人気バラエティ番組『ぐるぐるナインティナイン』(日本テレビ系)の恒例企画『おもしろ荘』が、年末年始に年をまたいで放送されました。これまでも多くの芸人が羽ばたき、若手芸人の登竜門となっているこの番組に、今回は大阪・よしもと漫才劇場(マンゲキ)に所属する生姜猫(川﨑、ケージュ、カンサイ)が出演して2位に! 芸歴3年目にして『M-1グランプリ2025』準決勝にも進出した、いま勢いに乗る3人に、独占インタビューを敢行しました。

「天海祐希さんが笑ってくれたんです」
――『おもしろ荘』の収録はいかがでしたか?
ケージュ 楽しかったです。緊張はめちゃしましたけど、「それではよくないな、楽しんだほうがいいな」と思って。
川﨑 だいぶ近くであのちゃんを見る機会があって、めっちゃいい方で、僕らのノリにも乗ってくれ、一気に好きになりました。
カンサイ 「ヤバいことになるんちゃうか?」と相当不安やったんですけど、途中からだいぶ楽しくできました。芸能人の方々も巻き込むノリがあったんですけど、皆さんやさしく、すごく協力してくれたおかげです。売れてはる方々ってみんな、すごいなという感じでした。
川﨑 いい人ばっかりでした。
――MCのナインティナイン(岡村隆史、矢部浩之)は大先輩ですね。
カンサイ 僕ら、めちゃくちゃやったと思うんですけど、うまくしてくださって。何年くらい先輩なんやろ?
川﨑 30年くらい先輩ちゃう? もう、父親世代ですもんね。
カンサイ あと、天海祐希さんの声がめっちゃよかったです。収録の最後に映画の宣伝をされていたんですけど、めっちゃ引き込まれました。プロの、宝塚の舞台に立ってきはった人の声。すごかったよな?
川﨑 天海祐希さんが「ぜひ見てください」って言い終わったあと、若手芸人が「うぉ~……!」ってどよめいたんですよ。ほんますごいっす。
カンサイ 本物や! ってなったなぁ。
川﨑 そんな、トップ中のトップにおられる天海祐希さんが笑ってくれたんです、僕らのネタで。「よかった!」ってめっちゃ安心しました。

小学2年生からの幼なじみトリオ
――3人は小学2年生からの幼なじみだそうですね。3人で一緒にお笑いの世界に入ろうと決めたんですか。
川﨑 たぶん、3人とも別の時期やと思います。
カンサイ 「3人でやろう」って決まったんは高3の最後です。それまでいろいろあって。小学校のお楽しみ会の出し物でコントをしてたんですけど、この3人じゃなくてそれぞれグループで遊び感覚でやってまして、そのときノリで「芸人になろう」みたいなことを言ってました。
で、中学に上がると同時にケージュと川﨑は「ヤンチャなほうがカッコいい」みたいな時期に突入します。僕はずっとお笑いが好きで、DVDを借りて『(ダウンタウンの)ごっつええ感じ』を見たりして、そのころにNSC(吉本総合芸能学院)に入ろうって決めるんですね。
――早くから決めてたんですね。
カンサイ はい。で、高校に入学しまして、高校は全員バラバラなんですけど、僕はずっとNSCに行く気持ちは変わらず。そのころ、ケージュと川﨑は同じ通信制の高校に編入するんですけど、そのタイミングで将来の話になり、小学校のころを思い出して「お笑いするのもアリやな」ってなって、「そういえばカンサイも言ってた」というので連絡が来て、「3人でやろう」ってなった、という感じです。
川﨑 いまのは“カンサイ視点”の話です。僕視点の話では、高2まで将来のことは考えてなくて、高2の最初にケージュから「カンサイが芸人になるって言ってるぞ。オレらもなろうや」と誘われました。
――ケージュさんから?
ケージュ なりたかったんです。
川﨑 僕は大学進学を考えてたんで、「わかった。留年したらやるわ」って言ったんですよ。で、留年したから芸人になりました。でも、お笑いは好きなんで、進級テストも「でもオレは芸人になるしな」みたいな気持ちで受けてました。

