大阪・なんばグランド花月(NGK)の夏の風物詩となっているのが、落語家・桂文珍による独演会。今年も8月8日(金)に、ゲストに春風亭一之輔を迎え『吉例88 第四十三回 桂文珍独演会』を開催します! 5月14日(水)にはNGKで概要発表会見が行われ、文珍が演目や意気込みなどを語りました。

LPレコード聞いて「ドラマチックで面白い」
会見ではまず、長年続いてきたNGKでの独演会について、文珍がこう語りました。
「いろんな独演会をやっていますが、43年も続いている独演会はこの会だけではないかと自負しています。ありがたいことやと思います。毎回、趣向を凝らしたネタをしていますが、この歳になってできるようになる噺があるというのが、落語の奥深いところかなと思っております」
落語の演目の紹介では、今回、これまで手掛けてこなかったネタにも挑戦すると明かします。それが「雑穀八(ざこはち)」。東京の噺家、桂三木助のLPレコードに収録されたものを聞いているうちに「ドラマチックで面白いな」と思ったのが、興味を持ったきっかけだそう。
雑穀商「雑穀八」の一人娘であるお絹との婚礼を控えていた鶴吉ですが、婚礼の日に突然行方をくらまし、10年後に二百両の財産を築いて戻ってきます。しかし、その時すでに「雑穀八」は潰れていて……という物語。文珍はこう続けます。
「それで鶴吉は米屋を始めるのですが、その商売がうまくいくというところも“今っぽい”と。ただ、(内容が)いまの時代に合わないところがあるので、そこはお客さまの感情に逆らわないように、少しアップデートしていく感じになると思います」

また、自分のように年齢を重ねたからこそ出せる落語の味わいがあるとして、次のように話しました。
「仲人を務める予定だった枡屋の新兵衛という爺さんが出てくるのですが、彼のしゃべりが自分の年に合うようになって、自然にできるのがええかなと思いました。『いろいろ世話してやったのに、この男は……』と、だんだんキレていくのが面白いところです」
ゲスト・一之輔との「意外な共通点」
一方、会の冒頭には得意の時事ネタを取り入れた新作を考えているといい、トリネタは上方の古典落語「七度狐(しちどぎつね)」を予定しているとか。
「『七度狐』は、落語作家の小佐田定雄さんと相談して、狐が7回きっちりだますものを作り上げました。後半はジェットコースターのように流れていくと思いますが、それも時代に合わせてというようなことです」
ゲストの春風亭一之輔について、文珍は「大変有望な方」と絶賛しながら、「ずいぶんお若いですが、頑張ってはるので、ここでお迎えをして関西の皆さまにより親しんでいただけたらよいのではないかと思っています」と期待を語ります。さらには、こんな意外な共通点も明かしました。
「一之輔さんの師匠の(春風亭)一朝さんと私の誕生日が一緒で。それがご縁で今度、一朝・文珍で『朝珍(ちょうちん)の会』という落語会も企画しています。あとは、一之輔さんとお仕事が一緒のときに、楽屋で着替えていたら同じ柄のトランクスを履いていました。それがご縁で今回、出ていただきます(笑)」

今年の12月で喜寿を迎える文珍。いまでもますます落語の深みにはまっているそうで、次のように心境を語ります。
「若いときにはできたものが年齢とともに合わなくなってきたり、その逆のパターンもあったりします。たとえば『百年目』という噺は年齢を重るほどに旦那の表現が巧みにできるようになって、そこが面白いところです。いまはそのへんを楽しみながら、ゆっくりとできるような時期です。落語はお客さまが頭の中でストーリーを描くという珍しい芸だと思っていますし、それが情報過多の時代にかえって『僕の頭の中でそんなことができるんや』と思ってもらえることが多いのではないかと。この年になって、そういうことにも気づき始めました」
NGKには56年間の長きにわたって出演している文珍。最後に笑顔で、こう意気込みました。
「毎回、NGKに出るのが楽しくなってきています。若いころは漫才や吉本新喜劇の勢いに負けてアウェイ感があったのですが、最近はそんな気持ちも凌駕して、それらとともに落語を提供させていただくという楽しさがあります。あと何回できるかわかりませんが、健康で、細く、長く続けていく必要があるのではないかと。88歳までできたら最高やなと思います」

公演概要
『吉例88 第四十三回 桂文珍独演会』
日時:8月8日(金)開場 18:15/開演 19:00
場所:なんばグランド花月
チケット:前売 4,500円
FANYチケット(会場)はこちらから。