昨年65周年を迎えた吉本新喜劇が3月2日(日)、“記念イヤー”を締めくくる千秋楽公演を行いました。大阪・なんばグランド花月で開催された『吉本新喜劇記念日2025~今年は65周年ツアー千秋楽に新たな新喜劇に向けた発表が!?~』は2部構成。第1部は、やなぎ浩二が最年長で初の座長を務める新喜劇、第2部は間寛平GM(ゼネラルマネージャー)と4座長が揃い踏みした“65周年ツアー”千秋楽新喜劇で超満員の客席を沸かせました。エンディングで新喜劇を盛り上げるサプライズ発表も飛び出した、アツい舞台の模様をレポートします!

やなぎ浩二が年齢を感じさせない豪快な“コケ”!
第1部で初の座長を務めたのは、御年84歳の“レジェント座員”やなぎ浩二。街の小さなうどん屋を舞台に、親子や家族の絆を笑いたっぷりに描く王道の新喜劇です。うどん屋の大将・やなぎが、娘の森田まりこ、従業員の内場勝則、諸見里大介らに支えられながら、娘の結婚話や立ち退き問題、老いらくの恋までさまざまな出来事に翻弄されます。
やなぎは持ちギャグ“ちゃっそ”を連発しながら登場し、「芸歴67年、当年とって82歳、初めて座長をやることになりました」と深々とおじぎ。「もっぺん“ちゃっそ”いっとこか」と宣言しますが、拍手が鳴り止む前に始めてしまって「緊張してますねん……」と言い訳するなど、終始、天然キャラ全開です。座員たちのギャグに年齢を感じさせない豪快なコケっぷりを見せ、どよめきが起こる場面もありました!

やなぎの脇をしっかり固めたのがベテラン座員たち。向かいのクリーニング店の池乃めだか、工務店社長の島田一の介は、やなぎとの“仲よしトリオ”として、それぞれの持ち味を存分に発揮します。
内場は飄々としたキャラクターで、ボケにツッコミに大活躍。めだかの娘役・未知やすえはバツイチ設定で、「結婚はこりごり!」と言いながら、実際の夫である内場に鋭い視線を送ってファンを喜ばせます。おやくそくの“キレ芸”でやすえは、やなぎに「おい、ヨボヨボ!」と言い放ちつつ、「頑張っとんなあ! えらい元気になっとるやないか!」とねぎらいました。

アルバイトとしてうどん屋に入り込む“謎の女”浅香あき恵は、やなぎとのラブラブシーンで見せるぶりっ子キャラをはじめ、さすがの演技力を見せつけます。
東京から参戦した石田靖は、新名徹郎、松浦真也を従えてガラの悪い借金取り役で登場。3人のコンビプレーで“石田靖あるある”を次々と放り込んだほか、松浦のギター演奏にのせて『ECSTASY-OSAKA-』を歌って踊るひと幕もありました。
クライマックスは、なんとやなぎの“アクションシーン”まで!? “ちゃっそ”と唱えながら無双するやなぎに、爆笑と大きな拍手が沸き起こりました。


寛平GMが辻本相手にボケまくり「しんどいわー」?
寛平GM、すっちー、酒井藍、アキ、吉田裕が顔を揃える第2部の舞台は第1部と同じうどん屋ですが、こちらは人気チェーン店「花月うどん」の本店という設定。すっちー演じる社長と、2人の息子(烏川耕一、吉田)の後継者問題を軸に、向かいのクリーニング屋の娘(酒井)、その母(アキ)、バーでバイトするおじいさん(寛平GM)らが入り乱れます。
吉田は“マキバオー”ネタからすっちーとの“乳首ドリル”まで、全力でイジられまくり! アキは登場するなり「……なに?」「いいよぉ〜」を繰り出し、うどん店従業員役の清水けんじを振り回します。
酒井は、かわいい風貌にして毒舌家の小学生役で本領発揮。すっちーは、やりたい放題しつつも、締めるところはしっかり締めて舞台をまとめます。

