結成16年以上のベテラン芸人たちがトーナメント方式で激突するお笑い賞レース『THE SECOND~漫才トーナメント~』は、結成19年目のガクテンソク(奥田修二、よじょう)が2代目王者となりました。
大会から一夜明けた5月19日(日)。激闘を終えたばかりのふたりに世界最速で話を聞くことができました。
届いた師匠からの祝福メッセージ
――大会から一夜明けました。昨夜の会見では「実感が湧かない」とおっしゃっていましたが、今のお気持ちを聞かせてください。
奥田 まだないっすね〜。
よじょう 俺もないです。
奥田 『M-1グランプリ』(の開催日)が日曜で、そのまま寝ずに平日朝の情報番組に出る……みたいなことがあると思うんですけど、まだそれをしていないので、明日(月曜日)から実感するんだと思います。昨日営業行って、『THE SECOND』で3ステして、終わってお酒飲んで、今日の神保町よしもと漫才劇場の出番なので、そんなに変化があるわけではないんですよね。
よじょう そうそう(笑)。終わってから初めての取材がこれ(吉本芸人にゆかりのあるFANYマガジン)なので(実感が湧かない)。
――芸人さんからは、どんなメッセージが届きましたか?
奥田 モモコ(ハイヒール)姉さんからは「楽しんでね。いい人生を」みたいな素敵な文章をいただいたんですけど、オール巨人師匠からは「おめでとう」やったな。
よじょう ショートメールでね(笑)。
奥田 「どう返すのが正解なんやろ?」と、勝手に試されているような気がして、逆に長文でお返しさせていただきました(笑)。
――本日、優勝後に初めて劇場に立ちました。変化を感じる部分はございますか?
奥田 僕らは普通に出ていくんですけど、(同じ出番だった)エルフの荒川が「このあとガクテンソクさん出るよ〜! みんな見たかったやろ〜?」と煽ってくれたんで(笑)、出て行ったときは、だいぶあたたかく拍手してくださいました。
よじょう こいつ(奥田)が「昨日、『THE SECOND』見た人?」と聞いたら、ほとんどの人が見ていて、ウェルカムな感じがしましたね。
1回戦で急きょネタを変更…その理由は?
――大会の激戦を振り返りたいです。対戦相手によって、流動的にネタを変えたそうですが、まずはその意図から教えてください。
奥田 『THE SECOND』は、“普段やってるものが出る大会”やと思うんですよ。普段寄席では、前組のネタを見て、自分たちのネタを変更することがあるので、そこは変えずにいくというか。今回、台本を提出せなアカンかったんで、やる可能性がある5本を提出して、直前まで「この3本かな」と絞っていました。
よじょう 3本に絞ってはいたんですけど、本当に直前の直前で、1回戦でやる予定ではなかったネタをやろう、って話になって。でも、全然準備はできていたし、いつでもできる状態ではありました。
――1回戦はラフ次元さんでした。急きょネタを変更したのは何か理由があるんですか?
奥田 最初は、一番自信があった(準決勝で披露した)副業のネタをやるつもりだったんですけど、金属バットの1回戦の点(291点)が良すぎたんで、副業のネタを金属バット用に取っておきたいと思ったんです。じゃあ残りの2本どっちを出すか……と考えたときに、その2本ともラフ次元には勝てないなと思ったんですよ。
ラフ次元はパーソナルを知ってもらうネタで、手数がそんなにないというか、状況で笑かしていく漫才。そうなったときに、(1回戦で披露した)国分寺のネタは、手数が多くてボケのラッシュにもなるので、これがええかなと。
――冒頭からのやりとりで、おふたりの関係性や面白さがすぐに伝わったような印象がありました。
よじょう そうですね。最初のツカミで反応が良かったんで「いけるな」と思いましたね。
奥田 全然ネタ合わせせずにやったんですけど、家帰って録画を見たら、2人とも普段と全然違うプレイしてました。
よじょう あ、そうなん?
