錚々たるメンバーが集結!三船敏郎賞は桐谷健太、牧野省三賞は武正晴監督に!

10月17日(日)、よしもと祇園花月では京都国際映画祭2021授賞式が行われました。ステージにはMCを務める木村祐一と佐々木ひろみが登壇。木村は2年ぶりのリアルイベントについて、空気感は現場でないと味わえないと話しますが、オンラインは世界に発信できる点が素晴らしいと、どちらにもメリットがあることを伝えます。

出典: FANY マガジン

アンバサダー、倉科カナがステージに

そして京都国際映画祭総合プロデューサーの奥山和由氏がステージに。今年の映画祭のテーマが「前向け、前。」であることに触れ、これまでは歴史を作って来られた先輩の胸を借りていた、今年は歴史を作る方々の背中を押していくという方向に切り替えてやってきたとアピール。その方向性としてのアンバサダーにぴったりの方として、京都国際映画祭2021アンバサダーの倉科カナを紹介しました。倉科は、アンバサダーとして参加できること、大変光栄に思います、大役ですが精一杯務めさせていただきますと挨拶。奥山氏は、映画、舞台、テレビ、倉科さんが演じられるときには必ず素晴らしいと話題になると賞賛。そして、「女たち」という映画でもモスクワ映画祭始め、いろんなところに行ったが絶賛レベルだった、これからの5年10年映画女優としてがんばっていただきたいとエールを送りました。

衣裳協力/株式会社千總、株式会社龍村美術織物

倉科が身につけている着物、帯について説明があると、木村も素晴らしい、染めてみたいと思わず本音がポロリ。京都の印象を問われた倉科は、京都は歴史が長い、日本映画の発祥地でもある、新しいことを取り入れることに対して臆さない印象があると笑顔。京都人については、つつましいという印象と即答し、おもてなしの気遣いというか、やさしいと話すと、「きれいな人には優しい」と木村からツッコミも入ります。

クリエイターズ・ファクトリー各賞を発表!

続いては各賞の授賞式です。まずは“次世代を担う人材”を発掘するプロジェクト「クリエイターズ・ファクトリー」の中から「エンターテインメント映像部門」、「アート部門」、「子ども部門」の3賞の発表です。「アート部門」は、絵画や工芸、写真、立体造形など幅広いジャンルが対象。審査員による選考で優秀賞を選出し、賞金50万円を授与します。会場では優秀賞候補11作品のVTRが流されたあと、プレゼンターである京都国際映画祭アートプランナーのおかけんた、現代美術家で成安造形大学客員教授の澤田知子氏が登壇しました。

出典: FANY マガジン

けんたは、今年は200名以上の応募があったこと、審査員に写真に携わる方々が2名いたことで、写真作品が非常に多かったと話したほか、木村のフリでおなじみの「エエ声」も披露。

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澤田氏は、丁寧な作品が多く見応えがあったと評しました。そしてけんたが、キンミライガッキ現代支部の『キンミライガッキの自動演奏楽器ライブ「タイム⇄マシンを起動せよ!」』が受賞したことを発表。受賞コメントのVTRでは、素晴らしい賞をいただき感謝していると話したあと、出席できないことを詫び、見どころは現代の楽器がひとつも使われていない、ゼロから作られていることとアピール。最後に改めて誠に光栄、御礼申し上げるとメッセージがありました。

けんたは講評として、50分の映像作品がなかなかないことに触れ、前半3分はミュージックビデオのよう、そこで人を引きつける力があった、つかみがOKだったので票を集めたと思うと話しました。澤田氏は、長編のビデオ作品は最後まで見てもらうことが難しいが、この作品は飽きさせることのない工夫がたくさんあった、小道具もアート・クラフトとしてもおもしろいものがたくさんあり、完成度が高い作品だったと評価しました。受賞者には、盾と目録が送られることも伝えられるとともに、この盾は楽芸工房・村田紘平氏による西陣織模様箔パネルタテであることも説明されました。

