カラテカ矢部の「最高傑作」誕生!? 子どもたちと芸人が「東京都こども基本条例」の動画制作

「東京都こども基本条例」の理解を深めるために昨年5月にスタートした東京都の「みんなでつくる!こども基本条例プロジェクト」。その取り組みの一環として “こどもクリエイター”と芸人たちが一緒につくった動画が完成し、2月14日(水)に都庁で開かれた「こども未来会議」で発表されました。当日は、こどもクリエイターの代表と芸人たちも参加して意見を交換。子どもたちが動画を作り上げようと奮闘したこれまでの制作会議の様子と合わせてレポートします!

出典: FANY マガジン
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2021年に施行した「東京都こども基本条例」は、子どもにやさしい社会の実現に向けて、社会全体で子どもを育む環境を整備していくことを目指したもので、子どもの権利の尊重や居場所づくり、家庭への支援などをうたっています。

「みんなでつくる!こども基本条例プロジェクト」は、この理念を多くの人たちと共有するために、東京都と吉本興業が連携して進めています。2023年度は「条例」の内容をわかりやすく伝えるための「動画制作」と、子どもたち自身の発信で条例の認知を広げてもらうことを目的とした「ワークショップ」という2つのプログラムを実施してきました。

「自分から積極的に意見を言うことができるようになった」

この日に開催された「こども未来会議」は、“子どもが笑顔で子育てが楽しいと思える社会”の実現に向けて、従来の枠組みにとらわれない幅広い視点で議論を行うため、有識者・著名人などによって設置された会議です。第11回となる今回のテーマは「東京都こども基本条例の普及啓発に向けた子どもとの対話〜条例解説動画の政策を通して〜」でした。

冒頭で小池百合子都知事はこう挨拶しました。

「子どもの笑顔は未来への希望だと思っていますし、子ども政策のバージョンアップが大事だと思っています。東京の今と未来を子どもたちと一緒に作っていく、チルドレンファーストの歩みをもっと加速させていきたい」

出典: FANY マガジン
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会議では、小池都知事らメンバーが迎えるなか、こどもクリエイターの代表と、子どもたちの動画制作をサポートした芸人――絵本作家で芸人の矢部太郎、パラデル漫画で注目される本多修らが出席して「こども基本条例プロジェクト」についての発表と対話を行いました。

動画は、小学校低学年、高学年、中学生、高校生の4つのグループに分かれて制作。小学校高学年グループの陽なたさんは、できあがった動画は「見てくれた子どもが共感できる内容になっている」と言います。

「(動画制作では)矢部さんが『じゃんじゃん意見を言っていいよ』と言ってくれたので、とても話しやすかった。たくさんの子どもたちに、自由に意見を言うという経験をしてほしいなと思いました」

出典: FANY マガジン
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また、同じ小学生高学年グループの和奏(わかな)さんは、「自分が絵を描いたキャラクターに声を当てたこと」が印象に残っているとのこと。

自分がつくった“公園の中で長い時間、修理されず、さびて滑らなくなってしまったすべり台”というキャラクターで「暗い感じの声を意識して、放っておかれて悲しい気持ちを表現した」と言う和奏さんは、「このプロジェクトに参加して、以前よりも自分から積極的に意見を言うことができるようになったと思います」と振り返りました。

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芸人と子どもたちが動画のテーマを話し合い

子どもたちが動画制作に取り組んだ「こども制作会議」は、昨年7〜9月の毎月1回、東京・国立オリンピック記念青少年総合センターで開催されました。

その初回、「第1回こども制作会議」が開催されたのは昨年7月9日(日)。小学校〜高校生の“こどもクリエイター”総勢21人(オンライン参加含む)と、動画制作をサポートする芸人として矢部と本多、パラパラ漫画で知られる鉄拳、さらに動画クリエイターの土本幹郎氏が参加しました。土本氏は、チャンネル登録者数が45万人を超える大人気キッズ向けYouTubeチャンネル「クマーバチャンネル」のプロジェクトリーダーです。

