『M-1』のスペシャルパフォーマーとは? “決勝本番前”盛り上げの極意と運営のリスペクト

漫才頂上決戦『M-1グランプリ2022』は、ウエストランド優勝で閉幕ーー。

今年もさまざまなことがあった同大会ですが、陰の立役者がいるのをご存知でしょうか?

本番当日、1組の人生が変わる賞レースのため、客席には独特な緊張感が漂っています。そんなことでは、お笑いを見る雰囲気にはなりません……。そこで重要になってくるのが、本番前にお客さんの心を解きほぐし、会場を“笑い”の空気に変えてしまう、くまだまさし、レギュラー(西川晃啓、松本康太)、バイク川崎バイク(以下、BKB)の3組によるスペシャルパフォーマー(前説)の存在です。

出典: FANY マガジン
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今回は、もはや各賞レースには欠かせない3組に、前説への想い・取り組みについて語ってもらいました。これは、もうひとつの『M-1』アナザーストーリーです!

信頼と実績のスペシャルパフォーマー!

ーー『M-1グランプリ』のスペシャルパフォーマーとしては、どのあたりから携わっているのでしょうか?

くまだ 僕は、旧『M-1』のときから。例の事件で抜けたときもあったんですけど(苦笑)、毎年やらせていただいています。

西川 旧『M-1』からっていうのがすごいよな~。

松本 僕らは、仕事で中抜けしている年もあるんですけど、2015年の新生『M-1』からやらせてもらっています。そのほかにも、『女芸人No.1決定戦 THE W』、『おもしろ荘』などの前説もやらせていただくようになりました。

BKB 僕もレギュラーさんと同じく2015年から8年連続呼んでいただいています。『M-1』のウワサを聞いたからなのか、芸風が盛り上げに近いからなのか、2016年あたりから『キングオブコント』や、この2、3年は『THEW』にも行かせていただいています。

くまだ ある意味、(BKBは)コンテスト界の「Mr.パフォーマー」ですよ。

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出典: FANY マガジン / 画像を一部加工しています。

BKB 『M-1』で感動したのが、僕らのことを「前説」ではなく「スペシャルパフォーマー」扱いしてくれること。「前説」と呼ぶとライトな響きになるんですけど、その呼び方ひとつとってもリスペクトしてくれて、僕らの気持ちを汲んでくれるのが嬉しいです。

くまだ 僕らがテレビ朝日に入るとき、局の方が「今年も待っておりました!」という感じで迎え入れてくださるんですよ。スタッフさん全員で盛り上げようという気持ちが伝わります。

BKB 普通の番組の前説ではないですよね。いち芸人、いちパフォーマーとして扱ってくれるし、芸人に対するリスペクトがすごいです。

『M-1』本番前の舞台裏

ーー数年前から、この3組がスペシャルパフォーマーとして名を連ねていますが、どんな形で本番前のお客さんを盛り上げているのでしょうか?

松本 基本的に順番は決まっていて、レギュラー、BKB、くまださん。僕たちが最初にお客さんの前に出るんですけど、明らかに緊張されているので、僕たちは、その緊張感を解きほぐす役ですね。

くまだ 難しいのが、そうやって緊張をほぐしながらも、『M-1』の趣旨説明をしなきゃいけないこと。

BKB 確かにレギュラーさんのポジションが一番難しいところやと思います。劇場の本公演でもそうなんですけど、トップバッターと二番手の空気って全然違うんですよ。二番目でやりやすかったら「トップが盛り上げてくれたからやな」と思うんです。

西川 僕たちとしては、生放送のコンクールですけど、ミニ寄席だと思っています。あくまでファイナリストが主役で、その方々が目立たんとダメですから。

出典: FANY マガジン
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BKB そうやってレギュラーさんが「説明+あるある探検隊」でバチーンと会場を元気にして僕に繋げてくれるので、お客さんが「お笑いを見る空気」になってるんですよ。だから、ネタっぽいことをしてもウケだすんです。

あと、いつも僕は「(お客さんと一緒に)バイクだけにブンブン!」とコール&レスポンスをするのですが、これが僕の呼ばれている最大の理由だと思います。シンプルなんですけど、体動かすし、声出すし、笑いやすくなるから、理に適っているというか。

松本 BKBがすごいのは、ネタ自体が完璧を求めるものではなく、「失敗の美学」もあるので、お客さんが安心するんです。『M-1』において、ウケる人もおれば、スベる人もいるじゃないですか。賞レースって、スベったらお客さんが「大丈夫かな?」って緊張するんですけど、「こういうのも笑っていいんやで」という空気をみなさんに教えてるなと思います。

BKB そんなこと思ってくださっていたんですね……。でもこれはレギュラーさんのバトンがあってこそですよ。

松本 いやいや! BKBの役割はじつはめちゃくちゃスゴい!

西川 ここで褒め合いはいらんから(笑)!

出典: FANY マガジン
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くまだ こうやって2組が説明と楽しい雰囲気を作って盛り上げてくれるから、僕は自由にやらせていただいている感じです。

松本 それで盛り上げられるのがスゴい!

