笑福亭仁鶴「三回忌追善落語会」に文枝、南光、八方らが集結! 「思い出話」「ウラ話」が続々

2021年に亡くなった笑福亭仁鶴の命日にあたる8月17日(木)、大阪・なんばグランド花月で「三回忌追善落語会」が行われました。一番弟子の笑福亭仁智を筆頭に6人の弟子と六代 桂文枝や月亭八方、桂小文枝、桂南光、浪曲師の春野恵子が出演。仁鶴の思い出話が次々と飛び出す賑やかな落語会になりました。

出典: FANY マガジン
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弟子たちが落語を披露

冒頭、仁智は次のように挨拶しました。

「師匠は2年前に亡くなり、コロナや師匠の遺志もあり、お別れの会が開かれませんでした。今日は弟子が落語を二席と、春野恵子さんによる浪曲『笑福亭仁鶴一代記』、また文枝さんや南光さんをはじめ、おつきあいのある噺家さんがいろんなエピソードを話してくれると思うので楽しみにしています」

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そして仁福、仁扇、仁嬌、仁幹、仁昇の順に挨拶し落語会が始まりました。

まずは仁昇が落語「ちしゃ医者」を披露。マクラでは「師匠がなくなったことがまだ信じられません。師匠は生前よく“わしが見送ったる”と言っていたのですが、私が17年前に大病して、あのときは師匠に見送られるんちゃうかと思いました」と、自身の入院時のエピソードを振り返ります。

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そして「お医者さんは頼りになりますが、落語の世界の時代には怪しげな先生がいたとか……」と本題へ。人を乗せたかごを運ぶ仕草など丁寧に描写する仁昇は、「杖の使い方とか、チャンバラトリオさんに教えてもらいました」と話します。その後の展開も臨場感たっぷりに、観客の想像力を掻き立てました。

続いて仁扇が高座へ上がり、「私は幻の噺家と言われています。弟子入りして50年を超えているんですよ。この世界で50年、人に知られずに生きよう思ったら大変なんですから」と挨拶して笑いを誘います。「今日は師匠にまつわるネタを」と、仁鶴が夏になると必ず演じていたという「青菜」を披露。威勢のいい植木屋を生き生きと描き、登場人物たちを情感たっぷりに活写しました。

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浪曲「笑福亭仁鶴一代記」を客席と一緒に

春野恵子の浪曲の前には幕前トークがあり、仁智、仁扇、仁昇が登場。「師匠が、浪曲が好きで、お父さんも好きだったらしいですね」「お父さんからしたら自慢の息子やったんやろな」と仁鶴の父についても触れ、「そんなお父さんが育てた自慢の息子、『笑福亭仁鶴一代記』です」と紹介しました。

登場した春野は「プレッシャーに押しつぶされそうになりながら、出てまいりました」と挨拶。舞台には曲師・一風亭初月の姿もあります。浪曲を初めて聞くという観客も多く、まずはかけ声のかけ方や、拍手のタイミングなど、浪曲の聞き方についてのレクチャーがありました。

そして「四角い笑顔とだみ声で~♪」と「笑福亭仁鶴一代記」が始まり、誕生から没後まで、上方落語の人気を全国区に押し上げた仁鶴の功績を歌い上げます。途中、仁鶴のギャグ「大発見やァ!!」を観客と一緒に発する場面も。

出典: FANY マガジン
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落語に真摯に向き合い、“四天王”と称された六代目笑福亭松鶴、三代目桂米朝、三代目桂春團治、五代目桂文枝の教えを後進に受け継いだ仁鶴の功績は語り尽くせないほどで、最後に「笑福亭仁鶴よ、永遠に」と締めると、万雷の拍手が起こりました。

仁鶴との最後のやりとりが日記に

中入り後は、ゲストを交えて仁鶴をしのぶ「思い出話」。ステージには文枝、八方、小文枝、南光、そして弟子6人が登場しました。映画「男三匹やったるで!!」で月亭可朝、仁鶴とともに主演した文枝は、映画撮影のウラ話を披露。

南光はNHKの「バラエティー生活笑百科」での共演を振り返りつつ、落語の思い出が2つあると明かします。

「(南光が)べかこ時代に『阿弥陀池』やったら『君な、落語やで。格闘技と違うで』って言わはった。20年後に南光になって、穏やかなネタやったら、『君も弱ってきたな』とおっしゃてました(笑)」

八方と小文枝は没後、手を合わせようと仁鶴の家に行ったそうですが、「町の様子が変わっていて、場所がわからなくて、そのまま帰ってきました」と話して笑いを誘います。

出典: FANY マガジン
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追善落語会は名残惜しくも終演へ。最後は仁鶴のヒット曲「おばちゃんのブルース」を会場で唱和してお別れです。仁智が「3回忌も和やかに楽しく過ごせました」と語り、笑いに包まれるなか、和やかに仁鶴を偲びました。

囲み取材で仁智は、師匠への思いなどを話しました。

「時が経つにつれて師匠の存在の大きさを、いろいろ考えるときがあります。この前も(自分の)日記を調べていたのですが、(亡くなる)2日前の8月15日に2時間ほど、いろいろしゃべったことが書いてありました。松鶴師匠のこと、米朝師匠のこと、古今亭志ん朝師匠のこと、『彦八祭り』の日のこととか、いろいろ書いてありましたね。そのときは、それが最後になるとは思っていなかったんですけど、師匠から最後に『生きるのが飽きたんや』と言われて……。『お前はどうや?』と言われましたので、『僕は惰性で生きてます』と言ったら、『それがええんや。いまさらエンジンかけて頑張る必要ない。いままでの力でやっていったらええんや』と日記には書いてありました。いまは、もうちょっと話ししといたらよかったなとか、いろいろあります」

出典: FANY マガジン
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新作落語を口演することが多い仁智ですが、9月に行われる自身の落語会では、仁鶴が十八番にしていた古典落語「崇徳院」を披露します。

「新作も楽しいですが、古典をやっている自分もとっても楽しいんですよ。今回は師匠が特に晩年によくやられていた『崇徳院』を。そんなに面白い話でもないんですけど(笑)、『七度狐』か、『青菜』か、いろいろ迷って、師匠に教えてもらったなかで『崇徳院』にしました。それこそ何かを始めるのに『いまさらながら』とか、『遅いことはない』とか言いますから、そうやって背中を押していただいたら、また(継続的に古典落語をやる)きっかけになるかもわかりませんね」