――最終的にはケージュさんが集合をかけたかたちですか?
ケージュ そうですね。「オレら3人でお笑いやろうや。ダウンタウン超えようや」って。
カンサイ あ、そのLINE来ました。「お前とは無理」って返しました。
川﨑 エグっ(笑)。
トリオ名はカンサイが好きなアーティスト由来
――「生姜猫」という名前の由来は?
川﨑 原案はカンサイです。
カンサイ 僕が好きなTOMOOという女性アーティストがいるんですけど、その方の『Ginger』っていう曲がめっちゃ好きで、歌詞に 「ジンジャーキャット」という言葉が出てくるんです。この響き、めちゃかわいいなと思ってて、英語表記にしたらかわいいから、トリオ名にして将来的にグッズ化したら売れるんじゃないかと思ったんです。
ケージュ 考えすぎや。
カンサイ NSCのころは3人でルームシェアしてて、「ジンジャーキャットにしよう」って言うと、「ちょっとダサいかも」ってなって。そしたら、そこに居合わせたもうひとりの幼なじみが「ジンジャーキャットを直訳して、『生姜猫』でええんちゃう?」と。
川﨑 「それ、いいな!」ってなりました。
――なるほど。ケージュさん、川﨑さんは本名なんですね?
ケージュ・川﨑 はい。
――カンサイさんは?
カンサイ 芸名です。
――由来を聞かせてください。
川﨑 深い理由があるかと思いきや……。
カンサイ ケージュがめちゃ適当に付けた名前です。
ケージュ 「本名を使いたくないから芸名にしようと思ってるねんけど、“センス系”やと思われるような名前、ない?」ってキツいこと聞かれまして、「カンサイとかででええんちゃう?」って言ったら「それいい」ってなりました。
カンサイ しっくりきたんで。めっちゃいい。

――ネタづくりはどうしてるんですか?
川﨑 基本、カンサイが100考えてます。
カンサイ 僕が全部つくるパターンか、アイデアだけあってケージュとしゃべって考えるパターンがあります。それでつくって、3人で合わせたときに、川﨑の意見も取り入れて最終的に決める、みたいな感じです。
――コント、漫才どちらもしますね。
カンサイ 割合的にはコントがめっちゃ多いです。正直、3人ともコントのほうが好きで。漫才、まだ難しいですね。
――というと?
カンサイ 漫才は、人としての深みがいりますね。「その人が言ってるからおもしろい」っていう要素がめっちゃいる。僕たちはまだ若いし、とくに僕とケージュの“顔”がエグいぐらい若すぎて、説得力がないんです。たぶん、同じことをしゃべっても、僕らが言うよりおっさんが言うほうが絶対おもしろいんです。
――現状は、コントのほうが3人の持ち味を発揮しやすいですか?
カンサイ そうですね。あまり年齢が関係ない設定もできるので。M-1準決勝でも感じたよな?
川﨑 技術もある、内容もおもしろい、そしておっさんで説得力もある(という要素が必要)。
カンサイ (M-1の)準決勝で、僕らの前の出番が、(決勝で)準優勝したドンデコルテさんで、渡辺銀次さんがとんでもない迫力で熱弁して爆ウケで。そのあとに3人のガキが出てきて「何やおまえ!」とやっても、なかなか難しかったです。
川﨑 若さは武器でもあるんですけれどね。
カンサイ だから漫才では、若いいまだからこそできるネタをするしか太刀打ちできないですね。
川﨑 『M-1』は吸収することも多くて、めっちゃいい経験になりました。

ケージュは豪胆、カンサイは発想力、川﨑は“客観視の男”
――小2から一緒にいる3人ですが、どんな関係性ですか?
カンサイ 明確に、誰かがまとめてるっていうのはないです。僕がめっちゃリーダーしてるわけでもないし。
川﨑 それがいいんかもしれないです。リーダーとかいない。「こうするわ」と決めるヤツがいなくて、いったん「これ、どうする?」って聞いてみます。
カンサイ オレから見て川﨑は、「芸人やから、こういうネタがやりたい」みたいな思想がまったくないんです。俯瞰で見て「お客さんに、本当に笑ってもらえるのはこれや」っていうのが、いちばんわかってる人間やと思います。いい意味で芸人っぽいくないというか、その感覚を持ってるので、賞レースのネタ選びをするときは川﨑の意見を採用することが多いです。意外に“客観視の男”です。
川﨑 ケージュは、まだ何者かわからんところがある(笑)。
カンサイ わからないんですよね(笑)。つかみどころがないです。
ケージュ 醜いバケモンです。小さい人間です。
カンサイ でも僕が、スタッフさんに質問したり無理なお願いをするのが苦手で、「大人の人に怒られたくない」っていう気持ちがあって。そのときはケージュに頼みます。
――ケージュさんは、そういうのが平気?
カンサイ すぐ言ってくれます。ほんまにメンタルが強いです。
川﨑 肝が据わってますね、こいつは。
カンサイ NSCのときに、トークライブの実践みたいな授業があったんです。お客さんが入っている状態で、MCはマユリカさん。そこでNSC生が舞台に出てトークをしたんですけど、そこでケージュが並の人間やったら芸人辞めてるくらい、めっちゃスベッたんです。で、舞台が終わって、ケージュはひと言目に何て言うかな? と思ったら「まだ成長できるわ」って前向きで。心折れへんのん、エグいなと。
川﨑 信じられへんくらいスベって、それで袖に帰ってきて「今日はけっこうしゃべれた!」って。こいつスゲーわと思います。
ケージュ 人間はいくつになっても成長、成長なんでね。
カンサイ 心強いです。

