日常にはさまざまな「音楽」が流れています。ときには勇気づけられたり、ときには感動の涙を流したり……誰もが思い出の中に流れる曲を持っているはずです。
ということで今回、音楽に関わりの深い芸人にご登場いただき、音楽について話を聞く新企画がスタートすることになりました。その名も「笑いと音楽 ラフ&ミュージック」。初回のゲストは、POISON GIRL BAND・吉田大吾、グランジ・遠山大輔、サンシャイン・坂田光の3人です。音楽に触れたきっかけや、ライブやフェスの思い出など心ゆくまで語ってもらいました。
3人は、TOKYO FMの10代に向けた人気番組「SCHOOL OF LOCK!」の歴代パーソナリティ。「学校」に見立てた番組では、「校長」「教頭」と呼ばれてきました。熱い番組と同様、熱い音楽談義となった今回の座談会。ご案内は、芸人ライターのビスケッティ・岩橋淳です!
初めて買った思い出のCDは…
――お集まりいただきありがとうございます! この3人と言えば、共通するのはラジオ(SCHOOL OF LOCK!)ですよね。
遠山 あっ、坂田の前でその話は……(笑)。
坂田 すみません。僕はおふたりと比べると雑魚すぎなので……恥ずいです。
遠山 そんなことないよ! 3代目校長として、色んな事抱えながらもちゃんと務めあげていたよ。
――みなさまは番組ではどのような立ち位置だったのですか?
遠山 僕が2010年から10年間、2代目校長をやらせてもらってて、その後が坂田。
吉田 オレは遠山校長のときの教頭だった。2012年からかな。
遠山 2年半くらいですかね。ずっと2人で毎日、やらせてもらってました。その前の教頭がやしろさん(マンボウやしろ)でしたね。
――みなさま、初めて買ったCDって覚えてます?
吉田 小6のころ、長渕剛さんの「しゃぼん玉」(1991年リリース)だったな。家にCDが聴ける機械がやってきて、それで買ったのかな。当時、ドラマ(フジテレビ系の同名ドラマ)の主題歌だったし、好きだったから。
遠山 僕は小5のときの米米クラブの「浪漫飛行」(1990年リリース)ですね。僕は、まわりのみんなより「文化的な素養があるんだぞ」っていうのを言いたいがために買いました。
――どういうことですか?
遠山 小学校のときの運動会で、浪漫飛行の曲に合わせて踊るっていうのがあって。そこでみんなに「はいはい、この曲ね。知ってますわ!」っていうのを言いたかったので、その話が出た日に買いに行って、めちゃくちゃ聴きました。
坂田 僕は中1でJUDY AND MARYのベストアルバムですね。たしか解散(2001年)する前に買って、それで「解散するんかい!」でまたベストアルバムが出て。そしたら、そっちのほうが曲数多くて、マジでふざけんなよって思いました(笑)。
遠山 いいだろ! そういうことあるよ!
若手のころにお客さんからもらっていまだに…
――MDでマイベストとか作って、それを友だちに貸したりとかしてました? 僕はよくやっていたんですけど。
吉田 オレが芸人2、3年目くらいのときに、ファンの方にMDで曲をまとめたものもらったりしてたよ。そのなかで、すごい洋楽好きでおしゃれな人がいて、その人からもらったギターの形のキーホルダー、いまだに付けてるよ。
――え! いまだにですか?
吉田 そう。ずっと付けてる。その人はTHE LIBERTINES とかTHE STROKESも早いうちから聴いてて、FUJI ROCKの良さとかも教えてくれて。鮮明に覚えてる。
坂田 まだ付けてるってことをその方が知ったら、すごい喜ぶと思いますよ!
吉田 だといいけどね。いま何してるんだろう……。
――フェスの話が出ましたが、みなさま、音楽フェスは行きますか?
吉田 最初に行ったのも、よく行くのもFUJI ROCKかな。雰囲気も好きだし、会場をウロウロして、知らないバンドのステージの近くを歩いてて聴こえてきた曲がカッコよくて、それで聴くようになったりして。そういう楽しみ方をしてる。
遠山 僕が最初に行ったのは1998年の東京・豊洲でやったFUJIROCKで。でもね、当時、オレ、銀縁メガネのダサい野郎だったから、ロックフェスになんて入れないと思ってて。
坂田 そんなことないでしょ!
