人工知能(AI)を開発する米カリフォルニアのIT企業・ObENと吉本興業ホールディングスが進める『よしもと芸人AIプロジェクト』の発表記者会見が、12月10日(月)に東京・渋谷のヨシモト∞ホールで開かれました。AI技術を使って、エンターテインメントの新しいカタチを提供しようというこのプロジェクト。ゆりやんレトリィバァとマヂカルラブリー・野田クリスタルが、ObENの最新技術を使って“ちょっと未来を感じる”デモンストレーションをしました。
吉本芸人6000人がアバター化!?
吉本興業とObENは今年2月に提携を発表し、今回、合併会社『Yoshimoto ObEN AI Agency(YOAA)』を設立しました。ObENが開発するAI技術を使った3Dアバターは、オンライン上の仮想空間でまるで本物の人間のようなコミュニケーションをすることができます。
『よしもと芸人AIプロジェクト』はこの技術を応用して、吉本に所属する6,000人のタレントとコラボレーション。AIアバター化された芸人は、24時間のフル稼働が可能な上、言語の変換も自由なため、国境を越えてグローバルな活躍ができるといいます。
この日の会見では、芸人AI アバター第1号として、ゆりやんのアバターがスクリーンに登場しました。このアバター制作にあたっては、ゆりやん自身が声のサンプルを提供し、360°の撮影を実施。制作期間に2年の歳月がかけられ、ゆりやん本人もまだ完成したアバターを見ていないという“初お目見え”です。
ところが、スクリーンに映し出されたゆりやんのアバターは、実物よりもどこかふっくら。というのも、ゆりやんが36キロのダイエットを成功させてしまったせいで、2年前のデータと食い違ってしまったのです。
これには、司会を務めたキクチウソツカナイ。からも、「痩せるなら言っておいてくださいよ!」と注意が入りますが、「すみません。勝手に髪の毛も切って、ファンデーションも変えちゃいました~」と、まったく悪びれていない様子のゆりやんでした。
ゆりやんアバターが「広瀬すずです」
そんな、実物よりもふっくらとしたゆりやんアバターが自己紹介すると、いきなり「初めまして、広瀬すずです」とひとボケ。その後も立て続けに、いかにもゆりやんが言いそうなギャグを連発します。まるで実物のような口調とテンポは、声のサンプルをもとにアバターが自由自在に言葉に変えてしゃべっているとのこと。
この完成度には、ゆりやんも驚きの表情。さらに日本語だけでなく、英語、中国語のデモンストレーションが披露されると、「すごい」と言葉を失っていました。
ゆりやんは、こうしたテクノロジーの活用についてこう語りました。
「リモートライブも最初は違和感があったけど、いまは普通になっている。そういうふうに(芸人のAI アバターも)普通になっていくんじゃないかなと思います」
野田クリスタルがAIアバターで大喜利ゲーム
続いて登場したのは、ゲームクリエイターでもあるマヂカルラブリー・野田クリスタル。AIアバターを使った自作ゲームをお披露目しました。
これまでも吉本芸人が登場するゲームはいくつも制作されてきましたが、AIアバターの技術によって、その可能性はさらに広がります。
満を持して登場した野田は「とんでもないソフトができてしまった」と自信満々の様子。なんでも、ゆりやんの“上位互換”にあたるアバター、その名も「パーフェクトレトリィバァ」をゲームに取り入れることに成功したと言います。
そこで、リアルゆりやんと、ゲームの中のパーフェクトレトリィバァの間で「大喜利対決」が行われることに。
対決がスタートすると、お題を読み上げていくそばから、パーフェクトレトリィバァがものすごいスピードで回答を連発。本物のゆりやんに考える隙も与えません。野田いわく、「高速CPUで動いている」とのことで、お題に沿っているのかどうかよくわからない“珍回答”も含め、リアルゆりやんを数で圧倒していました。
ゲームとしてはまだまだ発展途上の面もありますが、今後はこうしたAIアバターを使って、芸人育成ゲームや芸人格闘ゲームなどさまざまなゲームを作っていきたい、と野田は意気込みました。
進化するAIアバター技術
AIアバターの技術は、これからもどんどん進化していきます。たとえば、大喜利バラエティ番組『IPPONグランプリ』(フジテレビ系)に芸人アバターが参加したり、アバターだけの大会が開かれることもあり得ます。あるいは近い将来、企業のカスタマーセンターなどでコンシェルジュとして実用化されるかもしれません。
今回の合弁会社設立と『よしもと芸人AIプロジェクト』の始動にあたって、株式会社よしもとセールスプロモーションの志村一隆取締役は、「AIが作り出すものを生身の芸人さんが取り入れて、交互にコミュニケーションをしていくと、お互いが面白くなっていく」と未来への展望を語りました。