新M-1王者マヂカルラブリー独占インタビュー! 漫才論争、土下座登場、3年前の因縁…すべてを語る

『M-1グランプリ2020』で第16代チャンピオンとなったマヂカルラブリー(野田クリスタル、村上)。さっそく超多忙を極める2人に、ファニマガが独占インタビューしました! 悲願のM-1王者となった現在の心境はもちろんのこと、3年前の決勝最下位からの葛藤、「土下座」登場の意味、あるいは決勝ネタを巡る「漫才論争」などについて、たっぷり語ったその中身とは!?

出典: FANY マガジン
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「千鳥さんの言葉を支えにやってきた」

――優勝おめでとうございます! 決まってから少し時間が経った現在の心境を聞かせてください。

村上 芸人仲間たちが(優勝が)決まった瞬間に喜んでくれている動画とか、友達が送ってくれた「ワーイ!」って喜んでくれている動画を少しずつ見て、だんだんと優勝したんだなっていう実感が湧いてきました。

野田クリスタル(以下、野田) 僕は、ずーーっと湧いてます。実感だらけです!

――野田さんは優勝が決まった瞬間、頭を押さえながらフラフラと揺れたあと、あふれそうな涙をグッとこらえた姿が印象的でした。

野田 結果発表を待っている間、目の前にある景色を見ていたら、「どこにいるんだ、俺?」と思って立っていられなくなったんです。優勝が決まった瞬間は、(いままでやってきたことは)間違ってなかったんだなと思いました。16歳でお笑いを始めたので……トータルの感想は「長かった!」ですね。2017年の決勝でも爪痕を残そうとは思ってたんですけど、今年はそのときと違った感覚だったというか。とにかく集中力が半端なかったです。

村上 野田は勝つためにどうするか、ギリギリまで考え続けていましたね。

出典: FANY マガジン
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――優勝後の記者会見で、「3年前の最下位はお笑いをやめてもいいと思うくらいの最下位だった」と話していました。野田さんは、村上さんに「もう漫才はできないかもしれない」と伝えたそうですが、その真意は?

野田 3年前のあそこが、いちばんパニックになった瞬間でしたね。あれ(審査員の上沼恵美子さんに「好きじゃない」と言われたこと)が起きたからっていうより、これだけ評価されないのなら無理だな、と。マヂカルラブリーをやっている以上、スタイルは変えられないし、変えようがないので、もう『M-1』の決勝で自分たちが勝つことはない、と思ったんですよね。ただ、村上にそう言うことで、「コント」へ気持ちを切り替えたところはありました。

村上 3年前の予選も、基本的にウケてたんですよ。なのに、決勝でああなるっていうことは、僕らがふだんからどれだけいいネタをやってウケていても、今後、決勝に出られても受け入れられないかもしれない。そう思うと、このままでいいのかなって不安になりました。でも、(お笑いコンビの)千鳥さんが「変えるな、変えるな。そのままやれ」って言ってくれて……。僕は、その言葉を心の支えにしてずっとやってきたところはあります。

野田 (2018年の)『キングオブコント』で決勝にも行きましたけど、その後も『M-1』に出ないっていう選択肢はなくて……だったら、勝ちに行くしかないなと。結局、このモヤモヤを晴らしたいなら、『M-1』で勝たないと終わらない感じがしていました。今年は『R-1』で優勝できたので、『M-1』決勝に行くなら今年しかないな、と。新型コロナの影響もあって『キングオブコント』には出なかったので、『M-1』に超集中して挑みました。

出典: FANY マガジン
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登場の土下座はM-1史上最速の掴み!?

――では、今回優勝できた要因はどこにあると思いますか?

