10月16日(土)、よしもと祇園花月では、上西雄大監督の「ねばぎば 新世界」、「ひとくず」、「西成ゴローの四億円」前編の3作品を「上西雄大監督特集」として上映。それぞれの作品上映後には、監督や主要キャストが登壇して舞台挨拶も行われました。
主演の赤井英和さんが登壇!
まずは「ねばぎば 新世界」の舞台挨拶から。MCを務める木尾モデルがフォトセッション時には、撮影自由であることを告げたあと、上西監督、主演の赤井英和、長原成樹、徳竹未夏、古川藍、そしてエグゼクティブプロデューサーである串カツだるまの上山勝也会長が登壇しました。
赤井さんは、「ご来場いただき、ご観劇いただきありがとうございました。またこの先も続くかなという終わり方でしたけど、期待してください」と笑顔。上西監督は、この場を作ってもらえたことが人生最大の喜びと熱を込めました。長原は3年ぶりの祇園花月と話し、めっちゃ満員ですやん、と笑いを誘い、徳竹、古川、上山会長もそれぞれ会場に感謝のコメントを述べました。
監督は本当にこの劇場でここに立てていることが感慨深い、どう受け止めていいのかわからないくらいの光栄と改めてコメント。自身が子供のころには映画やテレビばかり見ていたと話し、そのため作品に昭和の匂いがある、赤井さんはその世界観を背負うことができると話します。そして自分で書いたセリフながら、撮影中に赤井さんが話しているのを横で見ていると、ゾワゾワして本当に感動したと振り返り、赤井さんをアテ書きして、作品の中心に描ければということしかなかった、演技指導は全然なかったと明かしました。
赤井もオファーをもらったときに、ぜひやってみたいと思ったそうで、デビュー作である「どついたるねん」以来の自分にぴったりの役だと思ったと笑顔を見せました。MCの木尾から、ボクシングシーンの迫力がすごかったとふられると、「昔ボクシング習ってたから」と笑いを誘います。監督がボクシングシーンはお任せだったと明かすと「おまかせではなくでまかせ」と、さらにひとボケ。監督曰く赤井はダジャレで現場を和ませるそうで、ものすごくハイレベルなダジャレと監督がいえば、長原も「連発ですよ!」と同意。その長原は、赤井とのシーンを振り返って「怖いねん、拳握ったらでかく見えるし、怖いねん」と本音を吐露。長原はさらに「上山会長も怖いねん」と笑わせました。
徳竹が印象に残ったシーンとして、作品冒頭に赤井がサンドバッグを叩いているシーンを上げると、ここで赤井から徳竹へ作中にあったシーン再現のリクエストが。躊躇なく応えた徳竹に拍手が送られると、長原も「ようやったな」と感心の表情です。古川は自身が人を殴るシーンについて、赤井に指導してもらったと明かし「すごく貴重な体験をさせてもらいました」と笑顔。赤井の印象としては、やさしくて物腰がやわらかくて、ギャグやダジャレをずっと言われていて楽しい現場だったと振り返りました。ここで監督が再び、赤井のダジャレがハイレベルであることを力説。続編にはそのすぐに笑えず、言われてちょっと考えてから気がつくというハイレベルなダジャレを盛り込むと宣言していました。
上山会長は高校のボクシング部以来、赤井とは40数年の付き合いと話し、いつかすばらしいベタでディープな人情味あふれる新世界の街で、赤井主演の映画を撮れたらいいなという思いがあったと話しました。劇中で赤井にタメ口を聞くシーンについては、普段は大先輩にそんな言葉づかいはしない、今でも召使いのように動いておりますと話し、笑わせました。監督は会長の演技について役者以上と太鼓判。赤井さんとの友情は本物、作品に盛り込みたいと思ったと明かしました。
ほかにも作品内のこぼれ話などが明かされたあと、客席も含めてのフォトセッションが行われました。最後に赤井は改めて客席に感謝を述べたあと、「この先いろいろと期待していただきたいと思います、どうもありがとうございました」と挨拶。上西監督は「この作品を赤井さんと暴れるおじいちゃん2人になるまで続けたいと思います!」と力強く語りました。
木下ほうかさんのコメントに会場は爆笑
