“笑いの女王”を決める『女芸人No.1決定戦 THE W2023』の決勝が、12月9日(土)に日本テレビ系列で生放送されます。過去最多となる863組の出場者の中からファイナルに進出したのは12組。優勝経験者など強豪がひしめくなかで、とくに注目を集めているのが芸歴1年目にしてファイナル進出という快挙を成し遂げた、はるかぜに告ぐ(一色といろ、とんず)です。謎のヴェールに包まれた、期待の新星の素顔とは!?
ライセンスが大好きすぎて「大失恋」
——『THE W』ファイナル進出おめでとうございます! 予選の段階で手応えはありましたか?
とんず ありました。準決勝が2日間あるんですけど、初日の感じで「行ったかもしれん」っていうのがあって。でも、2日目で「あれ? ちょっとわからんな」みたいな。でも、準決の38組中15位以内には入ってるかなっていう体感で。そっからは審査員さんがどう思っているかというところやったんです。だから、「行けたかもしれへん」っていう気持ちはあったものの、めちゃくちゃびっくりして。
といろ なんか、ふわふわしています。テレビで漫才する機会もないんで、まだよくわからない感じがあって。
——はるかぜに告ぐは、今年10月からマンゲキ(よしもと漫才劇場)の劇場メンバーに加わりましたが、今回の決勝進出で先輩芸人から声はかけられましたか?
とんず マンゲキの人たちは、ホンマに全員「おめでとう」って言ってくれはって。(芸歴8年以上の)極メンバーの方々もめちゃ褒めてくれました。とくに、去年優勝した天才ピアニストさんは、準決勝前に私らのネタを見てくれたんです。
といろ アドバイスもいただきました。
とんず それで、(決勝に)上がったときも声をかけてくれました。実は……(先輩は)「こわい」と思ってたんです。1年目なんかナメられるし、「どうせ消えるやろう」とか思われてると思ってたんですけど、皆さん、すっごいやさしいです。
——劇場全体がお祝いムードですか。
とんず はい。同じ芸歴1年目の風天ダスト(山田青空、京介)っていう、NSC(吉本総合芸能学院)45期最速で漫才劇場に入ったコンビの京介くんだけは、「ちょ、お前らダルいって」と言ってきました。「オレらが1位やったのに、(はるかぜに告ぐが)ファイナリストってなるとちょっと話が変わってくる」とブツブツ文句は言われました(笑)。
といろ 『THE W』は男性が出られないから。
とんず 京介くんとしては、気持ちの落としどころが難しいらしくって。準決くらいまでは「お、すごいやん!」と応援してくれたけど、ファイナルまで行くと「ちょっとちゃうやろ」みたいな。「でもオレ、女ちゃうから出られへんし。だから負けたというわけでもないし」みたいな(笑)。
——いいライバル関係なんでしょうね。おふたりはNSC45期ですが、NSCに入ろうと思ったきっかけは?
といろ 私は大学卒業したあと、会社員として2年間、ウェブディレクターをしていたんですけど、大学卒業が2020年4月で、コロナの真っただ中だったので、ずっと在宅勤務だったんです。それで運動不足解消のため、NSCに入りました。家にいるのは好きなんですけど、20代でこれはさすがにもったいないなぁと思って。体脂肪率がどんどん増えていくし、人前に出るようなことをすれば少しは引き締まるかな、と。
——「お笑いをしたい」というわけではなかった?
といろ そうですね。「芸人になりたい」と思ったことは、人生で一度もなかったです。でもバラエティ番組はよく見ていて、『おもしろ荘』(日本テレビ系『ぐるぐるナインティナイン』の年末年始の恒例企画)で好きになったレインボーさんとか、小学生のころだと、はんにゃ.さんをよく観ていました。
——といろさんは、プロフィールに「TOEIC810点」とありますが、仕事で英語を使っていたんですか?
といろ いえ19歳から1年間、オーストラリアに留学していて、そのときに一応取った感じです。
――とんずさんは?
とんず 私は、中学のときには漠然と芸人になるって決めてました。それなら芸人になる前に、やりたいことは全部やっておこうと、だだーっとやりたいことをひたすらやり続けた学生時代でした。
——芸人になろうと思ったきっかけは何ですか?
