“盲目の漫談家”濱田祐太郎と吉本新喜劇がコラボした舞台『盲目のお蕎麦剣士が巻き起こす新喜劇』が、5月30日(金)に大阪・なんばグランド花月で上演されました。濱田は、“ちゃんばらトリオ最後の弟子”である新喜劇座員の平山昌雄から、約2カ月にわたって殺陣の特訓を受け、“盲目の剣士”に大変身! 間寛平GM(ゼネラルマネージャー)を筆頭とする新喜劇のメンバーと互角に渡り合い、アドリブもアクションも満載のステージを盛り上げました。

寛平GMと濱田の交流がきっかけ
濱田が2024年の大阪マラソンに出場したことをきっかけに、寛平GMとの交流がスタート。食事の席で濱田が「ゆくゆくは、僕の持っている白杖と寛平師匠の杖でしばき合いをしたいですね」と話したことから、今回の企画が動き始めました。
この日は濱田と寛平GM、平山のほか、辻本茂雄、青野敏行といったベテラン勢、さらにレイチェル、新名徹郎らイキのいい若手座員や、濱田と同じNSC(吉本総合芸術学院)大阪35期の、もも(まもる。、せめる。)が出演しました。
オープニングは、いきなり濱田の殺陣シーンからスタート! ピンスポットに照らし出された濱田は、4人の浪人に囲まれ睨み合いに! 「命は大事にしたほうが身のためだぜ」──不敵なセリフを放って浪人たちの攻撃を受けて立つ濱田でしたが、あっけなく斬られてバッタリ……。
「なんで斬るーん!?」という叫びに爆笑が起こり、本編が幕を開けます。

明転すると場面はガラリと変わって、旅籠「花月屋」とその前に店を構えるそば屋台のセット。訪れた客(新井崇史、いがわゆり蚊)と旅籠の奉公人・レイ吉(レイチェル)、瓦版屋のせめ太(せめる。)がギャグやボケを繰り出し、空気をしっかり温めたところにゆう吉(濱田)が弟分のマモ助(まもる。)にサポートされて登場しました。
「お客さんがお待ちやで」というレイチェルを「ちょっと待って」と制した濱田は、舞台中央に立つと「お忙しいなか、ようこそお越しくださいました」とニッコリ。
「新喜劇初出演で初主演、時代劇にも初挑戦、初めてのことばかりですが、一生懸命頑張りますので、最後までお楽しみください」と挨拶し、「さ、芝居に戻ろか」のひと言で一同をズッコケさせます。

「お前見えてるやろ!」連発
マモ助とともに、江戸仕込みのそばを食べさせると評判の店を切り盛りするゆう吉。かつて“博徒の濱吉”として裏社会で鳴らしたことは伏せています。花月屋主人の寛吉(寛平GM)やその娘・おまみ(前田まみ)らと、笑いが絶えない日々を過ごしていましたが、そこに騒動が次々と……。
寛吉のもとに金貸しの博徒・茂吉(辻本)と弟分のへい吉(平山)が押し掛けたり、おまみが廻船問屋(青野)のアホぼん(野崎塁)に言い寄られたり、花売り(高橋靖子、ぢゃいこ)がチンピラ(太田芳伸、高関優)にからまれたり――。さらに、ゆう吉を博徒の道に引き戻そうとする旅の博徒(タックルながい。)や、ゆう吉の過去を知る人物(新名徹郎)まで入り乱れて、ゆう吉は絶体絶命に!?

ふだんのキャラそのままの飄々とした演技を見せる濱田。「売り切れです」と何度言っても天ぷらそばを注文してくる寛平を、濱田が巻きザッパで見事に叩くと「お前、見えてるやろ!」とお約束のツッコミが入ります。
辻本との絡みでも、“アゴイジり”に始まり「見えてるやろ!」の連続! アドリブ全開でどんな球も打ち返していく濱田に、辻本は「お前……まあまあ腕あるな」とニヤリとします。
「(目が見えないのに)なんでアゴが出てるってわかってん!」とツッコまれて、「子どものころから大ファンやからですよ!」と返す濱田に、辻本が「……照れるやないか」ともらすと客席から大きな笑いと拍手が起こりました。

華麗な刀さばきで敵を斬りまくる!
ふだんから濱田と仲がよく、大阪マラソンでも伴走を買って出たもも・まもる。は、濱田の動きをサポートしながら、自分もボケたりツッコんだりの大奮闘。相方のせめる。とともに賑やかに舞台を盛り上げます。
野崎塁は“男版・島田珠代”を思わせる、メーターの振り切れた“アホぼんキャラ”を怪演! 濱田の「あんなヤツが目ェ見えてるなんてショックですわ!」というツッコミも相まって、爆笑をさらいました。ほかにも、レイチェルが自慢のボイスパーカッションを披露したり、ぢゃいこが寛平GMとラブラブカップルを演じるなど笑いどころ満載です。
寛平GMと辻本のお約束の絡みも、時間を大幅にオーバーするほどヒートアップ。「兄貴」「っちゅうもんや」というワードでどこまでもボケまくる寛平GMと、「もうひとつやないか」「どうしたん、今日は」とあおりつつ腹話術などのムチャぶりにも全力で応える辻本が、丁丁発止のやりとりで沸かせます。

そこに平山の天然ボケが混ざり合うと、舞台上はカオス状態に! 辻本が「もうしんどいねん!」と音を上げるほど濃〜いアドリブ合戦となりました。
終盤最大の見せ場は、辻本ら悪党たちにさらわれたマモ助を救うべく、ゆう吉の剣が火を吹く殺陣シーン! 華麗な刀さばきでバッサバッサと敵を斬り、最後に拳を突き上げると、会場は歓声と割れんばかりの拍手に包まれました。
そして、ゆう吉の生き別れた母が花売りのお靖(髙橋)だったことも明らかに……。笑顔弾けるハッピーエンドで、舞台は幕となりました。

「座頭市とダブりました」
カーテンコールで寛平GMは、「よう頑張ったなあ!」と濱田を労います。大役をみごとにこなした濱田は「今回の新喜劇をやるにあたり、寛平さんは僕にとっていちばんの恩人。昨年、食事に誘っていただいたとき、『僕の白杖と寛平師匠の杖でしばき合いを』と伝えたら『やる気があるなら、新喜劇やってみるか』と言っていただき、1年後にこうして舞台に立つことができた」と改めて感謝しました。
2カ月にわたって濱田を特訓した平山は、「殺陣やちゃんばらは、目が見える方でも難しいもの。目の見えない濱田さんがあそこまでの動きをするのは、本当にすごい。勉強させてもらいました」とベタ褒めです。

平山と同じくちゃんばらトリオの弟子である青野も、「勝新太郎さんの『座頭市』とダブりました。あそこまでやるとは……」と驚きを隠せません。濱田は「平山さんは、目の見えない僕のために、一つひとつの動きを全部言葉で教えてくれた。寛平師匠が恩人なら、平山さんは僕にとって先生」と話しました。
濱田は最後に「あと一つ、6月25日にエッセイ本を出版することになりました!」と、初の著書『迷ったら笑っといてください』(太田出版)もちゃっかりと宣伝。そして「最後までご覧いただいた皆さん、ありがとうございました。お気をつけてお帰りください!」と締めくくると、客席からまたまた大きな拍手が送られました。

書籍概要
『迷ったら笑っといてください』

著者:濱田祐太郎
定価:1,980円(本体1,800円+税)
発売:2025年6月25日(水)
仕様:四六判/196ページ予定
ISBN:978-4-7783-4036-0
太田出版Webサイトはこちらから。
Amazonはこちらから。