続いては「ひとくず」を上映。上西監督、木下ほうか、「ねばぎば 新世界」に引き続き、古川藍、徳竹未夏、そしてエグゼクティブプロデューサーである株式会社リゾートライフの柴山勝也会長が舞台挨拶を行いました。
監督は、自己紹介のあと、「(主役で演じた破綻した犯罪者の)カネマサ感が無くて申し訳ありません」とお詫びし、笑いを誘います。続いての木下も「東京からやってきた木下ほうかと申します」のあとにひとボケし、負けじと会場を盛り上げました。さらに柴山会長も「お金集めと人集めが担当です」と笑わせるなど、和やかな雰囲気で舞台挨拶がスタートします。
監督は今回の上映について、作品とともに1年以上にわたり、上映の旅を続けてきたことを明かし、この京都国際映画祭でディレクターズカット版を初めて上映することは、感慨深く胸がいっぱいと思いを語りました。そして本来の姿であるディレクターズカット版については、泣く泣くカットしていたシーンの内容を明かし、みなさんに届いていれば幸せとコメントします。さらにこの作品は、児童相談所で虐待について話しを聞き、心が乱れたことがきっかけで作られたと話すと、一晩でシナリオを書き上げたと驚きの事実を告白。虐待について聞いたことで、その夜眠ることができず、心のどこにその話を置いていいのかわからなかった、書くことで虐待の現実の置き場所を探すようにしたと振り返り、様々な葛藤のなか虐待のシーンを描いたと明かしました。
木下にオファーをしたことについては、劇場公開して一人でも多くの人に見ていただくことがこの映画の意義と思い、知名度のある方に出ていただきたかったと監督。しかし、劇団員たちに話したら、無理、難しい、と言われたそう。ところが、監督と直接話した木下は出演を快諾。監督は「ほうかさんがやろうと手を差し出してくれたときに胸がいっぱいになった」と振り返り、涙を流しながら握手したと回想。帰り道で劇団員みんなに電話した、みんな本当に喜んでいたと話しました。そしてそのときに話したファミリーレストランのレシートを今でもリビングに飾っているとも。それを聞いた木下は「(出演の決め手は)おごってもらったこと」と話し、会場を笑わせます。
娘を虐待していた母親役を演じた古川は、自身に子供がおらず、虐待はしたこともされたこともないことを明かすと、最初はこういう女性が本当にいるのかと疑問を持ったと心境を吐露。しかし、ロングランしていくにあたり、「そういう女性いますよね」「リアルでした」という声を聞いたことで、役者として演じることができてよかった、この作品に関わることができて今の自分に大きなポイントになっている、と胸を張りました。主役のカネマサの母親役を演じた徳竹は、自身が吸わないにも関わらず、タバコのシーンが多かったことで、撮影までに自然に吸えるように練習したそう。そして虐待シーンは演じていても苦しかったと明かしました。
柴山会長は、何回も見ているけど、今日も見てグッとくるところがあるとコメント。そして、監督、脚本、主演など全部やって監督はすごい、役柄によって人が変わる、役者さんってすごいなと思うと改めて監督、キャストを賞賛しました。
会場にはこの『ひとくず』を何十回も見ているという“おいくず”と呼ばれる人たちがいると監督が話すと、客席の何人もが手を挙げます。そして今回のディレクターズカット版の方がよかった人、という監督からの問いかけに、ほとんどの人が挙手。監督もよかったと笑顔を見せましたが、木下が「俳優で一番怖いのはシーンカット、これをされたら出ていないことになる」と話すと、監督は「僕は切れなかった」と告白。結局、どこを切るか決めてもらったものの、その切った形でお客さんに支えられつつ何度も見ていると、いざ入れるとなったときには「入れなくてもいいかも…」という気持ちにもなった、と裏腹な心境を明かしていました。
フォトセッションのあと、最後に改めて監督は、コロナ禍を走ってきた『ひとくず』が今また新たな作品として、ディレクターズカット版がいっしょに新しく旅を続けることになった、これからも旅を続けていけるよう作品と約束を交わしていると話し、大切な方に広めていただけたら、皆様の力を添えていただけたら、とアピールしました。
まさかの乱入で女優陣が乳首ドリルに参戦!