とんず ライセンス・藤原(一裕)さんのめちゃめちゃ“顔ファン”で。(2006年の)『M-1グランプリ』の敗者復活戦で決勝に上がりはった動画を小6のときに見たんですけど、「めちゃくちゃイケメンや!」と思って。そっからライセンスさんを調べ出して、ヨシモト∞ホールにハマって、5upよしもと(2014年に閉館した大阪・なんばの劇場)にハマって。中2のときに5upの年越しライブとか行ったりしてました。
——とんずさんは、中学時代から筋金入りのお笑いファンだったんですね。
とんず 「私はライセンスの藤原さんと結婚するんや!」ってお笑いを追っかけまくっとったら、忘れもしない中学3年生のとき、私、体育委員やったんで、体育倉庫でボールの貸し出し担当をしてたんですけど、そこで藤原さんの結婚発表を知って号泣しました。使ってたテーブルに「ライセンス・藤原、結婚泣」って書いた記憶があります。大失恋でした……。
——なかなか興味深い中学時代ですね……。「やりたいことを全部やった学生時代」というのは、具体的になにをしたんですか。
とんず めちゃくちゃ多趣味やから、やりたいことがたくさんあって遊びまくってました。でも大学はフルで単位が取れてたから、就職も決まり、あとは卒業だけ! っていう大学4回生の後期に2単位だけ落としてしまって卒業できず、就職も白紙になって……。見出しにしてほしいくらいなんですけど、担当の先生が、テストの時間を教え間違えたんです。それで留年が決まってしまい……。
——芸人になると決めていたのに、就職も決まっていたんですか?
とんず そうです。一度、就職も経験したかったし、NSCの入学金を貯めたかったんです。で、(留年したので)5回生になったんですけど必要なのは後期の2単位だけやから前期がめちゃヒマで。それで友だちと、ノリで『M-1』と『キングオブコント』の予選に出てスベり散らかしたんですけど、『キングオブコント』で1回だけウケたので、「そや、芸人なろ!」って。
NSC在学中から話題のコンビ
——そしてNSCに入ったんですね。2人は、どういう経緯でコンビを結成したんですか?
とんず 私から声をかけました。私が前コンビを6月に解散して、月に一度、開催されるNSCのライブ(「RUSH」)で、「いい人おらんかな~」って観に行ったら、舞台にといろさんが出てて。
といろ (コンビを)組む気がなかったというか、芸人をやるつもりがなかったので、組むとさすがに申し訳ないと思ってピンでした。
——どんなピンネタをしていたんですか?
といろ なんか、フリップ芸? みたいな。
とんず その会場におった人のなかで、ダントツでといろさんがおもんなかったんです。でも、不思議と目を引くんです。だから、私がネタを書いたらおもろなる、と思って声をかけました。最初は、ほんまに手応えがなさすぎて……。
といろ さっき言ったように、(芸人を)やる予定がなかったから「どうしようかな?」って。
とんず でも、NSCの卒業条件として、ライブに出演しないとあかんのと、コンビも一度組んだら1カ月は解散したらあかん、とかやったっけ?
といろ たしか(NSCは)コンビを結成して申請したら、1カ月間は解散したらダメだったと思います。
とんず 7月くらいやっけ、最初はお試しで組みました。で、そのあとに『新宿音響ラボ』(BSよしもと)の出演がすぐ決まって、その1週間後にNSCの夏合宿での「東西合同ネタコンペ」のネタ部門で優勝して、その1週間後に『M-1グランプリ』(テレビ朝日系)1回戦に通って……。
——いきなり怒涛ですね!
とんず そうなんです。で、必死にやってたら『M-1』3回戦に進出できて、そっから劇場出番もちょいちょいもらえるように。スーパーマラドーナ・武智さんのライブとか、祇園・木﨑(太郎)さんのライブに呼んでもらえるようになって。
といろ 今年4月放送の『深夜のハチミツ』(フジテレビ系)に出演が決まってNSC卒業前の3月に収録もありました。
とんず なんかこう、ずっと続いてたよな?
といろ そうですね。ずっと切れ目なく。
とんず 並行して月一で「RUSH」があるから、2分ネタを絶対に書かなあかんとかで、けっこう怒涛の1年でした。でも年明けの1月に、ほかの同期から「解散せえへんの?」って聞かれるようになったんです。理由を聞いたら、「といろさんは芸人になる気がないらしい」というウワサがバーっと広まってて。私は組んだらそのままプロになるもんやと思ってたから、そこで初めてといろさんに「といろさんって、芸人ならんの?」って意思確認をしたんです。
——といろさんは、「芸人になるつもりはない」という最初のころから心境の変化はあったんですか?
といろ 私は文化人になりたくて資格を取ったりしてたんですけど、将来的になりたいっていうだけで、いますぐというわけではないので。
とんず その話し合いのときに、「フリーランスになりたくて」とか「パラレルワーカーとして働きたい」とか、ごちゃごちゃと私の知らん言葉を……(笑)。で、「芸人になるん?」って聞いたら「なります」って言うから、「ほな、ええか」と。毎年2月に現役のNSC生がやる「NSC大ライブ」っていうのがあるんですけど、そこで9位に入りました。
といろが芸人を辞めないようにプレゼン!?
