とにかく個性的な名前が並ぶ芸人たちの「芸名」や「コンビ名」。いったい、なんでそんな名前に――という疑問を本人たちにぶつけてみました。題して『どうしてその芸名を付けたのですか?』。今回は、数字のみという異色の名を持つお笑いコンビ・2700(八十島、ツネ)の登場です。じつは過去に1回、改名している彼らの波瀾に満ちた芸人人生とは? コンビ名の由来はもちろん、昨年長期療養から復帰したばかりの八十島の現状や今後の目標など、根掘り葉掘り聞いてきました!
数字だけのコンビ名とかほかにないから
――まずは、「2700」というコンビ名の由来から教えてください。
八十島 コンビを結成したころ、ツネと建築現場で大工さんの材料を運ぶアルバイトをしていたんです。その現場には、スタッドという長さ2700ミリの資材があって、みんな「2700(にせんななひゃく)」と呼んでいました。
そのスタッドを運んでいるときに、ツネに「コンビ名はどうしますか?」と急に言われて、僕が適当に「2700でええやん」と言ったことから、このコンビ名になりました。
――アルバイト中の会話で決まったんですね。
八十島 はい、「2700にしよっか〜」みたいな(笑)。「数字だけのコンビ名とか(あまりほかに)ないやん」って。
――ツネさんは、提案されてどう思いましたか?
ツネ いや、「オモシレ―!」と思いました。コンビ名では聞いたことがない響きだったので、すぐに気に入りました。
――八十島さんがNSC(吉本総合芸能学院)大阪の26期生、ツネさんが27期生で期が違いますが、そもそもなぜコンビを組むことに?
ツネ NSCには教育係というものがあって、1コ上の先輩が後輩を指導するんですけど、26期生の(かまいたちの)濱家(隆一)さんが僕らの教育係だったんです。それで仲良くしてもらっていて、あるとき濱家さんが「26期生でバーベキューするからおいでや」と誘ってくれて、そこで初めて八十島さんと知り合いました。
――初対面での印象は?
ツネ めちゃくちゃヘンで、おもしろい人だなと思いました。そこからよく遊ぶようになって、バイトも一緒にするようになったら、どんどん八十島さんのおもしろさに惹かれていって……。僕は当時、同期のたけだバーベキューとコンビを組んでいたんですけど、たけだくんに「ごめん、八十島さんと組みたい」と謝って、解散した足でコンビ結成をお願いしに行きました。
――八十島さんは、なぜOKしたんですか?
八十島 僕は当時、掃除も洗濯もできなくて、本当に部屋が汚かったんです。で、ツネはいつも3000円あげたら、めっちゃきれいにしてくれたんですよ(笑)。だから、ええやつやなと思っていました。「この人やったら、どんなネタを書いても受け入れてくれて、楽しくやっていけるんだろうな」と、ツネの人柄の部分でコンビを組もうと思いました。
――おふたりは、コンビを組んでからも先輩・後輩の関係性が残っている感じがありますね。
八十島 意図的に残しています。一度、お互いにタメ口にした時期があったんですよ。そしたら急に、ツネがネタ合わせのときに意見を言うようになったんです。
ツネ ははは。
八十島 それまでは、「それ、おもしろいですね!」とか「やりましょう!」と言ってくれていたのに、「もうちょっと振り切ったほうがええんちゃう?」みたいに言い出して、バランスが悪くなりました(笑)。それで、「やっぱり敬語のほうがしっくりくるから戻してくれ」とお願いしました。
――ツネさんはそれで納得したんですか?
ツネ そうですね。自分でも偉そうになっているのがわかっていたんで。
八十島 はははは。怖いね、人って(笑)。
コンビ名で得したこと損したこと
――これまでに、2700というコンビ名で得したことはありますか?
八十島 数字だけのコンビ名ということで、覚えてもらいやすいというのはありますね。僕らはコンビ結成して8カ月でキングオブコントの決勝に進出したんですけど、そのときは「誰なん2700って。2700って何?」みたいに話題になりました。
ツネ ダークホース感があって、インパクトは与えられたのかもしれないですね。あと、あえて間違えて「3000」とか言ってイジってもらいやすいのも、得していると思います。
――逆に損したことは?
ツネ 「なんて読むのかわからない」と言う人はいますね。「ニーナナゼロゼロ」と読む人もいたり。
八十島 うん。あと、損とは違うかもしれないけど、テレビや街中の会話で「2700」って出てきたときに、ドキッとするんですよ。隣にいる人が「パチンコで2700円勝ったわ」とか言ったときに、「え? オレの話?」みたいな(笑)。
1回、ツネがピザの宅配か何かを頼んだときに、店員さんが半笑いで「あ、これは2800円です」みたいに言ったこともありましたね。
ツネ うん。あった。あれは、めっちゃ腹立ちました(笑)。
新たなコンビ名「ザ ツネハッチャン」として活動してみて…
――おふたりは2017年8月に「ザ ツネハッチャン」に改名して、2018年8月までの1年間、その名義で活動していました。
八十島 これは、『ピラミッドダービー』(TBS)という番組の企画で、占い師が2700のコンビ名を占って、「いまから50年は売れない」と言われたんです。で、改名を提案されたので、ちょうど仕事がない時期だったこともあり、心機一転しようと改名しました。
――では、「ザ ツネハッチャン」という名前も占い師の案ですか?
