ネタ作り、ライブ、テレビ、YouTube……さまざまなシーンで、芸人たちを陰で支えている“作家”と呼ばれる職業の人たちがいます。第一線で活躍する芸人たちは、どのように作家と仕事をしているのでしょうか。芸人×作家のスペシャル対談シリーズ『芸人と、作家と』。今回は引き続き、ぼる塾(あんり、きりやはるか、田辺智加、酒寄希望)と、彼女たちを支える作家・みよしゆうすけが登場。ぼる塾がひとつにまとまった“ある事件”について語られました。
ひとつになった“ぼる塾会議”
――仲良さそうな5人ですが、モメることってあるんですか?
あんり 昨年末に初めて会議しましたね。去年は忙しいなか、2カ月に1回、単独ライブを打っていたんですよ。当時、私も新ネタを作るのにいっぱいいっぱいになって、ふだんの劇場出番では、何度もやったネタをやっていました。それをはるちゃんが気づいて、みよしくんと酒寄さんに相談していて……。
はるか 忙しくさせていただくなか、自分たちで「劇場に出る」って決めたのに、ずっと同じネタをやるってどうなんだろうって。お客さんにはおカネを払ってもらっているから申し訳ないし、ぼる塾の可能性を見てもらえるチャンスがあるのに、それを無駄にしちゃっている気がして……。私たち、面白いのになんで挑戦しないんだろうってずっとモヤモヤしていました。
あんり ある日、みよしくんとZoomで新ネタづくりをしていると、はるちゃんから(同じネタばかりをやっていると指摘する)LINEがきて。私が「なんだコイツ!」って感情的になっちゃったんですよ。般若みたいな顔をしている私に、みよしくんが「待ってください。はるかさんはいま伝え方を間違えています。こんなことを言いたいわけじゃないんです。僕が話し合いの機会を設けますので、今日はあんりさんはLINEしないでください。後日、冷静になってから!」って。後日、みよしくんと酒寄さんが話し合いの機会を作ってくれました。
会議をする日、みんなに自分が何を頑張っていたかを聞いてほしくて、褒めてほしくて、頑張ったことをノートに書いて行ったんですよ(笑)。でも、みんなはそんなことを話したかったわけじゃない。来年のぼる塾をどうするか話をしたかったのに……。みよしくんがはるちゃんの言いたかったことを冷静に伝えてくれたから理解できたし、“頑張らなきゃ”というところまで前を向けたのは、みよしくんがいてくれたおかげ。大きい存在だなって思いました。
――あんりさんの頑張りについては、みんな認めていたんですよね。
みよし そうなんです。仕事の姿勢に関して、あんりさんには「こうしたほうがいい」って言ったことないんですけど、ネタに関しては中途半端にしちゃいけないって思ったんですね。嫌われてもいいから、心を鬼にして、あえて傷つけるつもりで、(この時は)初めて厳しく言いました。
あんり 結成当初、はるちゃん、田辺さんに注意することも多かったんですけど、注意するほうも辛くて。自分ができていないことが山ほどあるのに、それを棚にあげて言うから辛いんですよ(笑)。(みよしくんたちに)言われて傷つきはしたんですけど、そのなかに“言わせてしまっている”っていう傷つきもあって……。きっと、みんなも辛いんだろうなと。
恥ずかしい話なんですけど、帰り道、“私がいまメンバーに求めていることは、彼氏に求めていることなんだ”って気づいたんです(笑)。みんなは“これからのぼる塾”を考えていたのに、私は“これまでのぼる塾”を褒めてほしかった。でもそれは、一緒に前に進んでいくメンバーに求めるべきではない。自分が間違っていたことに気づきました。みよしくんが心を鬼にして、何ひとつ隠さず話してくれたことで伝わりました。
――その会議が、ぼる塾にとって大きかったんですね。
はるか 話し合いの場で、劇場のネタを見てくれている酒寄さんが「いまのぼる塾はネタが死んじゃっている」ってはっきり言ってくれたんですよ。それがすごく嬉しかったです。酒寄さんとみよしくんのおかげで、いい会議ができたなって。2人に感謝しています。
田辺 あんりは休みの日でも、酒寄さんとみよしくんと休まずにネタ作りしていて、頑張っているのはわかっているぶん、難しい問題でしたね。
はるか 田辺さんと一緒に住んでいるんで、お酒が入ったときに田辺さんにも(悩みを)言っちゃってたんですよ。田辺さんがいちばん辛かったと思います。
田辺 辛くはないよ。誰が正解で誰が悪いことでもないし、どうしたらいいのかわからなかったんですよ。(会議をきっかけに)言いたいことを溜め込まずに言える環境になってよかったです。
集大成となる5大都市ツアー
――みよしさんから見てぼる塾のメンバーそれぞれが成長したと感じるところを教えてください。