出典: FANY マガジン

続いては「子ども部門」。優秀賞にはトロフィーが送られます。候補作品のVTRが流され、澤田氏が中村曜氏の『モリーズ』が受賞したことを発表すると会場は大きな拍手に包まれました。中村氏は作品について、森のなかにはまだ見つかっていない生き物たちがいると思うので、その生き物たちがどんな暮らしをしているのかということを考えて作ったと話します。そして初めて挑戦したことは、コマ撮りで作品を作ったことと答え、制作には2週間半ほどかかったと明かし、作るのは楽しかった、優秀賞は本当にうれしいと笑顔を見せました。

けんたは非常にきっちりと作っている、音も印象的で、それが頭に残ることで優秀賞の対象にもなるとコメント。澤田氏は、クオリティが高いのはもちろん、小道具にビンの蓋が使われているなど、子供ならではの発想が散りばめられていたと評価しました。

エンターテインメント部門は大激戦

続いては、劇映画、アニメ、MVなどジャンルを問わず、上映時間90分以内の作品が対象となった「エンターテインメント部門」の発表です。最終選考に残った10作品のVTRが流されたあと、プレゼンターである奥山氏と映画史研究家、審査委員長の春日太一氏が登壇。春日氏は開口一番とにかくレベルがアップしている、一次審査で断腸の思いで落とした作品もあると内情を告白。そして、プロの映画を審査するのと同じテンションでの審査になり、大激戦で論争に論争を重ねたと振り返りました。

出典: FANY マガジン

奥山氏は、8回目になるが8年前はこれからプロになれればいいねという人が集まっていた、今はスマホで映画を撮れる時代、メディアも広がっている、本当にプロのレベルまで来ていると評し、あとは劇場に出せるかどうか、入場料をもらって見せるものになるか、スレスレのところと語りました。

そしてまずは優秀賞の発表から。光平哲也監督の『ある日、ある女。』、堀川湧気監督の『もう一度生まれる』、小池匠監督の『消しかすの花』の3作品が選ばれました。選考理由として春日氏は、とにかくハイレベルな争いだったと改めて話し、今年から長編作品を入れるようにしたこと、完成度ではなくあえてチャレンジした作品にしたことをアピール。『ある日、ある女。』は1シーン1カットで作品を作るという作り方で出来もよくチャレンジ精神もよかったと評価。『もう一度生まれる』は演出の巧みさ、『消しかすの花』はセンスを感じたと評価しました。

続いて審査員特別賞として、高橋佑輔監督の『白獣』が発表されました。春日氏は、作品のできは物足りないところがたくさんあったとしたものの、満場一致で決まったと告白。チャレンジとしてマイナス20度の雪山で90分の作品を作った、これをとんでもないこと、こういう冒険を次世代の方はできると力を込め、これを奨励したい、どんどんチャレンジしてほしいという気持ちと話しました。

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そしてグランプリは、GAZEBO監督の『AIM』に決定。登壇したGAZEBO監督は、京都国際映画祭はエンターテインメント性を評価してくれる映画祭と話し、「どうやったらおもしろくなるのか一番に考えているのでうれしいです!」と笑顔。

春日氏は、最大の理由は、逆に年齢であるとコメント。若い才能は評価されるがGAZEBO監督は43歳、その年齢で逆に評価が低くなることについて、「待ってくれ、実力がある43歳なのになぜここにいるんだ」と思ったとのこと。そして、実力があるのにチャンスに恵まれない、次のステップへの切符になるために作った賞であることを考え、賞を出したと明かしました。春日氏の話を聞いたGAZEBO監督は「中年の星になれるようにがんばります!」と即答。奥山氏からは肉付けすれば1時間ちょっとになる、作って公開したらとアドバイスも。GAZEBO監督へは盾、目録の授与も行われました。

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ここで京都市・門川大作市長が登壇。門川市長は、パンデミックのときに文化芸術の価値が問われる、映画祭も8回目を迎え、さらなる挑戦と飛躍の年、これからが楽しみと感じているとコメント。そして、京都は疫病と自然災害を町衆、文化芸術のちからで乗り越えてきたとアピールし、心に必要なワクチンが映画、アート、人々との絆であると話しました。

牧野省三賞、三船敏郎賞を受賞したのは!?

