」
玉代勢は「普通の漫才を見てもらって、組踊を学んでもらって、最後に組踊漫才で伏線回収する。その面白さがお客さんにハマっていたのが嬉しかったです」と笑顔を見せました。
組踊と漫才。一見交わることのなさそうな二つの芸が融合した結果、新しいエンターテインメントのかたちを見ることができました。オリオンリーグによる〝組踊×漫才〟の化学反応から今後も目が離せません!!