遠山 夕方ごろに入れて、そのときIggy Popがやってて。お客さんをガンガンステージに上げて大騒ぎしているのを観て、「フジロック最高だな!」ってなった。
――スゴいですね、それ!
遠山 それで、翌日はオレの大好きなTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTが出るんだけど、チケットを持ってなかったから会場に音漏れを聴きに行ったの。オレみたいな人たちが200~300人くらい炎天下のなか、座ってたんだよ。
――それって、ミッシェルが演奏中断したやつですか?
遠山 そう! まさにそれ! 止まるたびにお客さんの叫び声が外まで聞こえるの。でも、駐車場のみんなは何が起きてるかわからないから、全員で顔見合わせながら「どうなってんの?」って。それからFUJIROCK貯金を毎年して行くようになった。
坂田 僕が好きなフェスは、やっぱりBAYCAMPですかね。毎年行かせてもらってて。
遠山 坂田が好きそうなメンツの方々がいっぱい出てるもんね。
坂田 僕が思い出に残ってるのが2018年のときで。竹原ピストルさんがメチャクチャよくて泣きながら聴いてたんです。そしてその次が泉谷しげるさんで、真っ暗ななか、「おい!ピストル! 俺の40分もお前にやるよ!」って言ってたのがメチャクチャ盛り上がって。BAYCAMPはステージが近いから、そういうやりとりもあって楽しいんですよね。
――みなさま、バンドやってたことありますか?
遠山 中学のときにユニコーンとLUNA SEAのコピーバンドやってました。ちなみに、そのときも銀縁メガネ。ドラム叩いてるとメガネが落ちてくるのよ。だから叩きながらメガネを直すドラマーでした。
吉田 軽音部とかには入ってなかったの?
遠山 僕は入っていなかったんですけど、僕が通っていた(市立札幌)平岸高校は、2010年の閃光ライオット(SCHOOL OF LOCK!など主催の10代限定のロックフェス)でグランプリを獲ったバンド、THE★米騒動が軽音部出身でした。僕が卒業した後からけっこう盛り上がってましたね。
吉田 中学のときから、というのは早いね。オレのときは、高校のときに文化祭で軽音楽部の人たちがバンドやってて、高1でバンドやる人いるんだなって思ってた。
――遠山さんはオリジナル曲とか作らなかったんですか?
遠山 挑戦はしたんだけど、なにも浮かばなかった。あと恥ずかしい。やっぱり銀縁メガネに縛られていたから。いまでも覚えてるのが、1998年くらいからナンバーガールの向井(秀徳)さん、くるりの岸田(繁)さん、その後にアジカン(アジア・カンフー・ジェネレーション)の後藤(正文)さんが出てきて、「メガネかけてる人でも歌えるんだ!」って思って。マジで当時は(メガネをかけているのは)大江千里さんくらいしかいなくて、衝撃だったんだよ!
――坂田は、バンドとかはやってなかった?
遠山 坂田はバンドやってそうなのにね。
坂田 僕もやってなかったです。でも1曲だけ曲を出しました。(さかた校長として)「心臓の音が聞こえたら」(2021年8月リリース)という曲を。ラジオのおかげですけど。
吉田 おお! あれは誰が曲作ったの?
坂田 ニガミ17才さんが作ってくれて。ニガミさんのスタジオで録音したんですけど、何回も同じ曲を歌うのがメチャクチャ恥ずかしかったです。
吉田 曲ができてて、それに歌詞を付けたの?
坂田 いや、歌詞が先ですね。僕が銀杏boyzが好きだから、邦楽ロックみたいな感じの曲にしてくれて。相談しながら作っていきました。
遠山 メチャクチャいい曲だよね。坂田っぽいし。
初めてのライブはまさかのあのロックバンド
――初めて行ったライブは覚えてますか?
坂田 僕はゆずでした。中2くらいのときに友達6人くらいで観に行きました。「夏色」が生で聴けたのがスゴくよかったです。
遠山 オレは奥田民生さんの「イージュー★ライダーツアー」ってやつを観に行った。
吉田 たぶんだけど……ザ・ローリング・ストーンズが最初だった。
――え!? ストーンズが最初ですか?
