沖縄が誇る伝統芸能を映像化、『シネマ組踊「孝行の巻」』 舞台挨拶とインタビュー

4月16日(土)に開幕した「島ぜんぶでお~きな祭 第14回沖縄国際映画祭」。那覇市の桜坂劇場ホールAで『シネマ組踊「孝行の巻」』の上映と舞台挨拶が行われました。

出典: FANY マガジン
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舞台挨拶には、宮平貴子監督、大野順美プロデューサー、眞境名正憲さん(指導)、頭取(かしらどぅい)役の宇座仁一、歌三線の徳田泰樹、宮城さつきさん(案内役)が登壇。『シネマ組踊「孝行の巻」』は、約300年間受け継がれる沖縄の伝統的歌舞劇「組踊」を、新しい切り口で映像化するというプロジェクトにより制作された作品です。

「監督は自分でいいのか?」

挨拶の冒頭で宮平監督は「このプロジェクトの話をもらったときに、監督は自分でいいのかと戸惑った」と回顧。「まずは、組踊を見たことがない人にもわかりやすく伝えるにはどうしたらよいのかと考え、最初に説明を入れるという形を取りました。どうでしたか?」と問いかけると、客席からは大きな拍手がわきおこりました。

頭取役の宇座は「普段は舞台の上でお客様に向かって演じているので、カメラの前で演じるのは初めての経験。戸惑いもあったが新鮮だった。ぜひ全国の方にこの作品をみていただきたい」と述べました。また、歌三線の徳田も「お客様の前とカメラの前の違いに緊張しましたが、いつもと違う視点から組踊をみていただけるのは新鮮。色々な組踊があるので、皆さんに観てほしいですね」と述べました。

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指導の眞境名さんは、沖縄が本土復帰を果たした50年前に組踊が国の重要無形文化財に指定された当時の貴重な話を披露しました。さらに、50年前にも組踊の映像記録を撮影したという話に触れ、「この作品も次の世代につながるひとつの記録だと思います。組踊には苦しい時代もありましたが、みなさんが沖縄の伝統芸能を見直してくださったことで、『国立劇場おきなわ』もできたし、ユネスコ無形文化遺産にも登録されました。組踊にとっては、大変素晴らしい発展を遂げた50年だったと思います。これからもよろしくお願いいたします」と締めくくり、舞台挨拶は終了しました。

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「OKもらうまで生きた心地がしなかった」

舞台挨拶終了後には、宮平監督と、おなめり(姉)を演じた田口博章がインタビューに応じました。

伝統芸能の舞台を映像化するという、新しい取り組みに挑戦した宮平監督は「舞台をとるというのは初めてでしたし、組踊についても初心者でしたので、プロデューサーさんやカメラマンさんなどにご指導いただきながら試行錯誤しました。組踊の方はみなさんすごく謙虚で、ひとつの作品で、舞台に出る皆さんがすべての役の台詞を全部覚えておられるんですよね。そういうふうに、ひとつずつ積み上げて作ってこられたところにポンと入って映画を撮るのだから、指導の眞境名先生に作品を確認してOKをいただくまでは、生きた心地がしなかったです。先生に褒めていただけたときは本当にうれしかったです」と語りました。

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田口は「私たち演者は、今後ずっと記録に残るものですから、きちんと間違いなく演じるということに尽力しました。また、舞台は1本の流れで話が進んでいきますが、カットしながら時系列もバラバラで話をつなぐという映画の手法で演じるのは初めてでしたので、その都度、感情移入するのが少し大変でしたね。でも舞台とは違って色々な角度から組踊をみていただけるのは嬉しいですし、素晴らしいと思います」と、演者としての思いを語りました。

今回のプロジェクトについて、田口は「偉大な先生方が映像記録を残してくださっていたからこそ、組踊は今の時代に繋がることができたのだと思います。今回の作品の映像も、未来につながるといいですね。伝統を守りつつその時代に合った組踊がしっかり次にバトンタッチできるような、良い題材になったのではないかなと思います」と話しました。

宮平監督は「琉球王国から沖縄県になり戦争があり、組踊にはたくさんの危機がありました。ここまでくるのに、みなさんの血のにじむような努力があったことを、作品作りを通じて学ぶことができました。今このような文化が残っていることをあたりまえのものと思わずに、今後の発展に貢献することができれば良いなと考えています」と熱い思いを語りました。

島ぜんぶでお~きな祭 第14回沖縄国際映画祭は2022年4月16日(土)、17日(日)の2日間、開催されています。

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