【新企画】わたしのラジオルーティン『ミルクボーイの煩悩の塊』編週500通届くメール選びの基準は!?

レギュラーラジオ番組を持つ芸人は、番組の本番前後でどう過ごしているのか。決まってやっていること、ルーティンはあるのか――そんな素朴な疑問を本人、さらに番組スタッフにぶつけて、番組や芸人の魅力に迫る新企画がスタート！　その名も『わたしのラジオルーティン』。記念すべき第1回は、ミルクボーイ（駒場孝、内海崇）が登場。M-1優勝で舞い込む仕事をこなすなかで“煩悩の塊”になっていないか……と心配して作られた番組『ミルクボーイの煩悩の塊』（ABCラジオ、毎週月24:30〜25:30）の収録現場にお邪魔しました。

『ミルクボーイの煩悩の塊』（以下、『ボンカタ』）は、ミルクボーイが2019年末にM-1グランプリで優勝した翌年3月にスタートした冠番組。漫才のつかみをリスナーから募る「つかみ」「家電つかみ」、ミルクボーイの会話からリスナーたちが新しいコーナーを生み出す「コーナーのコーナー」、そして、森羅万象・喜怒哀楽、すべての人がひとつは持っている“サライ”な話を紹介する「僕のサライ」などで構成された1時間です。

じーっと静かにメールを読み込む本番前の2人

放送数日前の某日、収録のため午前10時20分に駒場が、その10分後に内海がラジオブース入り。さっそくリスナーからのメールに目を通し始めます。

この時間、ブース内は雑談もほとんどなく、とても静か。なぜなら、ミルクボーイの2人が“真剣に”メールを読んでいるからです。「つかみ」のコーナーは内海が、それ以外のメールは駒場が目を通して、ラジオで読むものを選んでいるということで、とくに「僕のサライ」のメールは、ストーリー性を重視した長文が多く、駒場いわく集中力がいるそうです。

リスナーからのメッセージは、近ごろはメールで来ることがほとんどですが、『ボンカタ』のリスナーは年齢層が幅広く、年配の人からハガキが届くことも。この日も、和紙製の素敵な手作りハガキが舞い込んでいました。

こうして時間をかけて、丁寧にリスナーからのメッセージを読み込む2人。内海はメールを選び終えると、進行台本に何やらメモを。この日の収録で話そうと思っている話題を、ちょこっと書いておくのだそうです。そうしてブース入りから40分ほど経過したころ、「お願いします！」と2人。すぐ収録に移ります。

収録は午前11時10分ごろにスタート。この日のオープニングトークは駒場家の赤ちゃんの話で持ち切り。どんな話題を振っても「赤ちゃん、かわいい」に行き着く駒場。さらに赤ちゃんとの写真、赤ちゃんの名付けの話で盛り上がります。「コーナーのコーナー」でも、「隠れ赤ちゃんのコーナー」が寄せられるなど、リスナーも駒場家の赤ちゃん誕生を祝っているようでした。

ケータリングには脂肪がつきにくいものを

収録を終えたミルクボーイの2人と、プロデューサーの上ノ薗公秀さん、ディレクターの三浪瞭さん、構成作家の米井敬人さんに、改めて『ボンカタ』のルーティンをうかがいました。

――ミルクボーイのおふたりは、いつも収録が始まる30分前にはラジオブースに入っているんですか？

内海　今日は僕、いつもよりだいぶ早いですね。今日は取材があると聞いていたので10時半に来ましたが、ふだんはギリギリ。10時15分まで家で寝ています。僕にとって（この番組）は早朝番組です（笑）。

――では、朝ごはんは？

内海　朝ごはんは食べないんですよ。どの仕事でも、入り時間の45分前に起きて、15分で用意して、アプリでタクシーを呼んでいる間に栄養補助食品のゼリーを飲むくらい。（駒場は）今日、何時に起きたん？

駒場　僕はふだんから早起きですが、とくにいまは赤ちゃんがいるので、今日は5時くらいには起きました。僕はふつうに家で朝ごはんを食べています。（収録では）いつもケータリングでプロテインとかめっちゃ用意してくれているんで、もらって帰って食べたり、めちゃくちゃ活用させてもらってます。

上ノ薗　どうせ何かをつまむなら、せめて脂肪がつきにくいほうがいいのかなと思って用意しています。なにせスタッフが少ないので、そういう下働きも僕の役目。番組の中身は若いスタッフと詰めてもらっています。

500通を全部読んでみたい

――本番前、おふたりがあんなに静かにメールを読んでいるとは驚きました。

上ノ薗　ふだんはもうちょっと、僕もブースに入って冗談を言ったりしていますけどね。

駒場　今日は（FANYマガジンの）取材が来ているから遠慮して入ってこられなかったんですが、いつもはもっと、「サライ」のメールを集中して読みたいのに、バーッとしゃべりかけてきます（笑）。でも、本番前の盛り上げって大事ですよね。

内海　おもしろいテレビ番組の話とかゴシップ、業界の裏事情なんかも上ノ薗さんから聞いたりします（笑）。

駒場　でもね、やっぱり僕もラジオが好きで、「読んでもらいたい！」という一心で番組にメールを送っていたんで、生産者さん（ミルクボーイのネタにちなみ、この番組のリスナーは“生産者さん”と呼ばれている）の思いを受け取りたいんですよ。