吉田 2003年に来日してて。そのとき、まだ実家に住んでてモジモジしながら「来てるのか……行きたいな」とかブツブツ言ってたら、お母さんに「そんな言ってるなら行ってきな!」って怒られて。それで当日券で入って観に行ったね。
遠山 ブツブツ言ってたの、お母さんからしたらすげぇムカついたんでしょうね。
――最近は、どなたかのライブを観に行きましたか?
遠山 この前、Mr.Childrenのコンサートに行ってきて。素晴らしかったです。5年ぶりに行ったんですけど、知ってる曲しかやってなくて。セットリスト考えるの大変だろうなって。
吉田 あれだけヒット曲があるとね。
遠山 中盤くらいまでずっと“本編ラスト”みたいな感じなの。何曲でも思い浮かぶでしょ? それが散りばめられていて。お笑いで言うと、代名詞になるネタがバンバン出てくるみたいな。
坂田 (セットリストを確認しながら)うわぁ……これ、すごいな。
遠山 30周年のライブだから、全員が最後にひと言ずつコメントいってたんだけど、ギターの田原(健一)さんが「これからも、みなさんの生活に少しでも近づけるような音を鳴らしていきたいです」って言うの。ふつうなら「背中を押すような」とか「勇気を与えるような曲を作りたい」みたいなこと言うと思うんだけど、生活に近づけるっていう感覚で活動してるんだなって思ったのがすごくよかった。
自分の単独ライブでやろうかと思った
吉田 「生活」と言えばなんだけど、小沢健二さんは、すごく残酷に「生活」という言葉を使っていて。
――残酷に生活という言葉?
吉田 ライブっていうのは非日常なわけじゃない? ふだんの生活での仕事とか、抱えているストレスとかを、いったん置いて観に行くでしょ。それでライブの最後にオザケンが「ライブの終わりはカウントダウンで終わりましょう」って言うの。そしたら「終わらないでー!」ってファンのみんなが言うのね。
――現実に戻ってしまうから。
吉田 それで「10……9……」ってカウントダウンしていって、3、2、1で「生活に戻ろう」で暗転して。残酷だなぁって思った。
遠山 めちゃくちゃカッコいい! オレ、鳥肌立ちました!
吉田 その前にちゃんと言ってるんだけどね。「戻っても大丈夫だから」って。こんなにも心強い「大丈夫だから」って言葉はほかにないなって思った。この終わり方、単独ライブでやろうかなって思ったくらい(笑)。
坂田 ちょっと話変わるんですけど……。僕、ジャネット・ジャクソンのライブを観に行ったことがあるんです。けっこうな値段したんですけど、席もスゴくいいところで。でも、開演時間になってもぜんぜん始まらない。余裕でめちゃくちゃ押してるんです。
――海外のアーティストで、そういう話よく聞くね。
坂田 やっと始まったら、ステージの幕に丘みたいな映像が映るんです。そこにカラスが飛んできて、それがどんどん集まり始めてでっかいカラスみたいな型になるんです。その後、それがフワーっと人型になって。そして幕が降りたらジャネット立っている。
――いい演出!
坂田 そしたら会場が絶叫みたいな歓声に包まれるんですよ。「うわーっ!」て。それで、マイケル・ジャクソンが直立して微動だにしない、みたいなパフォーマンスあるじゃないですか?
――歓声が鳴り止まない有名なやつだね。
坂田 それのオマージュなのか、ジャネットもじっと動かなくて。会場はものすごい歓声なんですけど、僕だけ爆笑してました。
カッコつけてるわけじゃないんだけど…
――いま、いちばん聴いているアーティストはいます?
吉田 最近のアーティストではないけど、ずっとくるりの「ロックンロール」と氣志團の「鉄のハート」をループして聴いていて。
つい最近、くるりと氣志團のツーマンライブがあって、それ観に行ってきたんです。氣志團は自虐で「俺たちにはワンナイトカーニバルしかない」みたいなことを言ってて。それで俺たちも新曲を作ったと言って、「ワンナイトフォーゲル」っていう氣志團の「ワンナイトカーニバル」と、くるりの「ワンダーフォーゲル」を混ぜた曲やったの。たぶん、そこでしかやらないんだろうけど、すごい完成度の高い曲作ってて、スゴいなって思った。
坂田 僕は、時速36kmですね。最高すぎるバンドです。それとカネコアヤノさん。この前、武道館のライブを観に行かせてもらったんですけど、素舞台にバックバンドの皆さんとスッと出てきていきなり曲をやり始めて。カッコ良すぎましたね。
遠山 マジでこれ、カッコつけてるとかじゃないんですけど、最近、ずっと聴いてるのがイギリスのラッパーの方で……。本当にそう思われたくないんだけどさ!