BKB くまださんは、壮大な茶番というか(笑)。『M-1』を営業の空気にするんですよね。

松本 吉本の営業スターですからね。「くまださんやったら絶対笑いをとってくれる」という信頼がありますから。

BKB やっぱりちょっとトガったお客さんもいると思うんですよ。その人すらも、くまださんがトドメを刺す(笑)。

くまだ 『M-1』は緊張するし、芸人さんにとっては運命が決まる場所ですけど、お客さんとしては、笑っていただければいいだけのお話なんで、それを踏まえた上で、この3組で力を合わせて「今日は笑いましょう!」という空気を作るのが役割かなと。2組は説明などがあるかもしれないですが、僕に限ったことでいえば、ルミネtheよしもと、営業、『M-1グランプリ』のパフォーマンス、どことも変わらないネタをしています。

松本 僕らは「いつもと状況が違う」「時間を見ながらやらないといけない」とか、何かしら言い訳ができるんですよ。でも、くまださんは言い訳ができない。それでもウケますから。

BKB 僕とレギュラーさんが持ち時間より長くやったらくまださんが短くなるんで、くまださんが調整役というか。自由度がなくて一番しんどいところでもあるんですよね。

松本人志にツッコまれる!?

ーー『M-1』でのスペシャルパフォーマンスやほかの番組で前説をしていたときに、印象的だったことはありますか?

BKB 毎年、僕らが盛り上げているということを、決勝メンバーが別の媒体で言ってくれるのはありがたいですね。

西川 松本(人志)さんが『ワイドナショー』でスペシャルパフォーマーのことに触れてくれたりね。

くまだ (MCアシスタントの)上戸彩さんがBKBポーズをしてくれたり、(『M-1グランプリ2009』の)1番手だったナイツくんが「前のコンビのくまだまさしさんがウケてたんで」と言ってくれたり、嬉しいですね。初期の『M-1』では、松本さんが僕のところに来て「今日の客はどうや?」と聞かれることもありました。

出典: FANY マガジン
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BKB 『M-1』終わって2日後、ゆにばーすの川瀬名人に別件で電話することがあったんですけど、あいつ決勝に行ってないのに「今年も『M-1』が最高に盛り上がったのはみなさんのおかげです。本当にありがとうございます!」って。「どのスタンス?」と聞いたら「俺は『M-1』大好きなんで、それを踏まえて見てるんで」みたいな(笑)。ボケなく言うてくれたんで、それは嬉しいなと思いました。

松本 それこそ川瀬くんが「レギュラーさんに会うと『M-1』って感じがするんですよね」と言ってくれたり、予選のMCをしていると、ほかの芸人さんが「レギュラーさんがMCのときに予選出られてラッキーです」と言ってくれたりして、ありがたいですね。あと、今年の『伝説の一日』(なんばグランド花月)で、ダウンタウンさんが出られる日の前説をやらせてもらったんですが、西川くんがめちゃくちゃ噛んでな。

西川 説明する文章が長かったんですよ。

松本 絶対言わなアカンところとか、言い間違えたらアカンところがいっぱいあって。めちゃくちゃ噛んだけど、それも笑いになって舞台降りたら、マネージャーさんが「松本さんが楽屋のモニターで見てらっしゃいました」って。

西川 それで「なんで前説で緊張すんねん!」と言ってたらしくてね(笑)。

松本 あと『おもしろ荘』では、MCのナインティナインさんに挨拶に行くんですけど、めっちゃ気を遣ってくれはって、岡村(隆史)さんは、絶対に気絶してくれるんです。ありがたいですね。

出典: FANY マガジン
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BKB 僕らって結局、世には出ない縁の下の力持ちじゃないですか。だから「取材が来るところまできたか!」と思いません? 人知れず盛り上げていた僕らに取材来てくださるなんて……やっとまわりが重要性を認めてくれたんか、って。

西川 確かにな!

大会の重みと芸人としてのプライド

ーーそんなことないです(笑)。『M-1』のスペシャルパフォーマーの仕事は「芸人としての誇り」にも繋がるものなんですね。

西川 もはや年末の一大イベントになってますからね。それに少しでも関わらせていただけるのは、非常にありがたいことです。

松本 この経験はのちの芸人活動にも生きてくると思うんですよ。

BKB これができてるから、他の現場でも動じないです。ただ、次の前説が育ってないというのはありますよね。

松本 我々も長いし、世代交代もあるはずなんですよ。僕らも『M-1』が大好きやけど、やっぱり入れ替えも大事やから。

BKB ただ参加させてもらったら、このポジションはいいなと思いますね。

西川 そうやねん。やりがいある仕事やからね。

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ーー最後に、「これだけは言いたい!」ということはありますか?

くまだ 最後に、僕がずっと思っていたこと言っていいですか? 最近になるにつれて感じているのが、かすかにですよ? 僕らと上戸彩さんの距離が近くなっているんじゃないかと思うんですよ。

松本 そんなことないです(笑)!

くまだ なぜかと言うと、昨年、今田耕司さんと上戸さんが舞台に出るときに、舞台袖にいる僕らをチラッと見てくださったんですよ。僕ら全員が上戸さんに向かって、(エールの意味もこめて)ファイティングポーズをしたら返してくださって。

西川 さっき前説交代の話が出たけど、くまださんがあと5年したら、(距離が近づいて)上戸さんとごはん行けると思ってるやろうから、あと5年は待ってあげて(笑)!

BKB 昨年、出番終わりに(上戸が)「いつもお疲れ様ですね」と言ってくれましたし、上戸さんも僕ら3組に対する愛着みたいなものはあると思います。たぶん、飲み会とか行けんちゃいます?

松本 無理よ! こんな記事が出たら、僕らはすぐにスペシャルパフォーマーおろされるよ!

くまだ そんなことが起こらないのが“彩さん”でございますから。

松本 彩さん(笑)?

BKB それは分かってますけど、くまださんは上戸さんの何を知ってんねん(笑)。

取材・文:浜瀬将樹

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