桂文枝が明かす“いらっしゃい!”と“イスコケ”誕生の秘密…『新婚さん』3月で勇退

テレビ朝日の人気トーク番組『新婚さんいらっしゃい!』で半世紀以上にわたって司会を務めてきた落語家・六代桂文枝が、3月27日(日)の放送回をもって勇退することになりました。1月7日(金)に大阪市のABCテレビ本社で開かれた記者会見では、2500回以上放送されてきた番組について振り返るとともに、その思いや、身を引こうと考えた理由について説明。感謝の言葉が途切れない会見となりました。

出典: FANY マガジン
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「このへんが潮時かな」

「50年、この私を使っていただき心から感謝しかありません」

会見でこの50年間を思い返して涙で声を詰まらせた文枝は、絞り出すように「本当に『ありがたい』の一言です」と話しました。

『新婚さんいらっしゃい!』は毎回2組の夫婦が出演し、司会の文枝と山瀬まみがカップルの馴れ初めや、新婚生活について聞くトーク番組。文枝は、1971年1月の番組スタート時に桂三枝(当時)として27歳の若さで司会に抜擢されて以来、番組を盛り上げてきました。番組名にもなった「いらっしゃい!」のギャグや、イスからコケ落ちるリアクションなども人気を博し、2015年7月には「同一司会者によるトーク番組の最長放送」としてギネス世界記録に認定されています。

出典: FANY マガジン
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番組とともに歩んできた桂文枝は、卒業を決めたきっかけについてこう語りました。

「昨年の7月16日に78歳になりました。番組には再婚の方とか、92歳の新婚さんも出られましたが、”新婚“というと若いカップルの方の素の話を視聴者の皆さんは楽しみにしているのではないか思い、それを78歳の私が聞いていくというのはいかがなものかと思い始めていました」

そこには、“時代の変化”もあります。最近ではマッチングアプリで知り合うケースも多く、システムの話などになるとわかりにくくなっていたこと、さらに、番組出演のきっかけとなったABCテレビの澤田隆治さんが昨年5月に亡くなったことに触れ、こう続けました。

「いままで約1万回コケてきましたが、最近は体を気づかうというか、正直、ちょっとコケる回数を控えていました。新婚さんはコケたらすごく喜んでくださるので、本当はもっともっとコケないといけないのですが、あまり無理しないでおこうと……。そういうこともあって、このへんが潮時かな、ということで卒業させていただこうとお願いしました。朝日放送(ABCテレビ)さんは快く受けてくださり、晴れ晴れとした気持ちで春に卒業させていただくことになりました」

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当初は3カ月の予定がギネス級長寿番組に

文枝が司会に就任したのは、27歳の時。当時ディレクターだった澤田さんに声をかけられたのが始まりでした。

「朝日放送には『仁鶴・きよしのただいま恋愛中』などの番組があるけど、新婚がない。新婚カップルを呼んで、君のギャグの『いらっしゃい!』を使わせてくれへんか――ということで、いいですよ、とお答えしました。(当初は)『悪いが視聴率があまりよくない。1月から3月までやってくれないか』ということでしたが、『もうちょっと、もうちょっと』と50年、私を使っていただきました」

番組の代名詞である「いらっしゃい!」のギャグとイスコケについては、こう語ります。

「僕は『MBSヤングタウン』という深夜番組でデビューしまして、その時、人気者になった芸人さんにどんなギャグがあるのか書き出していました。そのころは売れたい気持ちでいっぱいでしたので、そこから『驚く言葉がヒットする』ということがわかって『オヨヨ』というギャグも生まれました。さらに、舞台に出てすぐにギャグがあれば、(観客の心を)掴むのがいちばん早い。ですから、『よくおいでくださいました』という挨拶を『いらっしゃい!』というギャグにしました」

番組内でイスからコケるようになった理由は、「お客さまが素人さんなので、キツイ言葉で(ツッコみが)できないので(こちらが)ひっくり返っていました」とのこと。

「いつからそうするようになったのか覚えていませんが、期待されるようになり、毎回、ひっくり返るようになりました」と振り返り、“相棒”であるイスについては「このまま(番組で)使いたいというのであれば、使っていただければいいと思いますし、もういらないというのでしたら、引き取って家宝にします」と笑顔を見せました。

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5000組以上の新婚カップル

番組では、これまで7代の女性司会者が文枝とともに盛り上げてきました。文枝は「皆さん、それぞれに思い入れがありますが」と前置きしつつ、なかでも印象に残っているパートナーとして、1971年7月から1978年2月まで司会を務めた2代目の梓みちよの名前を挙げました。

「当時は断然、梓さんのほうがネームバリューが上だったので、本当に助けていただいて、世に出していただきました。梓さんには本当に感謝しています。梓さんも(2020年に)お亡くなりになって、それがとても残念です。本当にそれぞれ(女性司会者)の皆さんに感謝していますが、特に同い年だった梓さんに非常によくしていただきました」

これまで2545回の放送に出演した新婚カップルは5000組以上。「この番組は毎回、毎回、収録後に『よかったな、ええ新婚さんをありがとう』とスタッフにお礼を言って、『こんなオモロい新婚さん、おらんで』って言うのですが、次の週になるとそれ以上に面白い新婚さんがいらっしゃる。ディレクターさんたちが日本中を駆け巡って面白い新婚さんを探してくださったので、(番組が)続いたと思います」と番組スタッフをねぎらいます。

出典: FANY マガジン
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番組は4月以降も継続する予定で、新しい司会者については決まり次第、発表するとのこと。

「最後まで元気に、残り少なくなりましたが、意識してコケ倒したいと思います。本当に長い間、ありがとうございました。長く使っていただいた朝日放送さん、天空の澤田隆治さんに心より感謝申し上げます。ありがとうございました」

3月の勇退に向けて改めて番組への感謝を語った文枝は、今後の活動について新たな決意も語りました。

「番組を卒業させていただくということで、体は元気なので、これでやっと落語一筋に頑張れるなと思います。これからは落語一筋に頑張っていきたいと思います」