坂田 遠山さん。そのアーティストによります。
遠山 いや、本当そうなのかもしれないんだけど! Little Simzっていう女性のラッパーの方で。すごく聴いてて気持ちがいい。めちゃくちゃカッコいい。
その感覚が僕のひとつの軸になっている
――では最後に、僕が個人的に聞きたいことなのですが、この曲を聞くと感情が動く、みたいな曲はありますか?
遠山 僕は奥田民生さんの「イージュー★ライダー」ですね。それを聴くと、当時、河川敷で野球をみんなでやりに行った映像が浮かぶの。それで涙流して。で、SCHOOL OF LOCK!の最後の放送でかかったのもその曲で。その思い出もたくさん出てきて。そのあとYouTubeでMVを観てたときに、コメント欄に「遠山校長でこの曲を知れました」っていうコメントがあって、それを観てまた涙が出てしまって。
――遠山さんの人生のなかで大事な曲になってるんですね。
坂田 コンビ名だからとか思わないでほしいんですけど、andymoriの「サンシャイン」て曲があって。〈いつかその時が来たら この歌を思い出してくれ 同じポイントで笑えた時 うまくやれてる気分になったよ〉っていう歌詞があるんですけど、それが好きすぎて。
友達とか、恋人とか、相方ももちろんそうなんですけど、ケンカしても同じ感覚で笑えたりしていたら、だいたいのことが許せてしまうんです。その感覚が僕のひとつの軸になってるというか。とても明るい歌なんですけど泣けちゃうな。
吉田 歌詞を自分で勝手に「こういう解釈なんじゃないか」と思って聴いてると、泣きそうになるなって曲があって。それがザ・クロマニヨンズの「流れ弾」って曲。ヒロトさんが当時、話してたんだけど、若い子たちに向けて、犯罪に手を染めたりすると後々自分に返ってきちゃうから、みたいなことを歌ってるのかなって思って。
その曲で、〈花壇に埋めた涙のビン、殺意のかげを抱いたナイフ、それは全部俺がもらう。ヤバい仕事はお手のもの。花壇に咲いた青い薔薇の花言葉を君に全部あげる〉って歌っていて。青い薔薇の花言葉が「夢叶う」で。暴発しそうな若い子たちに向けたメッセージの曲なんじゃないかな? って思ったら涙が出てきてしまって……。ぜんぜん違ったらスゴい恥ずかしいけど(笑)。
――みなさま、素敵な話をありがとうございました!
遠山 すみません、本当に関係ない話で申し訳ないんですけど。ずっと気になってたことがあって……。吉田さん今日、ずっと鼻毛出てました。
吉田 え! 言ってよ! これ写真とかも載るんでしょ? 「絶対に写真拡大しないように」って書いておいてね!
――わかりました!(笑)
以上で座談会は終了です。終始、音楽愛にあふれた時間となりました。座談会に参加していただいた3人の思い出のなかにも、さまざまな音楽が流れていました。この記事に載せることができなかったお話も、たくさんあります。音声にして読者のみなさまにお届けしたいくらいです。盛りだくさんでした!
以上、芸人ライターのビスケッティ・岩橋でした。
公演概要
グランジ遠山の「Dちゃんと喋ろう!」
日時:6月11日(土) 開場19:30|開演19:45|終演20:45
会場:ヨシモト∞ドーム・ステージⅡ
出演者:グランジ遠山、オズワルド畠中
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男のキャデラック会議室
日時:6月18日(土) 開場13:30|開演13:45|終演14:45
会場:ヨシモト∞ドーム・ステージⅡ
出演者:グランジ
FANYチケット(現地)はこちらから。
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365CONTE~キングオブコント優勝する人生~
日時:6月25日(土) 開演21:00|終演22:00
会場:ヨシモト∞ホール
出演者:サンシャイン ほか
チケット発売:6月1日(水)10:00~
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FANYオンラインチケット(配信)はこちらから。