八十島 そうです。コンビ名だけでなく、髪の毛もおでこをしっかり見せなさいとか、衣装を変えたほういいとか、いろいろ意見をいただきました。僕はいつも黒のジャケットだったんですけど、ピンクのジャケットでチノパンになりました。
ツネ 僕は黒のレザーパンツにGジャンに、金のネックレスでしたね。
八十島 それで学園祭に営業に行ったときに、「ザ ツネハッチャンです」と挨拶したら、「え? 誰なん?」みたいになって(笑)。それで心が折れて、10分の持ち時間を5分で止めて帰ったんですよ。そこから心を病んで、仕事も行きたくないという状態になってしまいました。
ツネ 「ザ ツネハッチャン」って言いたくなくて、舞台の出番でも自分たちからは自己紹介しなくなりましたからね。
八十島 占いを信じて、やり通したらよかったのかもしれないけど、メンタルが足りなかったんですよね。それで少し休暇をもらって、「やっぱり、もとのコンビ名に戻したい」とツネに言いました。最初から2700を気に入ってなかったわけではないので。
――ツネさんは、戻そうと言われてどうでしたか?
ツネ 僕も「ぜんぜん戻しましょうよ」と。もう途中から、自分たちのなかに気持ち悪さがあったんです。新しいコンビ名が浸透せずに、営業に行っても「2700改めザ ツネハッチャン」って紹介されたりしていましたから。
――改名を通じて、さらに2700というコンビ名に愛着が湧いたのでは?
八十島 それはありますね。やっぱりしっくりきます。だから50年ぐらい売れなくても別にええかって(笑)。
ツネ ははは。気持ちが下がるくらいだったらね。
八十島 健康がいちばんです。
解散してもいいことないし、もうちょっと待ってみようと
――八十島さんは、2020年から2021年7月の間も、療養でお休みしていましたよね。
八十島 1回休養して以来、メンタル弱男になってしまったんですよ(笑)。2018、2019、2020と3回休んで、3回目はとうとう山口県の実家に帰りました。地元で仕事を探そうと思ったんですけど、仕事も見つからなくて、結局、のんびりしていました。
――その間、ツネさんは?
ツネ 僕はコンビの活動ができないので、1人で何かしら動くしかないと思って、キッチンカーの仕事を始めました。でもそれも、コロナの影響で売上がしんどくなり、困っていたときに、カジサックさん(キングコング・梶原雄太)が声をかけてくれて、YouTubeチャンネル『カジサック KAJISAC』のメンバーとして入りました。
――解散は考えなかったんですか?
ツネ そうですね。解散しても別にいいことはないし、もうちょっと待ってみようと思っていました。
――それから活動再開までの道のりは?
八十島 少しずつ心がよくなってきて、去年の7月に復帰して、まずは月1回だけ、山口県から通いでできる配信の仕事を始めました。今後もずっと、こういうゆったりとしたペースでもいいかなと思っていましたが、先輩の作家さんが「苦しかったら家賃も助けてあげるから、もう1回、東京でがんばろうよ」と言ってくれて、去年の11月にまた東京に出てきました。
――ツネさんは復帰すると聞いてどうでしたか?
ツネ いや、うれしかったですね。「とりあえず、ゆっくりでいいんでやっていきましょう」みたいな感じでした。
八十島 ツネはいま、月・水・金をカジサックチャンネルに、火・木・土を2700の仕事に充ててくれています。キッチンカーもあるので、ツネは大変だと思います。
ツネ 休みはほとんどないけど、ぜんぜん大丈夫です。体力はありますから。
てっぺんを取るよりもコンビで楽しい時間を過ごしたい
――復帰前後で変わったことは?