出典: FANY マガジン

続いては「牧野省三賞」受賞者の発表、授賞式です。過去の授賞式のVTRが流されたあと、選考委員の京都国際映画祭 名誉実行委員長 中島貞夫監督、大阪大学名誉教授 上倉庸敬氏、株式会社東映京都スタジオ 代表取締役社長 大守善久氏、そして奥山氏が登壇。中島監督は今年の映画祭について、昨年に引き続き、コロナ騒ぎでいささかオンラインの多い、新しい形の映画祭になったと話し、2年目で慣れた点もあったが運営がうまくいった、各プログラム順調に進んで意義のある映画祭になったと思うと伝えました。そして「牧野省三賞」については、これまで日本映画の発展のために重きをなした方々に出すことができたと話したあと、今年は若干方向性が代わり、未来、これからの業績を加味したような形で、新しい「牧野省三賞」に衣替えしている、と説明しました。

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そして中島監督から今年の受賞者が武正晴監督であることが発表されると、登壇した武監督に倉科からトロフィーと目録が手渡されました。このトロフィーは紅村窯・林侑子氏によるもので、土鋏を使った装飾であることなども説明されました。武監督は、30年映画の世界で生きてきた、こんなに素晴らしいものをいただけるとは想像もしていなかったとコメント。これをひとつのエネルギーにして、映画にこだわった映画をつくっていきたい、選んでいただいてありがとうございますと感謝を述べました。奥山氏は、武監督が配信などでも活躍していることに言及。新しいメディアのなかで、叩き上げの監督が活躍している、これから5年10年かけて、ここから巨匠になってもらいたいとエールを送りました。

出典: FANY マガジン

そして、国際的な活躍が期待される俳優に贈られる「三船敏郎賞」の発表です。過去7回の振り返りVTRが流されたあと、選考委員である三船プロダクション 代表取締役 三船史郎氏、奥山氏が登壇。奥山氏から「三船敏郎賞」として、俳優の桐谷健太の名前が発表されました。三船氏は今年桐谷が演じた「酔いどれ天使」について、黒澤明監督と父親である三船敏郎氏がタッグを組んだ作品であることに触れ、若い頃のギラギラとした父を思い出した、父も黒澤監督も喜んでいると思う、と桐谷の演技を絶賛。「日本を代表する俳優として活躍されることを祈っています」とエールを送りました。

桐谷は、木村から「では一曲」とフラれると、「空の声が聞きたくて〜」とヒット曲「海の声」の一節を熱唱し、会場を盛り上げます。そして「すごくすごくすごくうれしいです」と話し、このような素晴らしい賞をいただけることに心からありがとうございますと笑顔。十代のころのギラギラした目が三船敏郎氏に似ていると言われたことがあると明かし、不思議な縁に強いつながりを一方的に感じている、これから日本、世界で活躍して、人の心を震わせて感動させる役者に……俺はなる!と力強く話しました。

アンバサダーである倉科は、伝統と豊かな文化が生まれ続ける京都から、オンラインと言う形で映画、アートを届けたいという思いが詰まった映画祭になったなと思うとコメント。オンラインは世界に発信できる利点があるとしつつ、来年こそは触れ合いながら映画、アートを発信できる場になればと願っていると語りました。

出典: FANY マガジン

続いて京都国際映画祭実行委員会 実行委員長である中村伊知哉氏が登壇。中村氏は総括として、今年はオンとオフのハイブリッドだったことに触れたあと、関係者、オンライン、オフラインで参加してくれた方々に感謝のコメントを伝え、来年は京都の東西南北、オンラインも使って、触れ合いのあるハイブリッドを目指したいと力を込めました。

出典: FANY マガジン

最後にMCから、昨年制作されたテーマ曲「KYOTO 踊ろう ASHITATO 歌おう」に合わせて、豪華メンバーが登場、自分たちの思い出のある映画をイラストとコメントで紹介するという「MEMORIES of FILM」という特別な映像を制作したことが明かされます。

出典: FANY マガジン

そして音楽プロデューサー・立川直樹氏が登壇。数年前に参加させていただいて、なんか足りないと思っていたと話し、音楽プロデューサーでギタリストの佐橋佳幸氏に相談し、GLAYのTAKURO氏が2日で作ったこと、京都の小学生がコーラスを入れたことなど、テーマ曲制作の裏話を披露しました。続けて、これにもうちょっと味をつけようと今回のミュージックビデオを作ったと明かすと「いいものができた、シリーズでやっていこうと思っている」と今後についても語り、授賞式は終了しました。