――では、川﨑さん、ケージュさんから見たカンサイさんは?
川﨑 臆病ですよ、めっちゃ。見た目とは裏腹に。慎重で繊細といったほうがいいかな? あと、ネタへのこだわりが強いです。
カンサイ ほかのネタ書きの人と比べたら全然やで?
ケージュ 僕、(カンサイに)全然負ける気がしないんですけど、発想だけは圧倒的に負けるんですよ。発想がおもしろいです。
川﨑 ゼロイチがつくれる人。
ケージュ オレもこいつに気づかされたんですけど、オリジナリティを追求する心がけというか、人とカブらない、新しいことを探し続ける強い意志を持っているという。これ、すごく大事やなって思います。
カンサイ トリオ漫才でオリジナリティを出すのって難しいです。皆さん、新しいトリオ漫才をつくろうと努力しはるんで、その中でどれだけオリジナリティを出すかっていつも考えてます。
――発想の源は?
カンサイ なんやろ? TikTokですかね? いろんな映像を早く見る。
ケージュ それわかる。「これ、TikTok見て思いついたな?」っていうやつがありますね。
カンサイ 僕、“ネタ書き”にしては、映画とかアニメをあまり見てないほうなんですよ。TikTokだけでここまでのし上がってきたって考えたら、たぶん映画とアニメを見たら、もっとエグいのがつくれそうな気がします。

コントだけでなく漫才でも強いネタができた
――2025年は『UNDER5 AWARD』決勝進出、『NHK新人お笑い大賞』準優勝、『M-1グランプリ』準決勝進出と好調ですが、その理由はなんだと思いますか?
カンサイ 2025年はめちゃウケる漫才ができたんです。さらに飛躍できたのが、コントで『NHK新人お笑い大賞』の決勝へ行けたこと。あのヨネダ2000さんや豪快キャプテンさんというM-1ファイナリスト、そして四千頭身さんを倒して最終決戦まで行けたという、ここがエグいです。これがだいぶ飛躍した要因やと思いますね。
川﨑 コントと漫才で、強いネタがそれぞれ1本ずつ。
ケージュ そうやな。
カンサイ いいネタをつくる。それに尽きます。
――生姜猫のネタのポイントを教えてください。
カンサイ なるべく新しいことをやろうとしているっていうところを応援してもらえるとうれしいです。
川﨑 見ている方はワクワクすると思います。
ケージュ たしかに。
カンサイ ほかの方とカブったりっていうこともあるんですけど、設定はなるべく違うことをしようとしているので。
川﨑 生姜猫っぽさは追求していますね。

――最後に、今後の目標を教えてください。
川﨑 そらもう、天下ですよ! 「日本の芸人といえば生姜猫」って言わせます。
カンサイ 大きいことばっかり言う……。
ケージュ 僕は『おはよう朝日です』(ABCテレビ)に出ることです。出たいです。
川﨑 ずっと言うてるな、『おは朝』。
カンサイ ロケみたいなこと?
ケージュ スタジオ兼ロケみたいな。
川﨑 僕は『世界の果てまでイッテQ!』(日本テレビ系)に出て、「世界の果てまでイッタっきり」(のコーナー)をやりたいですね。一芸を習得するまで海外に居続けるってやつ。
ケージュ その間、オレらどうしたらいいの?
川﨑 一緒に行く?
ケージュ 行かへん。劇場出番もあるし、『おは朝』があるから。
カンサイ 僕は、(収入)月30万円を1年間継続する。
ケージュ 賞レースで獲らないと、まだまだ無理やな。
川﨑 まずは大阪の賞レース優勝やな。『ytv(漫才新人賞)』に『ABC(お笑いグランプリ)』、『NHK(新人お笑い大賞)』『上方漫才大賞』新人賞……めっちゃありますもんね。
カンサイ 安定して月30万円いけてるっていうのができたら、だいぶ安心します。でも、いまはまだまだ無理なんで、だからまずはここが目標です。
