夏の恒例「桂文珍独演会」は大入り袋の大盛況! 11月の55周年記念会も「腕、腕、腕、腕一本!」

夏の恒例である桂文珍の独演会が、今年も8月8日(水)に大阪・なんばグランド花月(NGK)で開催されました。この日の「芸歴55周年記念 吉例88 第四十二回 桂文珍独演会」には、ゲストとして東京の落語家、柳家三三(さんざ)が出演。文珍は三席を披露し、例年以上に賑やかな落語会となりました。

出典: FANY マガジン
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NGKがほっこりとした雰囲気に

開口一番を務めたのは文珍の四番弟子である桂文五郎です。ネタは真夏のひとときを描いた「青菜」。押し入れに身を潜めて夫の指示を待つ妻の様子を、文字通り汗だくで熱演し、会場を沸かせました。

文珍の一席目は新作落語の「落語記念日」。デジタル技術が発展していくと、はたして落語はどうなっていくのかと考えた先にできた噺です。ダジャレを連発し、客席からは拍手笑いも起きました。

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続いてはゲストの三三が登場し、「御血脈」を披露。「初めてなんばグランド花月に出演した」という三三は、「東京の芸人にとっても夢のような場所」と話します。そして三三も文珍に負けず劣らずダジャレを連発してNGKの客席を盛り上げました。

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中入り前に文珍がもう一席。「吉例88独演会」にこれまで様々なゲストに出てもらったと振り返りつつ、「東西(落語界)でもあまり演じられていない噺を」と「雁風呂」を口演します。聞きなじみのある楽曲のフレーズも飛び出し、文珍らしい軽妙洒脱なアレンジも加えながら観客を江戸時代の世界へと導きました。

中入り後は、舞台美術を“松羽目”にチェンジ。文珍は「“恋わずらい”など、いまでは聞かなくなった死語ですが、電車も通らないのどかな噺を」と、大阪が舞台の「崇徳院」を披露しました。

若旦那の恋わずらいの原因である女性を探すため、幼馴染の“くま”が東奔西走する様子を生き生きと描く文珍。その語り口に引き込まれ、客席も若旦那の恋の成就を願います。オチを聞いてNGKがほっこりとした雰囲気に満たされました。

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「大きな会場でやってみようかな」

独演会を終えた文珍は囲み取材で、こう語りました。

「ありがたいことに、初演から42年も経ってしまったんだなと。自分では5、6年にしか思ってないんですけども、こんなに経っているのかなという実感でございます。いいお客さまに恵まれまして、楽しくやらせていただきました。早くからチケットが完売いたしまして、大入り袋が出るという。吉本興業はなかなかシビアな会社でございますので、こういうものは出さないんですけれど、このところちょいちょいと大入り袋が出るような。そんな寄席の状態が続いておりまして、ありがたいことだなと思っております」

文珍は、11月24日(日)に大阪・フェスティバルホールで「芸歴55周年記念 桂文珍独演会~ザ・ヒットパレード~」が控えています。この大舞台について、次のように話しました。

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「芸歴55年になりましたので、なにか大きな会場でやってみようかなというので、フェスティバルホールが面白いかなと思いまして。あんな大きなところで、座ったままでどうすんねんと思われるかもしれませんが、落語は言葉だけの世界でございますから、それのほうが、かえってできるんだということを感じていただいたら面白いかなと思っております」

11月は「鉄板ネタ」の三席で

11月の演目は、約45年前に自作し、「これでご飯が食べられるようになった」という代表作である「老婆の休日」と、「デジタルの時代になって、リテラシーとのリアルをどうしたらいいかということから着想した」という「デジタル難民」、そして、桂米朝に教わったという古典落語「地獄八景亡者戯」をコンパクトに披露する予定。

この三席は、いわば文珍の「鉄板ネタ」ですが、迷いなくズバッと決めたのかとの問いに文珍は、こう話します。

「あんまり力を入れないほうがええやろうなと思って、鉄板なのかアルミホイルかわからないけど、とりあえず(『老婆の休日』と『デジタル難民』という)お馴染みの噺を。この二席は舟木一夫さんの『高校3年生』みたいなもので、リクエスト寄席を長年やっているのですが、必ず上位に入ってくるネタですね。その時代、その時代でギャグも変わっていきますから、それをやってみようというので選びました。『地獄八景亡者戯』は、いろんな方が登場するんじゃないでしょうかね。(今年6月に亡くなった桂)ざこば兄やんも登場すると思いますよ」

出典: FANY マガジン
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この独演会のゲストは立川志の輔。文珍からは「気楽なもの(ネタ)を」とのリクエストをしたそうで、「華を添えていただいて、2人で盛り上げていきたい」と話しました。

フェスティバルホールという会場だけに、噺の最中にスクリーンなどを使った演出はあるのか?との問いに文珍は、「そんなことは一切しません!」ときっぱり。そして「これやんか、腕、腕、腕、腕一本!」と自分の左腕を叩きながら、ニヤリと笑みを浮かべました。