香川県住みます芸人・梶剛が主催する、笑いと食と地域の魅力を集めた大イベント『かじ祭り2025』が、9月20日(土)に香川・サンポート高松 多目的広場で開催されます。 2017年に始まったこのイベントも、いまでは1万人規模にまで成長し、すっかり「香川の風物詩」に。今年は「お腹も心もいっぱいに!」をテーマに、NON STYLE・石田明やバッテリィズ(エース、寺家)ら人気芸人が集結します。実行委員長の梶に話を聞きました。

人気芸人と触れ合える“特別なお祭り”
『かじ祭り』では、人気芸人たちがステージでネタ披露するだけでなく、屋台や物販の店先に立って観客と直接交流するのも特徴。芸人との距離がこんなに近いお祭りは全国でも珍しく、多くのファンを惹きつけています。
今年は、石田、ムーディ勝山、囲碁将棋(文田大介、根建太一)、ななまがり(森下直人、初瀬悠太)、バッテリィズ、ビスケットブラザーズ(きん、原田泰雅)、ひょっこりはんといった人気芸人が勢ぞろい。しかも入場は無料です。
実行委員長を務める梶に、祭りの見どころや、仲間や地域とともに歩んできた歴史と「祭りにかける思い」を聞きました。
——『かじ祭り2025』はどんな内容ですか?
基本的なスタイルは、始まったときから変わっていないですね。芸人がステージでネタを披露して、そのまわりを地元のお店や企業さんのブースが囲む。ステージとブース、この2つが柱になっています。
それと、一昨年から始めた「芸人屋台」を今年もやります。高松市中央商工会青年部有志の方々と一緒に焼きそばやハンバーグを作って販売するんですが、そこに芸人も加わって、調理を手伝ったり、売り子としてお客さんに声をかけたりするんです。芸人との距離が近いのが『かじ祭り』の特徴なんですが、その距離をもっと縮めています。

——芸人さんが実際に販売をしてくれるのはユニークですね!
そうなんですよ。売り子を人気芸人がやっているなんて、ほかではなかなかない光景だと思います。
香川にはお笑いの劇場がなく、寄席があっても年に1、2回くらい。テレビで芸人のネタを観ることはあっても、こんなに近くで写真を撮ったり、話したりできる場はないんです。だからこそ、お笑い好きな人は「芸人との距離が近くて楽しい」と毎年来てくれますね。
元相方・ムーディ、同期・石田の友情に「感謝しかない」
——出演者も毎回豪華です。どうやって声をかけているんですか。
基本的には、僕が「この人に来てほしい」と思う人に直接お願いしています。
ラインナップは正直、無料で見せていい顔ぶれじゃないと思います(笑)。あと、こだわりとして「香川県を盛り上げたい」という思いを共有できる人に声をかけていて、特に香川出身の芸人は毎回探して呼ぶようにしています。

——出演者との印象的なエピソードはありますか?
元相方のムーディ勝山は第1回からずっと出てくれてるんです。僕らはもともと解散理由が「スーパーなケンカ別れ」で、仲が悪くなっての解散でした。でも、数年後に香川で一緒にレギュラー番組をやるくらいに戻り、和解できたんです。
そんなムーディが、『かじ祭り』のエンディングで、コンビ時代の漫才のフリをしてくれたときは嬉しかったですね。「またあのころの関係に戻れたな」と実感しましたし、まわりの芸人も「うおー、いいね! 勝山梶(旧コンビ名)の感じや!」と盛り上がってくれました。

NON STYLEの石田も同期なんですけど、本当にずっと気にかけてくれてます。今年も本当は来られないくらい忙しかったのに、無理してスケジュールを調整してくれて。
物販では、1時間でも2時間でも、サインを書き続けてくれる。M-1王者で、いまはNSC(吉本総合芸能学院)の講師までやってる石田が、そんなふうに全力で協力してくれるのは、本当に感謝しかないです。
——友情や男気を感じますね。
本人は「毎年楽しみにしてるで」と言ってくれますし、「お前、毎回すごいな」と声をかけてくれることもあります。芸人同士でそんなふうに素直に言葉をかけ合うことは少ないんですけど、石田とは友だちとしての関係性が強いので、まっすぐな言葉で伝えてくれるんですよね。それがすごく嬉しいです。

1万人規模の祭りを始めた理由
——『かじ祭り』の歴史について伺いたいのですが、始まったのは2017年ですよね。どうしてこのお祭りを始めようと思ったんですか。
シンプルに、「香川を盛り上げたい」と思ったからです。四国には、高知のよさこい祭りや徳島の阿波おどりといった「県がひとつになる祭り」がありますが、香川にはそういうものがなかった。「香川にもああいう場があればいいのに」と思い続けていました。
もうひとつは、若い子と話していると「休みの日は県外に遊びに行く」とよく聞くんです。「なんで?」と聞くと、「香川には何もないから」って。その言葉がすごくショックで、だったら自分が楽しい場所をつくろうと思いました。