出典: FANY マガジン
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まずは小学校低学年、高学年、中学生、高校生の4つのグループに分かれた分科会(個別ミーティング)が行われることに。動画は、土本氏が幼児向けを2本、矢部が小学生低学年・高学年向けを1本ずつ、本多が中学生向けと高校生向けを1本ずつ、鉄拳が大人向けを2本、それぞれ担当します。

分科会では、土本氏と矢部が小学生の2グループを、鉄拳と本多が中学生と高校生のグループをそれぞれ回って、条例について子どもたちが感じたことなどをヒアリングし、話し合いを進めていきました。

小学校低学年のこどもクリエイターたちは、「クマーバチャンネル」になじみが深いようで、土本氏は大人気です。さっそく動画に“クマーバのともだち”を登場させるというアイデアが飛び出し、子どもたちは思い思いのアイデアを描いていきます。

出典: FANY マガジン
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小学校高学年グループでは、矢部が「遊び場について、ふだん感じてることはある?」と問いかけると、子どもたちは口々に「公園でボール遊びができない」「スケートボードができない」など、日ごろ感じていることを明かします。そこで矢部は「じゃあ、理想の公園を考えてみよう」と提案しました。

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鉄拳は、冒頭の自己紹介で「あるあるフリップネタ」を披露。保護者と一緒に見学していた参加者のきょうだいたちまでが「あるある!」と大盛り上がりでした。鉄拳は、中学生に向かって「好きな話しようよ!」と提案し、自身も「ミニトマトはクキ付きのものがおいしい」というミニ知識を披露するなどして参加者の緊張をほぐしていきました。

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パラパラ漫画のイラストが紙から飛び出して実世界で動き出すという動画作品「パラデル漫画」で注目を集めている本多は、高校生に「大人に言いたいこと、ある?」と質問を投げかけます。すると「親が共働きで忙しすぎて、言いたいことがあってもガマンしちゃう」といった、10代らしい悩みが……。

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この日の最後は、分科会で決まったことを報告する「グループ報告会」です。小学校高学年のこどもクリエイターは、公園を改善するアイデアがたくさん出たことを報告。中学生は「宿題が多すぎる」「忙しいけど、ついついスマホを見ちゃう」という悩みを踏まえたテーマで動画を作る方針になったことを説明しました。

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高校生グループは「やることが多すぎて自分の時間が少ない」などの不満や悩みを抱えていることを「大人にも知ってもらいたい」と説明。一方、小学校低学年は、幼児向け動画のクマーバのアイデアが盛り上がりすぎたそうで、矢部は「ヤベーバ、次回巻き返すよ!(笑)」と気合を入れなおしました。

テーマを深掘りして登場人物を考える

昨年8月20日(日)に開催された2回目の制作会議では、1回目で決まったテーマをもとに細かいストーリーを制作しました。

矢部が小学校低学年グループに「動物が出てくる話を考えました」と前回の子どもたちの意見を踏まえてつくった絵コンテを見せると、子どもたちは「ネコさんだ〜!」「かわいい!」と大喜び。子どもたちは、さらなる登場人物を考えていきます。

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小学校高学年グループには、矢部は「公園でボール遊びをしたいという子どもを、ボールが応援する」という大まかな設定を提案。そのうえで「ボールと子どもの会話や全体のストーリー、そのほかの登場人物を考えてほしい」と語りかけました。

中学生のグループは当初、本多が提案した2つのテーマについて話していましたが、話し合いが進むうちに「本当にやりたいと思ったことは諦めずに伝える、相談する」というテーマに絞られます。

「大人にも知ってほしい」と発表していた高校生グループは、それぞれの悩みや不満をさらに深掘り。そこから、「見た目で人を暗いと決めつけないでほしい」「偏見はいじめに繋がりやすいから、なくしていかなければいけないと思う」といった「差別」や「偏見」についての意見も出ました。

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台本完成でいよいよ音声収録!