野田 僕は、準決勝まで進んだ2018年、2019年のネタも好きなんですけど、2017年の決勝以降、手堅くウケる漫才ができたっていうのはあったかもしれないです。

村上 2年連続で決勝に行けなかったことによって、そういうネタが温存できたよね。

野田 うん。芸人それぞれ、ネタの中ですごくウケる瞬間ってあると思うんですけど、僕らにも一度ハマったらウケ続けるネタは結構あって。2017年に(決勝でやった)ミュージカルのネタとかそうなんですけど、ずっとウケ続ける状態を経験してる分、変に自信を持ちすぎてしまうというか。けど、そうじゃない、1つひとつのボケで笑いを取りに行けるのが、(今年の決勝ファーストラウンドでやった)「フレンチ」のネタだったような気がします。

――決勝で披露する1本に選んだのも、そういった理由からだったんですか?

野田 『M-1』に向けた会議をするんですけど、そのときにまわりからフレンチのネタはハマらないんじゃないかとすごく言われまして。そう言われる理由もわかるんですけど、ハマらないわけがないんじゃないかと思ったというか。

村上 どっちかっていうと、手堅めなネタだよね。ここのこのボケはすごく信頼度が高いっていうネタがいくつかあるんですけど、フレンチの1発目のボケはまさにそれで。

野田 (決勝2本目の最終決戦で披露した)「つり革」のネタをいきなり見たらびっくりされるかもしれないし、最終決戦でつり革をやれたら優勝できるかもしれないと話して、最初にフレンチのネタをすることにしたんです。けど、『M-1』の予選に出る前、久しぶりに寄席とかライブでやったときに、後半、弱ぇなって気づいて(笑)。

村上 2018年の「敗者復活戦」でやった段階で止まってたんですよね。当時はネタ時間が3分で、だったら逃げ切れるんじゃないかっていう感じで作ったんだと思うんですけど、決勝は4分だから(要素を)増やさなきゃいけないっていうところで後半、弱いのがバレるかもってね?

野田 そう、尻すぼみって言われるかもしれないなっていうのはわかってたんです。けど、最初のボケ1つに強さがあるので、(そこで取った笑いの)貯金で行けるんじゃないかって期待を込めました。まぁ、あのネタがよかったというより、自分の中で大きかったのは(登場シーンの)土下座なのかなって。

村上 漫才じゃない部分の話になっちゃってるじゃん(笑)。

出典: FANY マガジン
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――たしかに、あの土下座で一気に雰囲気が作られた感はありました。

野田 2017年はよそ者の感覚だったというか。変なヤツが現れてお客さんが驚くみたいなことを期待されてた気がしたんですけど、ぶっちゃけると僕ら、そういうのはやりづらいんです。単独ライブとかの(ウェルカムな雰囲気の)ほうがやりやすいし、早めに掴みをやることによって安心しておきたいんですよね。そういう意味で、今年の掴み(土下座)は『M-1』史上いちばん早かったはずです。(土下座しながら)お客さんが見えた瞬間、受け入れてくれそうだなと思いましたし。

村上 2017年で、僕らは『M-1』のお客さんから嫌われたと思ってたんです。でも、嫌われてなかった。優しかった。

野田 まぁ、嫌われていてもいいんですけど、覚えられてないとか、そもそも(3年前の上沼さんとのことが)なんのことなのかわからないとか、いろんなパターンを想定してたんですけど、ぜんぶがいい方向にいきました。

――野田さんの冒頭のセリフ「どうしても笑わせたい人がいる男です」もドーンとウケて、観客も、上沼さんとの対面を待っていたんだなと感じました。まぁ、ご本人は覚えてないとのことでしたが。

村上 あれが本当なのかどうかは一生、語り継ぎたいです。冗談だったかもしれないっていう可能性も、まだ残しておきたいところですね。

すさまじく嬉しかったサンド富澤のコメント

――上沼さんの得点が出た瞬間は、ものすごく気持ちがこもってましたね。

村上 あそこはたまんなかったなぁ。

野田 嬉しさを超えて、自分の抱えていたカルマ(業)が1つ浄化したっていうんですか? そんな感覚がありましたね。あのときの審査コメントでいうと、富澤さん(サンドウィッチマンの富澤たけし)が「野田に慣れた」って言ってくれたのがすさまじく嬉しかったですね。もうなんのネタをやってもいいっていう許可証をもらった感じがしました。

――最終決戦で披露したつり革のネタは今年9月の単独ライブでできたそうですが、完成した瞬間、このネタで『M-1』でいけるなと確信しましたか?