寛平GMは、バーのマスター役の辻本茂雄を相手にノンストップでボケまくり。百戦錬磨の辻本が「しんどいわー」と音を上げるほどのコテコテな絡みが止まりません。そこに辻本を追いかける島田珠代が乱入してさらなる大騒ぎに! 寛平GMと珠代の濃すぎるコラボ、息つく間もないギャグ合戦、辻本への無茶ぶりで舞台上はカオスと化し、客席は爆笑の渦となりました。
ほかにも、うっかり者の医者に川畑泰史、「花月うどん」のレシピを狙う食品会社社員役は西川忠志、用心棒として千葉公平など、豪華キャストがズラリ。寛平GMと同じ股引き姿で体当たりの笑いを呼んだ小林ゆうや、イケメンキャラをかなぐり捨てて新境地を見せた野崎塁ら、若手も躍動しました。


紆余曲折を乗り越え、伝統を新たな世代へと継承していく──吉本新喜劇にも重なる結末を迎えたあとは、カーテンコールへ。ここで2つのサプライズ発表があり、ひとつめは新設される「敢闘賞」制度です。4月から毎週、なんばグランド花月、京都・よしもと祇園花月の本公演でもっとも活躍した座員に贈られ、“金一封”もあると聞いた座員たちは一気に色めき立ちます。
もうひとつは、珠代からバトンを受ける66年目の“新喜劇の顔”となる座員の発表。寛平GMに名前を呼ばれたのは、西川忠志です! 驚きで目をまんまるに見開いた忠志は、「突然のことでびっくり。歴史ある新喜劇のなかでこんな役割をいただいて、感謝の気持ちでいっぱいです」と興奮ぎみに語りました。

「新喜劇は愛されていると感じた」
終演後には、寛平GMと4座長、珠代、忠志が登壇して記者会見が行われました。寛平GMは「いいお客さんで、すごく新喜劇を愛してくれてるなというのが伝わって、これは頑張らなあかんなと思った」と振り返ります。
座長の大役を見事にこなしたやなぎについて寛平GMは「また来年やらせろって言われる気がする。クセになっているのでは」と語りました。すっちーは「“お客さまあっての新喜劇”と客席を見たときに思った」といい、「やなぎ師匠のうちわ、一の介師匠のうちわも見えて、あったかいなと感じた」としみじみ。

酒井は「舞台で2本立てというのはないので、“これはすごいことしてるな”って途中から震えが止まらなかった」と言います。アキは2月に“65周年ツアー”で東北を回ったことに触れ、「新喜劇がテレビ放送されていないところでもお客さんが入って、今日と同じぐらいあたたかい感じだった。この1年間を思いながら舞台に立っていた」と話しました。
吉田はこの日の開演前に“マキザッパ”を作るワークショップに参加したといい、「みんながテンション上がっている姿を見て、(新喜劇は)愛されてるなと感じた」とうれしそうに語りました。

この日で“新喜劇の顔”を退任する珠代は、「ずっと感無量で、いつ涙が出るかという状態だった。今日が“顔”としてラストのステージだったのでやりきった。満たされた気分でした」と清々しい表情。
65周年ツアーの宣伝活動などで全国を飛び回った1年間について珠代は、「新喜劇のために歯を食いしばって頑張ってました」と振り返ります。すると「この1年、テレビをつけたら珠代姉さんが出ていた」(酒井)、「“ありがとうございます”とずっと思っていた」(アキ)と感謝の言葉が飛び交いました。
そんな珠代からバトンを受け取った忠志は、「1年間の珠代さんの活動を拝見していて、すごく“顔”として活躍して引っ張っていってくださっていた。僕には何ができるんやろう……」と本音をポツリ。
しかし、寛平GMから「声が大きいだけ。(新喜劇で)いちばん大きいもんな」とちゃちゃを入れられた忠志は笑顔を見せ、「1回1回のステージを精一杯することの積み重ねが“顔”の役目かなと思っている。日々が続くなかで気づくこともあると思うが、今日からの一歩を進めたい」と“小さなことからコツコツと”チャレンジすることを誓いました。