奥田 ド頭に相方が「国分寺」と言った瞬間、すぐに「転勤!」って返すなんてやったことがなかったし……。初めてやった部分で拍手も起こっていたので、ネタ合わせしてないことが、いい方に転んだんやろうなって。ギャンブルに勝ったなって感じです。
準決勝・金属バットとの戦いを振り返る
――準決勝は金属バットさんとの対戦でした。
奥田 金属って、手数が多いネタと手数が少なくて爆発を起こすネタの2パターンが多くて。(金属バットが1回戦で披露した)カルタのやつが手数多かったんで、多分2本連続手数多いネタはやらんやろうな、と思ったんですよ。
金属バットも一撃のフレーズがめっちゃ強いんで、やりとりと量があって、それぞれフレーズ強めのヤツ(副業のネタ)をやったら、(審査員が)くらべやすいかな、って。 あとはお客さんの好みで、金属になったら仕方ないなと思っていました。
副業のネタは、(予選で戦った)マシンガンズさんのときにやったネタなんですけど、マシンガンズさんが何かやってきたとき用に、ネタにわざと余白を作ったんです。金属って自由さがあって、アドリブなんか、ネタなんか、ギリ分からへんみたいなところがあるじゃないですか。金属にぶつけるには、余白あるネタが持ってこいなのかなって。だから、(ネタ中に奥田が放った)「円安」とか「インボイス制度」とか、あそこは何を言ってもいいところなんです。あそこで金属は絶対に言わない、賢い系のワードを自由に足したっていう。
よじょう でも(後攻の金属が)ネタ終わった瞬間「どうなるやろな?」とは思いましたね。舞台袖で聞いてたら、バコン、バコンと固まった笑いがあって……。ずっとウケているわけじゃないけど、一撃の笑いがデカい。それが6個ぐらいあったんで、僕らみたいな、まんべんなくウケて、たまに一箇所ドカンみたいなものと「どっちを評価されんねん」と思っていました。
決勝で戦ったザ・パンチの“スピリッツ”
――同じ大阪芸人であり、同じライブをやってきた2組を倒しての決勝戦。相手は、ネタ以外の部分でも暴れ回っていたザ・パンチさんでした。
奥田 (MCの)東野さんが、パンチさんを紙相撲みたいにトントントン操ってましたよね。東野さんの嗅覚で「こいつらなんかあるぞ」って。パンチさんも鮮やかに踊ってましたし。
よじょう (笑)。
奥田 変な話ですけど、僕たちが決勝に行く大会だとしたら、別ブロックから上がってくるのは、パンチさんやと思っていたんですよ。金属を選ぶお客さんだったら、多分ななまがりが来るだろうな、とか(予想していた)。「掴んじゃったザ・パンチはヤバい」というのがあったんで、“うわ、予想通りになっちゃった”と思いましたね。
――決勝で披露したサプライズのネタは伏線回収もあって、美しいネタでした。
奥田 パンチさんの無駄部分が面白い漫才に付き合ったら無理やと思ったんで、最後は賞レースっぽい綺麗な形の漫才をやろう、と。結果的にそのネタも残せていたんで、決勝で出せましたね。
よじょう パンチさんが、途中で(16年前のM-1でも披露した)「砂漠でラクダに逃げられて」を使ったじゃないですか。あれを連打されたらヤバいなと思っていたんですけど、一発だけで終わったんで(安心した)。打ち上げで、(ノーパンチ)松尾さんに「連打されたらヤバかったです」と伝えたら、(パンチ)浜崎さんも「あれを連打してほしかったんだよ!」と言っていましたね。
でも、松尾さんは「それはしたくなかった」と。「しようと思えばできたけど、俺は1回だけしたかったんだよ」っておっしゃっていて、「カッコええ!」と思いました(笑)。
奥田 「あの頃から変わったんだよ」っていうことか。
――松尾さんはアドリブだったんですかね?