3作品目は「西成ゴローの四億円」です。上西監督、津田寛治、そして長原成樹、徳竹未夏、古川藍、木下ほうか、エグゼクティブプロデューサーであるポルシェゲートの高橋広規社長が登壇しました。各自、自己紹介をしていきますが、木下は「僕、出てないんでめちゃくちゃ気まずいです、後編の死闘篇に出てます」とポロリ。高橋社長が「死闘篇でやらせてもらってます、この映画はこれに続く映画」と話すと、木下はさらに「高橋社長と僕は関係ないんですよ」と念押し。長原から「流れで残ってる」とツッコまれると、「何で呼んだん!」とボヤいたあと、「京都に遊びに来られてよかったです」とオチをつけていました。
続いて監督からの「皆さんどうでしたか?」の声に、会場は大拍手。それを聞いた監督は「感無量です!」と声を上げると、反応が怖くて震え上がっていたと話し、「今胸がいっぱいです、ありがとうございます!」と感謝のコメントです。MCの木尾から海外の映画祭でグランプリを受賞したことが告げられると、自分には昭和の映画が残っている、世界でそれが評価されたことが意外と語り、不安だったがグランプリが獲れた、それにも増して皆さんの拍手がうれしかったと会場に語りかけると、観客から再び大きな拍手が起こりました。
映画の舞台に西成を選んだ理由を問われた監督は、人間の色が一番濃い、西成のヒーローを作りたかったとコメント。今の西成はすごく住みやすく、力を与えてくれる、昔と全く違う西成になっているが、自分には人間の匂いがするイメージがあった、それを背負ったヒーローを作りたかった、そこから西成ゴローが生まれたと明かしました。長原が西成に住んでいたころのエピソードや西成区住みます芸人のYouTubeチャンネルの話、桂文枝が現在PR大使をつとめ西成区の魅力発信を行っていることなどもありつつ、監督はこのシーンはここだなと(西成を)巡っていただけると新しい発見があると思うと話しました。続いて死闘篇の公開が発表されたことに触れられると、監督は「このあとどうなるんだろうと思ってるでしょう! 知りたいでしょう! 劇場で死闘篇見てください!」と会場に語りかけました。
津田は今回の役柄について、敵か味方がわからない感じでやってほしいと注文された記憶があると明かしました。作品の魅力を問われると、たくさんの登場人物のキャラがみんな立っている、それを監督が意図しているので演じていても楽しさしかないと絶賛。公開になる死闘篇は、またディープなキャラが出てくると明かしました。監督は「木下さんは死闘篇のラスボスです」とネタバラシ。それを受けて木下はひとつだけネタバラシしますと告げると「死闘篇は5、6……8倍はおもしろい」とアピールしていました。
長原は知り合いから借りた車があまり映っていなかったと監督にクレーム。「悪いやっちゃで」とツッコむひと幕も。姉妹役を演じた徳竹、古川は演じてみて楽しかったとのこと。思い切りやれと監督から言われていたと話すと「暴言は全部アドリブです」と監督が暴露しますが、徳竹が「台本どおりでございます」と反論、会場は笑いに包まれました。監督は負けじと「古川さんは女らしい人、でも徳竹さんはあんな感じ」とさらにツッコみ、笑いを誘います。高橋社長も死闘篇を「絶対に面白いと思う」と太鼓判、東京にも見に来てくださいとアピールしていました。
続いてフォトセッション、のはずが、吉本新喜劇の吉田裕、清水けんじが登場。吉田は「まずはしっかりマスクせえ!」と、出演者がフォトセッション用に外していたマスク着用を促す真面目ぶりを披露。そして「邪魔するで」のあと、木下の「邪魔すんのやったら帰って〜」のお約束で笑いを取ります。そこからおなじみの荒くれ者スタイルで上西監督に「4億円持ってこい」と絡みますが、監督もしっかり返し、会場を盛り上げます。と、そこにすち子の声が。すち子は役者陣にツッコミを入れますが、長原を「あれは素で悪い」とイジります。そしてすち子が吉田へ乳首ドリルをお見舞いすると、そのやりとりに役者陣も爆笑。「ゴローちゃんもやってちょうだい」と、すち子からの誘いで監督が参戦、続いて徳竹、古川も乳首ドリルへ。最初はモジモジしていた2人ですが、突如豹変し、巻ザッパで吉田をボコボコにしたあと「今日はこれくらいにしといたるわ、あー怖かった」で、ステージの全員がコケると会場は爆笑に包まれました。 ラストは改めてフォトセッション。
監督はこの作品は人生を賭して挑んだ作品と話し、生涯かけてシリーズで撮りたいと思っている、お力添えお願いいたします!と力強くアピールし、3作連続上映の「上西雄大監督特集」が幕を下ろしました。