愛知県大府市のお笑い賞レース『OBU-1グランプリ2025 with メディアス』が、11月16日(日)に市内のおおぶ文化交流の杜「こもれびホール」で開催されました。第5回を迎えた今回は、大府市の市制55周年の記念大会。実力派芸人たちがしのぎを削った当日の模様を、愛知県のお隣、静岡県から“参加者”としてやってきた、芸人ライターのぬまんず・原カテキンがリポートさせていただきます!

9組が渾身のネタを披露!
『OBU-1グランプリ』は地元イベントとしてスタートしましたが、いまでは準決勝の段階からM-1グランプリ3回戦や準々決勝の常連組など実力派が多数並ぶレベルの大会へと成長しています。
何を隠そう我々ぬまんづも、初回と第2回大会、2年連続で決勝の舞台に立った経験があります。今年は準決勝まで進みましたが、そこで敗退(全然ウケてなかったのが原因か?)。それだけ大会のレベルが上がっていると実感しました。

決勝当日は、300席を超える客席が事前の観覧募集で満席。開演前にはすでに緊張と期待が入り混じった空気が漂い、この大会が地元で確かな存在感を持っていることが伝わってきます。
開演と同時に客席が暗転し、舞台上に「大府の漫才王、11/16、爆誕。」の文字が映し出されると、会場の期待が一気に高まりました。この日、MCを務めたのは、大府市出身で広報大使でもあるピン芸人のkento fukaya。そしてアシスタントを務めるタレントの三浦優奈さんもステージに上がり、2人の掛け合いで会場が温まります。

OBU-1グランプリ実行委員会の山本隆明実行委員長の挨拶に続いて、審査員のザ・ぼんち・里見まさと師匠と、トータルテンボス(藤田憲右、大村朋宏)が紹介され、ルール説明が終わるといよいよネタがスタート。
決勝に進出したのは出番順に、黄昏の森(森川海豊、森島)、トーマス探偵倶楽部(大浜くん、エジソン関谷)、サンライズ( T-ALEX、川野翔)、ASANA(クボ、ナミト)、ショテイの位置(かねゆう、イナドX)、アンダーパー(藤原丞、マッチ)、コブラマン(新久保勝貴、別府ジカキン)、紅点(鷹森、ヨコオ)、11件目のおつかいメール(柳井秀逸、増本史哉)という9組です。



トップバッターから大いに盛り上がり、どの組も大爆笑の連続。各組、ネタ終了後に審査員との掛け合いがあり、その短いやり取りからも出場した芸人の人柄や魅力が浮かび上がります。
大府市のお客さんたちが少しずつ出場芸人たちを知ることができ、今後、テレビや賞レースに出たときに「あ! OBU-1の決勝で見た人たちだ!」とファンが増えると思います。
アンダーパーが優勝!
筆者が気になった点がひとつあります。審査員の皆さんのコメントが、ちょっとガチすぎる点です!
「笑い待ちが少なかったのがもったいなかった」「システム系のネタだから、そこをもう少し改良したらもっといいネタになると思います」など、M-1グランプリの決勝のように、ガッツリとネタに関してコメントがつくんです。OBU-1グランプリは、楽しさのなかに、ガチさが入り混じった最高の大会と言えます。

各組のネタ終了後に、点数が発表されますが、本当に最後まで誰が優勝するかわからない混戦になりました。
9組のネタが終了し集計される間には、「おぶちゃん賞」を発表。これは全出場者のなかから、もっとも明るく健康につながる漫才を披露してくれた1組に贈られるもので、「おぶちゃん」は大府市の公式マスコットキャラクターです。
今回は、ファンクラブにゃんちー(おる・にちん、OKI)が受賞し、ネタも披露しました。

そして、順位の発表へ。まずは9位から4位までが発表され、残った3組はアンダーパー、コブラマン、11件目のおつかいメールです。会場の空気が静まり、緊張感が漂うなかで発表された今年の優勝は、アンダーパー!
決勝進出9組のうち8組が吉本興業所属という状況のなか、唯一、プロダクション人力舎所属のアンダーパーが見事に勝利しました。最後に審査員の里見まさと師匠が、「上手い漫才より、自分らしい漫才を貫いて頑張ってください」と出場者に温かく語りかけ、今年のOBU-1グランプリは幕を閉じました。


「昨年よりも全体のレベルが高かった」
大会終了後、里見まさと師匠は、今年の決勝についてこう語りました。
「ほんまに若い人たちの漫才のレベルが高い。形がまだ固まりきってへんコンビもおるけど、『こういう漫才をやりたいんや』という方向性はよう見えてる。そのなかで必死に戦ってる姿が印象的やった。」
また、自分たち(ぬまんづ)のように準決勝で敗退した組へも、次のようなメッセージをくれました。
「同じ場所で同じ1年を過ごすんやなくて、一歩踏み出したら見える景色は変わる。ここで勝つということは、その一歩になるんや」



トータルテンボスの2人は、今年の大会について「昨年よりも全体のレベルが高かった」と、決勝の盛り上がりを高く評価します。大村さんは「点数はつけたが、それはあくまで自分たちの基準での点数。他の審査員であれば違う評価になる可能性もあるので、気にしすぎなくていい」と話しました。
また、藤田さんも「ネタのあとのコメントも、アドバイスっていうか、俺だったらこうするってだけの話だから、我を通してやっていってくれればいい」と語り、自分たちのスタイルを守る大切さも強調しました。


出演芸人たちのネタのクオリティは年々上がり、そして何より、大府の皆さんがOBU-1グランプリに寄せる愛情と期待が、今年も強く感じられました。ここから他の賞レースで優勝するコンビが生まれても不思議ではありません。そう思うと、ぬまんづものんびりとはできず、僕らにとっての『OBU-1グランプリ2026』は、もう始まっています。