——第1回は自腹で開催したそうですね。
完全に勢いだけで動いたので、芸人の交通費やギャラ、会場費まで全部自腹でした。一応、グッズとしてTシャツを作って販売しましたが、それでも赤字。
最後は芸人みんなが「いま買ってくれたら全員でサインします!」とパワープレイで協力してくれて、なんとか少しの赤字ですみました。
——それから、スポンサーを探すようになったんですか?
そうなんです。僕は「赤字でもいい」と思ってたんですけど、まわりから「あなたが1人で背負うのは違う」と言われて。あと「応援すること自体を楽しんでくれる人もいる」と言ってもらって、それならと企画書を持って企業を回り始めました。
飛び込みや紹介を通じて「一緒にやりませんか」と声をかけて、そこから少しずつ協力してくれる企業が増えていきました。
——運営を通じて得た学びはありますか?
役所への申請や調整など、裏方もひとりで全部やって、仕事の大変さを身をもって知ったことが大きかったです。
それまでは「呼ばれたらフラーっと舞台に行って喋って帰る」くらいの感覚だったんですけど、自分でやると舞台ひとつを作るのにどれだけ多くの人がかかわっているか、どれだけ手間がかかるかがわかりました。それは、芸人としての姿勢が変わることだったと思います。

「住みます芸人でもできると証明したい」
——裏方業務を自分でやったり、赤字になっても開催したり、どうしてそこまで香川のために頑張れるのでしょうか。
住みます芸人になった当初、「地方に飛ばされたやつ」と見られている気がしたんですよね。「そんな芸人に何ができるんだ」と思われているように感じたのが悔しかったんです。だからこそ「田舎でもできる」と証明したい意地がありました。
——逆にそれが原動力になった?
やったろうって思いましたね。僕はずっとコンビで漫才をしてきたので、ひとりになってからは正直、ネタが作れなくて。単独ライブで見返すこともできなかった。
じゃあ、自分が持っているものでどうやって喜んでもらえるかを考えたときに、プレイヤーではなくプロデュースというかたちで、自分が作り出したコンテンツで楽しんでもらうのも、ひとつの方法だと思ったんです。
それを単独ライブの気持ちでやっている感じですね。いまの僕だからできるカタチが『かじ祭り』なんです。

——『かじ祭り』をやってきて、嬉しかった瞬間や忘れられない光景はありますか。
最初は本当に1人きりで始めたんですけど、いまは同じ思いを持った仲間がどんどん増えてきたのを実感しています。商工会青年部の方や、ボランティアの方々。そういう人たちが広がって、支えてくれるようになったのが何より嬉しい。
「香川をもっと好きになってほしい」「香川の魅力を知ってほしい」という芯の部分を共有できる仲間が集まってきてくれているのが、いちばんの喜びですね。「いい仲間ができたなあ」って心から思えます。
100年後に残るお祭りへ
——これから『かじ祭り』を、どんな祭りにしていきたいのでしょうか?
僕にとって『かじ祭り』は、100年後の香川県を盛り上げるための“種まき”なんです。
——100年プランなんですか!
はい。だから「イベント」じゃなくて「祭り」って言い切ってます。地元の花火大会みたいに、地域に根づく存在にしたいんです。
入場料を取らないのもそのため。田舎では地域の祭りがどんどん消えているので、新しい祭りを作って、未来に残していきたいと思います。
名前に「かじ」と入れたのも、「絶対にサボらないぞ」という自分へのプレッシャーのためです。100年後に「この“かじ”って誰?」って言われるくらい、香川の当たり前の祭りになってくれたら最高ですね。僕がやらなくても続いていく、そんな祭りに育ってほしいです。

——そんな梶さんが思う、香川県の魅力は何でしょう。
香川は日本一小さい県なんですけど、その小さなエリアに全部がギュッと詰まってるんです。だからすごく便利だし、海も山も川もすぐ近くにあって、都会には絶対に作れない自然がある。
最近も「じゃらん」の「都道府県魅力度ランキング」で総合満足度1位になったと聞いて、まさにそうだと思いました。
——そういう魅力に気づけたのは、地元の香川から一度、外に出た経験が大きいですか。
本当にそうです。たとえば、僕はずっと「海には島がポコポコ浮かんでいるもの」だと思っていたんです。でも外に出てみたら、日本海や太平洋って島がなくて広い水平線が見える。それを見て初めて、地元の瀬戸内海の景色がどれだけ特別だったかわかりました。外に出て、香川の良さに気づけた部分は大きいですね。
——それでは最後に、『かじ祭り2025』に来場する人たちへのメッセージをお願いします!
「香川県をもっと好きになった」「香川に住んでてよかった」「ここを離れたくない」と思ってもらえる祭りにしています。半年以上かけて準備してきたので、当日はとにかく楽しんで、いっぱい笑って。1日中笑顔になってください!

イベント概要
『かじ祭り2025』
日時:9月20日(土)10:00~16:00
場所:サンポート高松多目的広場・デックスガレリア・駅前プロムナード・西側通路
(香川県高松市サンポート3-33)
入場料:無料
出演:梶剛、NON STYLE 石田、ネゴシックス、ムーディ勝山、囲碁将棋、ななまがり、バッテリィズ、ビスケットブラザーズ、ひょっこりはん 他
主催:かじ祭り実行委員会
『かじ祭り』公式サイト:https://kajimatsuri.jp/