昨年9月24日(日)に開催された3回目の制作会議では、芸人が書いてきた台本と子どもたちが描いてきたイラストを使って、実際にセリフを収録しました。

セリフの分担を決めたり、内容を修正したり、各グループが参加者の意見を反映しながら台本を完成させていきます。

そして、みんなで通し読みをして収録へ。小学生のグループでは、収録した音声を聞いた子どもから「なんかヘン」という意見が出ると、矢部が「やりなおそっか」と提案。何度も収録を重ねることで少しずつ仕上げていきます。

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この日の会議には、2人組の絵本アニメクリエイター「ににに」も参加。2人が制作途中のイラストを見せて「こんな感じの動画になるんだよ」とイメージを共有すると、自分が描いたイラストが動いているのを見た子どもたちは「わ〜、すごい!」と大喜びです。

本多の担当する中学生グループは、「よかった〜!」というセリフひとつでも、聞き直して「なんか言わされてる感がある」と気になった部分は何度でもやり直し。言い方を変えたり、もっと感情を込めたりと、納得がいくまでこだわります。

高校生グループでは、台本にある髪を金色に染めるシーンについて「“髪を染める=金髪”という発想が古いのではないか?」との疑問が出ます。これについて本多は「1回、色を付けちゃうとずっと色を付けなきゃいけなくなるんだけど、金髪だとベタ塗りしなくていいから……。パラデル漫画って何枚も描くから……(笑)」と作画上の理由があったことをぶっちゃけ。その後も話し合いを重ねて、ていねいに収録を進めました。

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矢部「子どもたちの発想は面白くて素敵」

全3回の制作会議を終えて、矢部は「みんなの発想は面白くて素敵で、こんな発想、僕にはないから、気づくこともたくさんあったし、自分1人じゃできないことができたと思う。僕の最高傑作ができそうです!」とニッコリ。子どもたちからも、「みんなと意見交換ができて楽しかった」「また参加したい」という感想が出ました。

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本多は「最後はみんな声も出して、温度高く会議できたんじゃないかと思います。あとは楽しみに待っていてください!」と呼びかけます。中学生から「みんなのイラストのテイストが違うけどいいんですか?」という質問が出ると、本多は「それがいいんだよ……。作るのは大変だけど(笑)」と本音を漏らしました。

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有識者として中高生の会議を見守るだけでなく、「条例さん」として収録にも参加した東京経済大学現代法学部の野村武司教授は、「みなさんの意見をプロセスにして物語ができあがってよかった。伝わってくるものがありました」と語りました。

同じく有識者として小学生の会議を見守ってきた東洋大学の森田明美名誉教授は、「みなさんの話を大人たちにどう伝えるか、考えています。みなさんの気持ちはきっと同年代に伝わると思うので、これからも意見を言っていってくださいね」と呼びかけました。

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「これまでに経験のない、新しい方法論で表現できた」

こどもクリエイターたちが力を合わせて作った動画は昨年12月中旬に完成。12月17日(日)には、みんなで都庁に集まって動画の完成披露上映会が行われました。

自分たちの考えたアイデアが活かされた、それぞれの動画が上映されると、自分の描いた絵が動いていたり、自分の声が登場人物の声になっていたりすることに感動し、喜びの声を上げていました。

今回、完成した「東京都こども基本条例解説動画」は、幼児向けの「ランドセル」「おにごっこ」、小学校低学年向けの「ねこちゃん」、小学校高学年向けの「公演にて」、中学生向けの「わなゲーム」、高校生向けの「多様性」、大人向けの「サッカー」「花瓶」の8本。

その動画が発表された冒頭の「こども未来会議」では、この期間、動画制作をサポートしたクリエイター芸人たちがこう振り返りました。

「子どもたちが主体的に参加してくれて、これまでに経験のない、新しい方法論で表現できたなと感じています。この動画が多くの子どもたちの“気づき”になるといいなと思います」(矢部)

「動画の中の笑い声で、録音が終わったあとの雑談時のみんなの自然な声を活かせたのがとてもよかった。イラストをみんなに描いてもらったり、野村先生にも“条例さん”として動画に登場してもらったり、楽しく制作できました」(本多)

出典: FANY マガジン
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動画は、東京都子供政策連携室の公式YouTubeチャンネルで視聴できます。

動画視聴はこちらから。