――そういえば、駒場さんは届いたすべてのメールを読もうとするので、スタッフが絞り込んでからメールを渡していると聞きました。毎週どれくらいメールが届くんですか？

三浪　いまは全部合わせて500通以上ですね。

内海　それを全部読もうとするから（笑）。

駒場　ははは（笑）。そんな裏事情があったのか！　おもしろいやつが多いからキリがなくなりますね。僕もそうだったんですけど、1週間かけて四六時中考えて送ってくださって、それで「読まれるかどうか……」やと思うから、適当に選びたくないんですよ。

――500通以上のメールのうち、スタッフで何通くらいまで絞るんですか？

米井　数は決めていないんですが、まずよさそうなのを三浪ディレクターに多めにプリントアウトしてもらって、そこから僕らでさらに選んで……という感じですね。基本的には、ミルクボーイの2人に多めに渡して読んでもらっています。

駒場　全部読んでみたいですね〜。

――メールはどのコーナー宛が多いんでしょうか？

三浪　通常の「つかみ」がいちばん多くて、次に「僕のサライ」が多いです。

駒場　500通以上のメールを全部読んで選んで、しかも三浪さんは『ボンカタ』以外の番組もやってはるからそのメールも精査しているなんてすごいですよ。

内海　しかもこんなに忙しいのに、進行台本に毎回、これまで読んだ全ての「つかみ」のイメージ写真を付けてくれるんですよ。写真を上に重ねていって。こんな手の込んだことをしても、どこにも出ないんですけども（笑）。

駒場　もう何重にもなっているので、後ろのほうの写真は見えないですけど、こういうのがすごくいいんです。ラジオって、現場だけで共有している、表に出ない“ノリ”みたいなのがありますよね。僕もむかしラジオを聴いているときに、ラジオブースの外に向かってスタッフの名前を呼ぶ、みたいなシーンにめちゃ憧れたんです。「どんな顔なんやろ？　どういう感じなんやろ？」と想像するのが楽しい。

――100回記念の際は生放送でしたが、収録のときのように本番前にじっくりメールを読めなかったのでは？

駒場　そうなんですよ。いつもならスタート時間が決まっていないのでゆっくり選べるんですが、生放送だとスタート時間が決まっているのでギリギリになってしまって。次回、もしまた生放送をするときがあったら早めに来ないと、と思いました。

ラジオで話せそうな出来事はメモ

――オープニングトークはあらかじめテーマを決めているんですか？

上ノ薗　僕が若いころは「今日、どんな話します？」と打ち合わせていたんですけども、芸人さんだとイヤがるんじゃないかな、話しづらくなりそうかな、と思うようになって、基本的には信頼してお任せしています。

内海　とくには事前に決めないですね。

駒場　デカいトピックスではない、「これ、なんやろ？」くらいの話を言えるのがラジオのよさだと思うんですよ。

内海　ふだんから、ラジオで話せそうかなという出来事は、「忘れんとこう」と軽くメモしておく程度ですかね。駒場のほうがいい話がありそうやったら、「ほな今日はええわ、また機会あったら話そ」みたいな感じです。話があるほうがしゃべり出す、みたいな。

駒場　そうやな。内海は、話があるときはわかりますね。自分から「この前ね〜」って話し出すから。

内海　「さぁ始まりました、『ミルクボーイの煩悩の塊』#○○（回数）です〜。いや、この前ね〜」ってすぐ。反対に「もう#○○ですよ！」とか言い出すときは、話すことがない（笑）。

――ちなみに、ほかのラジオ番組って聴いていますか？

内海　高校のときはエロそうなやつは聞いてましたよ。『福山雅治のオールナイトニッポン』（ニッポン放送）とか。でも毎週聴いているわけではなく。うちにあったラジオがぜんぜんチューニングが合わなくて、聴けたらラッキー、みたいな。どこかの局とキーが合ったらアンテナをめっちゃ伸ばして聴いていました。いまは新幹線での移動中に、ネットニュースになったラジオ番組を聴いたりしています。

駒場　僕はめっちゃ聴いてますよ。ダイアンさんの『よなよな』（ABCラジオ）があったときは聴いていましたし、『ダイアンのラジオさん』(ABCラジオ)、『ダイアンのTOKYO STYLE』（TBSラジオ）、『兵動大樹のほわ〜っとエエ感じ。』（ABCラジオ）、『それゆけ！メッセンジャー』（MBSラジオ）、『メッセンジャーあいはらのYouはこれから！』（MBSラジオ）、『小籔・笑い飯の土020』（MBSラジオ）、『中川家ザ・ラジオショー』（ニッポン放送）、『赤maru』（FM大阪）、『問わず語りの神田伯山』（TBSラジオ）、『川島明のねごと』（TBSラジオ）……もう、本当に時間が足りないくらいなんですよ（笑）。でも、ほかの番組を聴きながら、「こういう話題なら、自分はなんの話をするかな」と考えるのがおもしろいですね。