落語家の月亭方正が東京の噺家を京都・よしもと祇園花月に招く「二人会」が、5月24日(土)に開催されました。第3弾となる今回は、方正が「客席で見たいくらい」と語る柳家三三が登場。これまで会場となってきた祇園花月が8月18日(月)で閉館するため、この場所での「二人会」はこれが最後になりましたが、方正と三三はそれぞれの持ち味を存分に生かしたネタで会場を盛り上げました。

方正「人間国宝になられる方…」
笛と太鼓の音が会場に響くと、いよいよスタート。まずは前座の桂健枝郎が舞台へ。自己紹介で笑いを誘うと、アプリの話から「元犬」へ。人間に生まれ変わった犬・シロと、その世話を焼く甚兵衛、2人の様子をおもしろおかしく聞かせました。

続いては方正の出番。「三三師匠ですよ、うまい、すばらしい!」と語る方正は、「そっち(客席)で見たいくらい、人間国宝になられる方、素晴らしい方……」とたたみ掛けたあと、舞台袖に向かって「これくらいでいいですかね?」と話しかけて笑わせます。
方正は、会場の祇園花月が今年8月18日(月)で閉館することに触れながら、「二人会」は続けていきたいと意欲を見せます。そして大阪、関西の「粗さ」を面白おかしく話したマクラから、言葉の意味がわからず、てんやわんやする人たちの姿を描いた古典「手水廻し」へ。女中や番頭、住職など次々と出てくるキャラクターをユニークに演じ分け、観客もすっかりその話芸に引き込まれました。

続いて三三が軽い足取りで高座へ現れると、会場は拍手で迎えます。「足元の悪い中ようこそ、遠くからお運び……いただいたのは私のほう」と笑わせます。東京の落語界について毒舌を交えて盛り上げると、真面目すぎる若旦那が遊郭・吉原を訪れて……という大ネタ「明烏」を口演。
スッキリとした語り口が耳に心地よく、気がつけば噺の世界に引き込まれていきます。遊郭でのやりとり、一夜明けた若旦那の姿、細かな部分にも笑いをたっぷり盛り込みました。

2人がそれぞれの“話芸”で客席を魅了
仲入りのあとは、再び三三が高座へ。東京と大阪の噺家の違いをマクラに盛り上げると「道灌」を聞かせます。八っつぁんとご隠居の軽妙なやりとりは、トントンとリズミカル。スピード感がありつつ、しっかりと噺が耳に届きます。きっぷのいい江戸の人たちの姿が生き生きと表現されました。

トリの方正は、最初に聞かせた「手水廻し」の反省を話しているうちに、自身の娘、息子の話へ。子どもたちがかわいいと話すと、坊やが登場する噺「しじみ売り」を披露。凍える寒さのなか、熱いお茶をありがたそうにすする様など、方正がいたいけな坊やを熱演します。気前のいい親方とのやりとりから、グッとくるサゲまで、じっくりと聞かせました。
最後に方正は、祇園花月での「二人会」が今回で終わることに改めて触れながら、「今後も関東の噺家を関西に呼んでぶつかっていきたい」と思いを伝えます。そして、「そのときはぜひ遊びにきてください、本日はありがとうございました」と深々と頭を下げると、会場は大きな拍手に包まれました。