野田 思いました。単独ライブの最初にやるものが、『M-1』でやるネタになることが多いんですよ。それ以降の漫才はどんどん乱れていくので、できないというか。

村上 単独ライブの最初に、いちばんわかりやすいネタをやってるところはあるよね。5、6本目のネタなんて、『M-1』では絶対にできない(笑)。けど、あのネタはすぐに完成した気が……。とりあえずやってみたら、すぐこれで『M-1』いけるねってなったと思います。野田がしゃべらないネタってほかにもあるんですけど、その中でもあのネタはボケる場所がしっかりあるというか。

野田 意外にやりすぎてないよね。ほかのしゃべらないネタは、おふざけが過ぎるものが多いけど。

村上 うん。だから、笑いやすいと思います。僕も、車内販売が来るとかポイントがあるので、ツッコミやすいですし。最終決戦は、いちばんいい感じでできたよね。

野田 最初にある転び続ける場面って、お客さんの反応も僕の動きも、日によって違うんです。で、これだなって思ったときはいい感じになることが多いんですけど、最終決戦もいけるなって思えたので、ここがウケるならこことここもウケるっていう先の未来がやりながらちゃんと見えてました。

村上 僕は(ファーストラウンドの)貯金もあったと思います。お客さんがすごくあたたかかったので。

出典: FANY マガジン
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――巷では、つり革のネタが漫才かどうかという議論が盛んになっています。

野田 すげぇ上から目線だと思われる方がいたら申し訳ないんですけど……、楽しいですね(笑)。だって、いままで漫才にかかわってない人たちが議論してるんですよ?  みんなが漫才の定義について考えることって、いままであったのかなって。

村上 僕らも知らないですもん、なにが漫才かなんて(笑)。

野田 さっき話したように、僕らはあのネタですら単独ライブの最初にやる、わかりやすいネタなんです。あれが漫才じゃないなら、僕らの大体のネタは漫才の5合目にすら立ってないですよ。ただ、漫才じゃないっていう人を否定しているわけではないです。そう思う人もいるだろうって思うだけです。漫才について考えるっていうのはすごく素敵なことですし、あの審査員の方々ですら結論が出ていないことなので、一生、議論され続けることなのかなって。

村上 解釈の割れ方が、票の割れ方にも表れたと思いますね。

来年は『キングオブコント』獲ります!

――優勝会見で、野田さんは「お笑い王」になると宣言しました。来年狙うのは、やはり『キングオブコント』優勝ですか?

野田 そうですね。今年は出なかったこともありますし、来年はたぶん過去最高に、嫌になるほど漫才をすることになりそうなので、単独ライブではコントをやろうかなって。そこでいいネタができたら、ワンチャン(で優勝が)あるのかなって思いますね。

村上 僕は休みたい気持ちが山々なんですけど、この『M-1』を獲った次の年ってやっぱりチャンスですよね。どうせ3~4年後に挑戦するなら、来年出ておいたほうがいいと思うので、やるというならやります。

野田 獲るって宣言して、いまのところはぜんぶ獲れてるんで、来年は『キングオブコント』獲りますよ! 冗談じゃなくね!!

出典: FANY マガジン
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――M-1審査員の中川家・礼二さんからは、漫才をやり続けてほしいというメッセージが送られていました。来年はメディアへの出演も増えそうですが、今後についてはどんなふうに考えていますか?

村上 漫才は、もちろんやっていきます。

野田 そうですね、やり続けないわけはないです。

村上 メディアの仕事は……まぁ、1つひとつね?

野田 はい、目一杯やるだけです。身を削る番組、身をえぐられる番組に出たとき、お互いがどう殻を破っていくのか。早めに破らないと、ただ賞レースで優勝しただけのヤツになっちゃいますから、そうならないようにやっていきたいですね。

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