【あんりについて】
(ブレイクし始めたころ)悩みながらテレビやロケに出ていましたけど、それが今では若手芸人とは思えないパーフェクト芸人になったなって思います。フリだったり、先輩芸人さんに物おじせずにツッコめるところだったり、成長しているなって。あと、昔はもっと怒りっぽかったと思うんですけど、最近、うまくコントロールしているなって思いますね(笑)。
【はるかについて】
昔は何を考えているかわからなかったし、自分から行動することはなかったんですけど、今は自分でピンネタをやったり、1人でYouTubeを継続してやったり、いちばん頑張り屋で成長したなって思います。あと、ネタを見ていても、いちばんうまくなったなって思いますね。新ネタをおろしたときは棒読みの部分もあるんですけど、何カ月か経ってネタを見てみると、話し方とか表情とかすごくうまくなっていて、努力しているんだろうなってわかります。
【田辺について】
自分が好きだと思うものをちゃんと仕事にしているところですね。もともとスイーツやアニメは好きで話せるのは知っていたんですけど、それをちゃんと笑いに変えて良さを伝えるのがうまくなったなって思います。しかもプレゼンするときは、しっかり準備もしていくんですよ。これは、猫塾さんのときには見られなかったもの。田辺さんから能動的に動き、準備して頑張るっていうのは、昔では考えられないです。
【酒寄について】
もともと引っ込み思案の方なんですけど、最近はアグレッシブになったと思います。3人がテレビとか劇場に出て成長されているなか、酒寄さんはその機会がないので、話すことに対して、どうしても遅れてしまう部分があるんです。でも、酒寄さんなりにYouTubeのラジオに自ら取り組んだり、トークライブ・ネタライブでやりたいことを発信したり、徐々に“自分を出すこと”が出来てきているなって。4人でいるときのような雰囲気が、(表でも)出るようになったら、ぼる塾さんはもっと強くなるんじゃないかなって思います。
――4月から始まった単独ライブ『ぼる塾初5大都市ツアー~オードブル~』へ向けた意気込みを聞かせてください。
あんり 結成2年間の集大成。やってきたことを無駄にせず、生かすライブにしたいなと。成長できた面をお客さんに伝えられるライブになるんじゃないかなと思います。あとは全国5大都市を回るので、その土地の美味しいものは確実に食べたい。それが裏テーマでもあります(笑)。
はるか ぜんぶの劇場で爆笑の渦を起こして、「ぼる塾やっぱり面白い」ってみんなに思ってもらいたい。賞レースでもいい結果を出せるように頑張ります。
田辺 なかなか東京以外でネタをやることがないので、5大都市の会場に来る方々に会えるのが本当に楽しみです。「私たちは元気だよー!」っていうのを伝えたいですし、会いにきてほしいです。
みよし 去年は2カ月に1回、単独ライブをやっていて、どちらかというとネタを試す感じでした。そのとき、広く浅く作っていたものを、今回のツアーは、より深度を深めることを目的としているので、いままででいちばん面白いぼる塾さんを見せられると思っています。ちなみに「オードブル」っていうタイトルは、きりやさんが思いついたものです。
あんり いままでYouTubeで作ってきた料理を単独(ライブ)名にしてきたんですけど、今回は“集大成”ということで、一時は「お重」になりかけてね。
みよし あれは本当に危なかったです!(笑)
あんり 「いい案がないと『お重』しかないよ!」って脅していました(笑)。みんな、案がでなくて困っているなか、はるちゃんが「オードブル」って出してきて「それだ!」って。泣きそうな顔していたみよしさんが本当に安堵していましたね(笑)。
ぼる塾を面白くする“第5のメンバー”作家・みよしゆうすけのお仕事…SP対談【芸人と、作家と①】はこちら
公演概要
『ぼる塾初5大都市ツアー~オードブル~』
日程:
4月9日(土)福岡(よしもと福岡 大和証券/CONNECT劇場) 会場17:45 開演18:00 終演19:30
4月23日(土)名古屋(大須演芸場) 開場17:30 開演18:00 終演19:30
5月14日(土)北海道(サツゲキ) 開場17:30 開演18:00 終演19:30
5月21日(土)大阪(森ノ宮よしもと漫才劇場) 開場18:30 開演19:00 終演20:30
5月27日(金)東京(ルミネtheよしもと) 開場18:30 開演19:00 終演20:30
出演:ぼる塾 ※酒寄の出演は東京公演のみを予定
チケット:配信2,000円 ※会場は全席満席 5月27日の東京公演のみ配信あり
FANYオンラインチケット(配信)はこちらから。