バイク少年の楽屋事件簿
【年末番外編】

「年末年始どんな感じ?」

このような会話が楽屋で増えたということは、それは、12月だということ。

なにを当たり前のことを、となっているだろう。しかし、芸人においてのこの会話の続きは、一般的な職業の方とはやや異なるかもしれない。

世間一般だと例えば……

「年末年始どんな感じ?」

「えと、27日が仕事おさめで、あと正月は30日から実家に帰って、って感じかな」

「いつから仕事?」

「1月6日からかな〜」

「なるほどね。いいねえ」みたいな感じだろう。

これが劇場に出ているタイプの芸人となると……

「年始年始どんな感じ?」

「幕張とか無限大とか続いて、大晦日は沼津の劇場だわ」

「年始は?」

「1日はイオン営業で、2日がルミネ、3日以降はまた幕張とか。福岡劇場もあったような」

「なるほどね。いいねえ」となる。

もちろん、世間一般的にも、サービス業などに属している人たちは正月返上で働いてる人もたくさんいる。

ただ、芸人は“返上”というスタンスではない。年末年始という、人が浮足立ってイベントに出かけるときこそ、舞台に立って笑わせたい、という当然の思考がある(特に若手のうちは)。

事実、年末年始の特別興行は大抵満席で、客のテンションもやたらと高いのでやりやすかったりもする。

テレビなどでも、一月一日から生放送で数多の芸人が元気に動いている。

大晦日に仕事納めをして、元旦に仕事始めという世界。(家族や自分のためにお休みをとる芸人もたくさんいるし、どれが正解とかではないが)

笑い納より、笑かせ納。

初笑い、より、初笑かせ。

そんな世界。

───前置きが長くなったが、今回は『バイク少年の楽屋事件簿』は小休止。

番外編として、年末ならでは企画『楽屋川柳』をお届けします。

《楽屋川柳・・・毎年の年末、ルミネ劇場や無限大ホール、沼津劇場などで、芸人に『 今年を振り返って』というテーマで川柳を綴ってもらっている》

バイク少年ことBKBが、ルミネ劇場出番のときに、偶然居合わせた優しい人達が快く協力してくれた。

まずは───もはや吉本を代表する次世代兄弟漫才師ミキ兄、昴生の川柳。

出典: FANY マガジン
出典: FANY マガジン

歩いたり

 食事制限して

  やせました

書き上げた作品に対してBKBが、ぶしつけに訊ねる。

「これはどういう意味?」

すると昴生はこう答えた。

「わかるやろっ!!そのまんまですわ!」

後輩芸人から先輩芸人へのツッコミによく見られるパターン、『一言目タメ口からの敬語ツッコミ』が見事に炸裂。

よく見ると確かに、本当に割と痩せていた。

川柳通り、健康のために食事や運動で痩せたのに、あまりにしっかり痩せたので周りから「ストレス?なんかあった?」などと心配されたそうだ。

危うくBKBも、事件扱いするところだった。

───続いてはその弟、ミキ亜生の川柳。

出典: FANY マガジン
出典: FANY マガジン

思ってた

 ルアーで釣れた

  ブラックバス

釣りが趣味で、活発な亜生らしい、可愛くて瑞々しい川柳だ。 

だが、この川柳を書いてもらうのに、実は一苦労があった。

というのも、亜生はこの日の前日まで、ウィルス性の腸炎で体調を完全に崩していた。

冬場の年末のこの時期、彼は必ず腸をくだす。

これはもう、抗えない体質らしい。

その腸くだし明け。

万全ではないが、もちろん劇場に出たからには全力で漫才をする。それは当たり前。客は気づいてないだろう。ただ、楽屋では本当に、あの天真爛漫な亜生が疲れていた。

ポカリを飲みながら、会話の輪にもあまり入らず過ごしていた。

BKBも川柳を頼んでから、このことに気づき「やめとこか?全然いいで」と言うと亜生は「はぁ!?やります!やるでしょ!バイクさんの頼みなら!」と、なぜかキレ気味で書いてくれた。

彼なりに奮い立たせたのだろう。

また危うく事件に発展するところだった。

この笑顔も、そんな腸くだし明け亜生の精一杯の笑顔と思って見ると、より川柳に趣が出る。

───続いては吉本が誇るチャラ漫才師、EXITのりんたろー。の川柳だ。ひうぃごう。

出典: FANY マガジン
出典: FANY マガジン

踏みしめる

 MもBABYも

  一歩ずつ

予想に反して、いや予想通りというべきか、ギャップが売りのイメージもある彼からはなんとも素晴らしい川柳が届いた。

MはM-1のM。ブレイクしても毎年挑戦をしていて、今年惜敗したが来年もその道を歩くぞという意気込み。

そして、BABYはそのままの意味。赤ちゃんが生まれ、ハイハイをする我が子の大地への踏みしめとかかっている。

合間に頼んだにしては恐ろしいクオリティすぎて、BKBは少しひいたそうだ。ほぼ事件だ。

最後はEXITのムードメーカー担当の彼の川柳。

出典: FANY マガジン
出典: FANY マガジン

ブリンバン

 バンブリンバン

  バンブリンバンバンボン

こちらは期待通り。

なんとも兼近らしい、今年の振り返り。

ほぼ流行語のあの曲をそのまま。

本来は小説も書く兼近なので、真面目に考えればそこはかとなく情緒に溢れた川柳も書けただろう。だが芸人の楽屋川柳はこうでないと、というソリッドなメッセージも込められているように思えた。

りんたろーが「おい、かねちーがそれだと、俺がハズいじゃんか、もう〜」とボヤいていた。

事件になりかけた。

それでは、このへんで。

また来年会いましょう。

楽屋で事件が起こる限り。

おまけ

出典: FANY マガジン
出典: FANY マガジン

無事終わり

 今年もなんとか

  無事終わり

   BKBヒィア

よいお年を。

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