よじょう 浜崎さんには(ラクダのフレーズを使うとは)伝えてなかったらしいです。
奥田 全国大会の決勝の決勝に来たってなったら、16年前の燃え残った魂を供養したかったんかもな。
よじょう めちゃくちゃスピリッツかっこいい人でした。
――2本ネタをしたあとにも関わらず、決勝戦では最高得点での優勝でした。何か変えたところがあるんですか?
奥田 決勝では、分かりやすいツカミをわざと入れました。他のネタはツカミっぽいところと本ネタがグラデーションになっていて、1本のネタっぽくなっているんですけど、決勝では、貴乃花の息子なんて全く関係ないツカミを入れて……。浜崎さんの「大江裕」がめっちゃウケたんで、それ系で笑いやすい状況に入ってるなと思ったし、そういうものを1回戦、準決勝ではやってなかったんで、入れてみようと思いました。
――ああいったワードがツカミであると、営業のような雰囲気になって、お客さんも入りやすくなるんですかね。
奥田 そうですね。野外の営業っぽくいきましたね。お客さんそんなに見る気ないとか、芝生に座ってるみたいな感じのところやったら、多分こういう入りするよなって。
7月には単独ライブを開催!
――これからバラエティー番組にも出ていくと思います。共演してみたい方はいますか?
奥田 (大阪にあった劇場)baseよしもとで一緒にやってた千鳥さん、かまいたちさん、ダイアンさん、南海キャンディーズさん、麒麟さん……。当時、週に何回も会ってたような人たちが、今やテレビの中の人になっているので、まずはバラエティーでご一緒して、昔のノリとかを仕掛けたいですね。
――baseファンは熱くなりますね。ラストイヤーのM-1敗者復活敗退後、ガクテンソクさんは『テレビ千鳥』にも出られていました。
奥田 (番組中に)グリーン車のチケットをもらったんですけど、改札機に入れたら吸い込まれるから、駅員さんに言って、ハンコ押してもらってまだ財布に入れてます。
よじょう 俺も持ってますね。
奥田 ついに自力グリーンまでこられました……(賞レース優勝者はグリーン車移動になる)。
――よじょうさんはいかがですか?
よじょう 僕は東京に来て、ダイアン津田さんのバーター(抱き合わせ出演)でよく出させてもらっているんですけど(よじょうは津田軍団のメンバー)、これからは、バーターではない共演をしてみたいですね。
――7月にはオール新ネタ単独ライブ「ふるべのかむわざ」が東京と大阪で、トークライブ「のこり福」が大阪で開催されます。
奥田 (チケット情報を)見たら、大阪と東京のネタ単独ライブが売り切れてましたね。でも、トークライブは、なーんにも売れてない。俺らのトークに誰も興味ない。「お前ら漫才だけやっとけ。お前らのトークなんて聞いてらんねえ」ってことやな。
よじょう (笑)。
――でも、そのトークライブで『THE SECOND』話が聞けるかもしれないですし。お客さんにも来てほしいですね。
よじょう そうですね〜。
奥田 『THE SECOND』の話もするかもしれないですし、単独ライブとしては、(大阪)凱旋になるので来ていただきたいですね。
取材・文・写真:浜瀬将樹
なお、『THE SECOND』の決勝メンバーを含めたライブツアー『THE SECOND ライブツアー’23-24〜今、全盛期の漫才師達〜』が5月26日(日)、東京・有楽町よみうりホールを皮切りにスタートします(6月23日大阪・COOLJAPAN PARK WWホール、7月15日福岡・よしもと福岡 大和証券劇場)。そちらもお楽しみに!
『THE SECOND ライブツアー’23-24〜今、全盛期の漫才師達〜』の詳細はこちら
開催情報
ガクテンソクトークライブ「のこり福」
日程:2024年7月19日(金)20:15開場 20:30開演
会場:YES THEATER(大阪府)
出演者:ガクテンソク
FANYチケットはこちらから。