9月25日(水)、沖縄県の那覇市ぶんかてんぶす館 テンブスホールにてお笑い公演『組踊漫才~執心鐘入(しゅうしんかねいり)編~』が開催されました。
同公演はお笑い芸人のオリオンリーグ(剛くん・玉代勢直)と組踊演者で沖縄県立芸術大学准教授の嘉数道彦さんが出演し、沖縄の伝統芸能である「組踊(くみおどり)」と、現代の漫才を融合させたもので、今回が5回目の開催となります。
オリオンリーグのネタでスタート!
ステージが始まると、オリオンリーグの2人がさっそうと登場。自身の衣装をいじったり、ゾンビ映画を再現したりする漫才で、観客の心をつかんでいました。つづけて登場したのは剛くんと嘉数さんの2人。中学・高校の同級生だった2人は、高校時代に「しかぼーず」として、お笑いコンビを組んでいました。
現在は互いに違う道を歩んでいると、観客に説明する剛くんに対し、不満顔の嘉数さんが口を開き……というところから漫才が始まります。高校時代に組んでいたとあって、2人の軽妙な掛け合いに、会場は爆笑に包まれました。
組踊の歴史と所作に感嘆の声
つづいてのコーナーでは3人が登場し、嘉数さんから組踊の歴史や所作などを解説します。当時は琉球の庶民のために作られた芸能ではなく、国賓向けに作られた点、組踊の独自の約束事やセリフのやり取り、鑑賞ポイントなどについて、観客たちはうなずき、感銘を受けた様子で軽い驚きや感心の声が会場に響き渡りました。
ここからは演者の玉城匠さん、三線演奏の平良大さんも加わり、『ロングバケーション』や『101回目のプロポーズ』といった現代ドラマの名シーンやアントニオ猪木による闘魂注入のパフォーマンスを組踊に置き換えるとどうなるかに挑戦。セリフの口調や所作の違いから、思わない形となり、笑い声が響き渡りました。
漫才と組踊の融合、ゾンビ映画アレンジに観客爆笑!
公演の終盤には、公演のタイトルにもなっている組踊「執心鐘入」の物語の紹介と、その一コマが嘉数さん、玉城さん、平良さんによって実演されます。本公演で所作や鑑賞ポイントを学んだ観客は、組踊の魅力に引き込まれていきました。
最後には、冒頭で行われたゾンビ映画の漫才に、組踊の要素を取り入れてアレンジをしつつ、「執心鐘入」の一部を要素として取り入れます。オリオンリーグの2人と嘉数さん、玉城さん、平良さんが縦横無尽に舞台を駆け巡ることとなり、会場は大爆笑に包まれながら幕を閉じました。
今回、公演終了後にオリオンリーグと嘉数さん、平良さんがインタビューに応じてくれました。
5回目の公演に手応え「厚みが増したステージ」
公演を終えて剛くんは「今回で5回目の公演となりますが、今回初めて演者の玉城さんと演奏の平良さんが加わったことで、公演に厚みが増し、組踊の良さをより伝えられたんじゃないかな」と満足した様子で語ります。
初めて公演に参加した平良さんは「最初はお客さんの反応がどうなるか心配だったが、意外にも温かく見守ってくれた。観客が組踊の所作などを理解してもらったうえで、最後の組踊漫才では、面白さがアップして楽しんでいたようで、自分も楽しむことができた」と初めての参加に手応えを感じていました。
「芸能で生計を立てる人を増やしたい」
5回目となる本公演を始めたきっかけに関して、玉代勢は「沖縄ってたくさん芸能あると思うんですけど、芸能だけで食べていける人が少ない」ということに危惧。
「次世代にも芸能をつないでいくためには、芸能で成功して生計を立てる人が増えることが重要で、そのためには、漫才や組踊、エイサー、琉舞など特定のジャンルだけでなく、コラボレーションを通じて幅広い層にアピールする必要。若い世代から年配の方まで多くの観客を巻き込むことで、沖縄の芸能好きの層を広げていけると考えています」と熱い思いを語りました。
伝統芸能の入り口としての組踊漫才の役割
今後の展望として、玉代勢は「ぜひ離島や北部など、いろんな場所を回って公演したい。実際に観てもらって組踊漫才の良さを届けたい」と意気込むと、嘉数さんは「色んな世代、特に子供たちに向けて、伝統芸能の発信を行いたい。(組踊漫才という)切り口で伝統芸能の入り口の機会になれば」と語ってくれました。