——怒涛の日々は今後も続きそうですが、これからの目標を教えてください。
とんず 賞レース、優勝したいです。そのために、いま何をすべきかって動いてます。そもそも、といろさんに声をかけたんは、『THE W』に出たかったからなんです。ほんまは男女コンビがよかって、前に組んでたのも男女コンビでボケやったし。けど、といろさんと組んだきっかけは、『THE W』やから。だから、今回はほんまにありがたいなぁ~と。
といろ 『THE W』が、私たちが組んで初めて出た賞レースでもあるんです。
——『THE W』のファイナリストに選ばれて、といろさんはいよいよ本腰を入れたのでは。
といろ 芸人として、こんなに出番があると思っていなかったから、いまはまだ将来というより目の前に重きを置いてしまっているところがあります。私は今年27歳なので、たとえば5年後の33歳になったとき、18歳から芸人を目指している人とはきっと違います。だから、「将来はどうなるかな?」とは思います。親も、NSCに入ったときは「運動不足解消になっていいね」って言ってましたけど、いまは「ずっと芸人やっていくの?」という雰囲気はあるので……。
とんず こ~わ~い~!(笑) いま怖かったっすよね!? 聞き入っちゃったですよね!? どこで「でも、私は……」って言ってくれるんか、と!
といろ 親は、私がお笑いをやるとは思っていなかった、という意味ですよ。私は、いまは「お笑いで稼いでいきたい」って思っています(笑)。
——これまでの話で、といろさんはとんずさんに絶大な信頼を置いているように見えます。
といろ そうですね。ネタはもう絶対。
とんず だって、(といろが)芸人を辞めないように、ほんまにずっとプレゼンテーションをしてます。『THE W』も、NSCのときに「3年以内には絶対に決勝に行こう」って言ってましたし。
といろ 3年までくらいには行きたいねって。
とんず だからそのために、私は4分ネタを考えているんだぞっていうのをずっとプレゼンしてます。私も言うても、そんなダラダラとやる気はないんです。私も25歳やから、(といろと)気持ちは一緒です。
インドア派とアウトドア派の2人
——芸歴は短いですが、これまでを振り返ってどこがターニングポイントでしたか?
といろ 私はまだ、親以外に芸人になったことを誰にも言ってなくて、まだ誰にもバレていないので、『THE W』に出たらバレるかなと思っているんです。だから、そういう意味ではまわりの人にバレたときがターニングポイントかなと思っています。みんな、本当にびっくりやと思います。人を笑わそうとしたことは、人生で一度もなかったので。
とんず 私なんて、中学のときからずっと「芸人になるから!」って言ってるのに……。
——「人を笑わそうと思ったことがない」というといろさんは、すぐ漫才ができたんですか?
とんず そうですね。なんと言ったらいいのか、ネタ合わせのときはあんまりなんですけど、舞台に立つと、ネタ合わせでやったことがない動きとか勝手にできるんですよ。舞台映えというか、舞台に立つとキラキラする才能がある。私が最初、といろさんを舞台で観たときに目が離せなかったのもそれやと思います。
といろ 人生でまだちょっと刺激を感じられていないので、もっと刺激を感じたいなと思っていろいろやってます。
とんず まだ?
といろ だから、『THE W』はけっこう、なかなか刺激強めです。
とんず ほんまに、(といろの)感情ががーっとなってるところを見たことがないから。
といろ あまりテンションが上がらない、というのはあります。
とんず テンションが落ちもせえへんし、泣いてるとか怒るとか、めっちゃ喜ぶとかもなく……。『THE W』決勝進出が決まったときも「やった~」とか言うてて、ほんまに空っぽなんです。でも、そこに助けられてるんですよ。私はけっこう浮き沈みがあるほうなんで、お互いそんなんやとクタクタになると思うし、わりと助けられてます。
といろ でも、わりと緊張はしてるんですよ(笑)。
——正反対のおふたりですが、認め合ってるんでしょうか。
とんず 認め合っているというか、干渉しない(笑)。本当に趣味は合わないです。
といろ 私は趣味がそんなになくて、美術館とか寺社仏閣巡りは好きなんですけど、基本的に家にいるのが好きです。インドア派です。
とんず 私はまだ遊びたい。めっちゃ遊びたいですね~。釣りとかも好きやし。アクティブです。もともとバンドもやってて、ギターとかピアノもやるし、音楽が好きやからライブもよう行ってたんですけど、いまはなかなか行かれへんくて。「酒呑んでばっかりや!」と思ってるやろ?
といろ うん。
とんず でしょ? それは、ほかの好きなことができひんから、いちばん手っ取り早くできるのが飲酒ってだけで。
といろ でも、結果としてはお酒ばっかり飲んでる。
とんず 結果としては、ね。なんというか、本望ではないというか……(笑)。
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