八十島 やっとツネの優しさに気づくことができました。僕、病気で療養する前はすごいストイックだったんですよ。最初は「3000円で掃除してくれてええやつやな」と人柄を見てコンビを組んだはずだったのに、いつしかお笑いの能力でしかツネを見なくなっていたんです。それでツネというのがまた、ボケないしツッコまないんですね。
ツネ ははは。そうなんです。僕は“おもしいヤツ”じゃなくて、“楽しいヤツ”ですからね。
八十島 (笑)。でも、休養中にも「大丈夫ですか?」と連絡をくれたり、ひどいオレをずっと気づかってくれとった。そしたらツネに甘えてみたくなったんです。
それでいまは、ラジオの仕切りも任せたりしています。ツネも“カジサックパワー”か知らんけど、任せたら任せたでちゃんとやるんですよ。
――コンビの関係性が変わったんですね。
八十島 お笑いでてっぺんを取るよりも、楽しい時間を過ごすほうが大事やなという感覚になってきました。「2人で楽しくしゃべってるし、それでええやん」と。そうやって楽しい時間を最優先にしたら、コンビ仲もめっちゃよくなって、いまは2700ミリのスタッドを運んでいたあの時代に戻ったという感じですね。
――ツネさんも変化を感じますか?
ツネ そうですね。八十島さんはやっぱり丸くなった部分があるし、僕もいまのほうがずっと楽しいです。
――変化といえば、八十島さんは復帰時にすごく太っていましたよね。
八十島 そうなんです。25キロ太って、101キロになって、しかも金髪になりました(笑)。
ツネ それにはびっくりしました。会ったときに「デカっ! こんなにデカかったっけ?」という感覚はめっちゃありましたね。でも僕には、八十島さんは金髪にして、自分のなかの何かを変えようとしているように見えたので、少し安心するような気持ちにもなりました。
――いまでは痩せて、すっかりもとに戻っているのもスゴいです。
八十島 かまいたちの濱家から「ちょっと太りすぎだぞ。テレビは細ければ細いほど出られるからな」と言われたんです。それで「目標体重をクリアしたらジム代を払ってあげる」と言ってくれたんですよ。だから、必死にがんばったんです(笑)。
――目標体重はいくつだったんですか?
八十島 80キロです。半年契約のジムで7月末には終わるんですけど、もう目標体重は切って、勝ちが確定しています。濱家にはまだ内緒にしていますけど、すぐにおカネを貰いに行こうと思っています(笑)。
ツネ それまでに戻らないようにだけは、せなアカン(笑)。
八十島の“いまの頭の中”が見られるライブ
――今後の目標を教えてください。
八十島 どうせ復活するならキングオブコントをちゃんと狙おうと思っています。そのためには、絶対にライブをしたほうがいいので、新ネタを2本下ろすライブを、月1で開催しています。
――先ほど「楽しさが最優先」という話がありましたが、それでもやっぱりキングオブコントは狙うんですね。
八十島 そうですね。もう1回、世に出るには、賞レースがいちばんの近道だと思うので、そこはがんばろうと思っています。
正直、いまが芸人人生のなかでいちばん努力しているかもしれません。ツネが週3日、カジサックチャンネルを手伝っている間に、僕はネタを書くことができるので、バランスはめちゃくちゃいいです。
――ツネさんは、もう1回、キングオブコントを目指すことについては?
ツネ 「やっぱりそこいくよな」という感じでした。もともと僕たちはキングオブコントで名前が知られたので、思い入れがありますし、そこは通らざるを得ない。八十島さんにネタ作りをがんばっていただいて、僕はパフォーマーとしてしっかり見せることに力を注ぎたいと思います。
――ライブでの手ごたえはどうですか?
八十島 5月、6月とライブを開催しましたが、お客さんが温かくて、すぐに感覚を取り戻すことができました。「これや、これこれ。やっぱりお笑いってええなあ」という感じです。
ツネ やっぱり、ネタ中も、いままでより楽しくできている感覚はあります。毎回、八十島さんの“いまの頭の中”が見られるライブになっていて、おもしろいこともハードなことも楽しいことも、いろいろなものが詰まっていると思うので、ぜひ見に来てほしいですね。
八十島 見たことないものが見られるから、ふつうのお笑いに飽きた人に来てほしいよな!
YouTube『2700八十島の地獄チャンネル』はこちらから。
公演概要
ネタライブ『2700寄席』
日時:7月19日(火) 開場13:30 開演14:00 終演15:00
場所:よしもと幕張イオンモール劇場
出演:バイク川崎バイク、囲碁将棋、2700、サルゴリラ、金属バット、アイロンヘッド
チケット:前売り1,500円 当日1,800円 配信1,200円 オンラインセット券4,000円
【セット券対象公演】
・14:00開演 ネタライブ『2700寄席』
・16:00開演 リズム芝居『全員でリズムお芝居』
・18:00開演 ゲーム1時間『2700のオリジナルゲーム』
・20:00開演 トーク『2700八十島のメンタルの話』
FANYチケット(会場)はこちらから。
FANYオンラインチケット(配信)はこちらから。
『大爆笑2700ライブ』
日時:8月4日(木) 開場18:15 開演18:30 終演19:30
会場:ヨシモト∞ドームⅠ
出演:2700
ゲスト:GAG
チケット:前売1,800円 配信1,000円
FANYチケット(会場)はこちらから。
FANYオンラインチケット(配信)はこちらから。